2009年6月27日土曜日

141 / 185 戦争と平和 それでもイラク人を嫌いになれない

10点満点で、1点。

活性化(スキタリング)・・・1時間半程度

日本中、いやひょっとしたら世界中を失笑と呆然の嵐で包み込んだ、人質戦隊サンバカーンの紅一点、三馬鹿ピンクこと高遠菜穂子の著書。主張を知りもせずに批判するのはよくないだろうと手に取ってみたが、やはり馬鹿は馬鹿だった。

端的に言って、著者は「危険なイラクで身の危険を顧みずにボランティアしてる私って素敵!何でみんな私のことを認めてくれないんだろう!みんな知らなすぎる!」と主張しているのだろう。著者はジャーナリストではないから仕方ないが(ジャーナリスト志望の三馬鹿レッドもいたが)、客観性のかけらもない主張のオンパレード。本書を読むだけだったら、アメリカはイラク人を虐殺している現代のナチス、日本や諸国はアメリカを支援している同じ穴の狢、それに抵抗しているイラク人たち頑張れ!という感想を持つ人がいるかもしれない。

少し考えればわかるが、本書には「イラクで米軍に抵抗している人たちは絶対的に正しい」というスタンスで書いてあり、アメリカがイラクを攻撃した理由や、自衛隊がイラクで何をしているか、一切書いていない。米軍は市民を無差別に虐殺している殺人鬼の集団であり、武器を持った自衛隊が来ることは、日本も同列になるのだ、と主張している。

「絶対に武器を持ってきてはいけない!武器さえなければ襲われないのに!」と主張する著者は、自分が武装勢力に拘束されたことを本当に理解しているのだろうか? それともやはり、アレは自作自演だったのか。

一方の主張のみを取り上げ、バイアスのかかった視点で見れば、物事はいかようにでもねじ曲げて伝えることができる。その恐ろしさはよくわかった。著者は「私は政治的なことはわからない」と再三述べているが、政治的な発言ばかり取り上げているのはいったい何だろう。

著者は、渡航延期勧告を無視してイラクに渡ったことについて一切触れておらず、終始「自衛隊が来たせいで拘束された、私たちは被害者だ」というスタンスを取っている。自衛隊の撤退という要求を即座に日本政府が拒んだことについても、信じられないと言った感想を漏らしている。絶対にあり得ないことだとは思うが、万一本当に自衛隊が撤退してしまっていたら、100年や200年では回復できないほど深刻に、国際社会からの信頼を失ったということは気づいていないのだろうか。

自分を拘束した武装勢力たちには「あなたたちのことを嫌いになれない」といい、自爆テロなどで米軍を攻撃するイラク人について「心情はわかる」といい、そこだけ見れば確かに寛容な精神の持ち主ではあるが・・・自分たちを救い出すために尽力した日本政府への感謝は一切ない。

そこかしこにマザーテレサの言動について触れているが、政治的な立場の一切を拒否し、ひたすら愛を注ぎ続けたマザーテレサについて、感謝すら知らない貴様が言うな、と無性に腹が立った。

行動しない人が行動する人を批判するな、という声が時折あるが、益よりも害が大きいなら、行動しない方が遙かにいい。

三馬鹿のために、多額の税金が使われ、国際的な信用を失墜させる危険があった。外観誘致罪でも適用してしまえ。



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2009年6月26日金曜日

140 / 184 カブールの本屋

10点満点で、7点。

活性化(普通に読んだ)・・・3時間程度

タリバン政権時代から現在まで、アフガニスタンに生きる家族を追ったドキュメンタリー。小説調で書いてはあるが、名前を除きほぼ事実とのこと。

文化や宗教の違いだから一概に否定することはできないが、何とも言えない閉塞感が伝わってくる。
国の指導者や宗教など関係なく、家長がすべてを決める家庭。そこに生きる人たちは、俺から見れば、主人とその妻、そして奴隷たちという構成に見える。

何をするにも家長の許可がいる。学校に行くことも、働くことも、家長の許可がなければできない。
結婚相手も家長が決め、当事者の意志など関係ない。すべては家長の思うままに。

著者が再三述べているように、ここで追っているのは比較的裕福で、少なくとも経済的には恵まれた家庭。その上、家業は本屋であり、家長はさまざまな文化に触れた、例外的に知見の多い人物とされている。それでも、家庭に入れば伝統的な絶対権力者なのだ。

文化だから外部からとやかく言うべきことではないのだろうが、少なくとも「家長以外は何を考えているのか」を引き出して、彼らが意志決定を出来るようになる日が来るまでは、決して真の平和は訪れない気がする。

アフガニスタンの、救いようのない闇を見た気がする。



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2009年6月19日金曜日

139 / 183 「頭がよい」って何だろう

10点満点で、5点。

活性化(普通に読んだ)・・・2時間程度

パズルだからね。じっくり考えて読まないと。
本書のスタイルは、「頭がいい」と言うことを、「自分で必要な情報を見つけ出して、考えることができる能力がある」と捉えている感がある。「頭がいいとは、こういうことではないか」というスタンスではあるが、他の主張(多くの知識を持ち、それを組み立てて考える能力など)にはほとんど触れていないので、著者はそう考えているのだろう。

内容は結構面白かったが、大きな減点になるのは、収録したパズルのほとんどに、まともな解説がないこと。
「ひらめきさえあれば一瞬で解けるが、ダメな人は一生考えてもわからない」たぐいのパズルが多いため、解けないパズルの方が多かった俺は「一生この答えはわからないのだろう、著者の分類では頭が悪い方に入るのだ」と、かなりネガティブな印象を持った。

著者は「わからなくても考え続けて欲しい」と書いてはいるが、「考えてもわからない人がいる」ことについては置き去りにしている。そういう人が存在することは認めているのに!

第一、本書で紹介しているパズルは、MENSAのテストや高IQの判別テストなど、どちらかというとわからない人の方が多い(はずの)パズル。それでいて、解説がないというのは、不親切を通り越して失礼な気がする。
せめて、「本書では解説しないが、この問題はこの本、この問題はこの本を参照すればよい」程度の情報があればいいのに。出自が書いてあるものもあるが、洋雑誌などではお手上げだ。



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138 / 182 鉄が地球温暖化を防ぐ

10点満点で、9点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間半程度

この本も、ラジオ番組「武田鉄矢 今朝の三枚おろし」で紹介していた。
紹介の仕方もうまかったが、主張に興味を持ったので、読んでみた。

いや、コレは面白い。タイトルからして、センセーショナルなだけのろくな考察がない、その辺のトンデモ本と同じ香りがしていたのだが、この本は本物だった。テーマは海洋植物(主に植物性プランクトン)の活性化で、荒れた海の現状、その要因分析、対策立案、実施、そして結果検証と、きっちりとした科学的態度で臨んでいる。

論拠となる学術論文はまだ少ないようで、本書の主張を裏付ける参考文献もわずか数冊、その中には著者自身の著書も含まれるなど、信憑性には欠けるかもしれない。しかし、まずはやってみて、効果がなければ別の手を考えるという方が、手をこまねいているよりはよほどいい。そして、著者の主張が正しければ、実際に効果が出ているところはいくつもある。

我が出身地の山口県徳山市(現周南市)もすっかり魚影が薄くなってしまったが、宇部では鉄作戦で魚が戻りつつあると書いてある。徳山でもやってくれないだろうか。



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2009年6月17日水曜日

137 / 181 勝間和代 成功を呼ぶ7つの法則

10点満点で、9点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間半程度

凄い本だ。
ムック本でページ数も少ないから、30分くらいでさらっと読むつもりだったが、読み込んでしまった。
もしかしたら、勝間本を読むならば、一番最初に読むべき本かもしれない。

著書で述べている主張の要点が簡潔にまとめてあり、この本ではこの点を、この本ではこの点を詳しく書いた、と全体像が俯瞰できる。この本で、事前に「何を学びたいか」決めてから著書を手に取れば、より身につくだろう。

勘のいい人、予備知識のある人なら、本書の要約で足りてしまう本も何冊かあるだろう。それだけの情報はつまっている。

あまり期待せずに手に取ったので、衝撃を受けた。これは、凄い。



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136 / 180 地頭力を鍛える

10点満点で、7点。

活性化(スキタリング)・・・40分程度

非常におおざっぱな俺の理解では、「考えることのベース」になる力を鍛えるにはどうすればよいかについて論じた本。副題に『問題解決に活かす「フェルミ推定」』とあるが、フェルミ推定は本書の一部に過ぎず、より応用の利く考え方、より汎用性の高い考え方とはどういったものか、を論じている。

高所から見るとはどういうことか、「まず身近なことから考えてみる」とどういった思考に陥りやすいか、具体的な例を挙げてわかりやすく論じている。なるほど、コンサルタントという人種は、こういう考え方をするのか、と、実はただ頷きながら読んだだけだった。

すると、最後の方に「読むだけではダメ、本当に自分で考えてみないと意味がない」といった趣旨のことが強く書いてある。また、「でも俺の仕事じゃ使えないな」なんて考えていたら、「みんな『自分は特殊』と考えているが、どれだけ違うか本当に考えてみたら、共通部分はいっぱいある」と論じている。なるほどそうかもしれない。必要なのは「使えない理由」を探すことではなく、「どこに活用できるかを探す」考え方なんだな。

さっと読んだだけだが、この考え方が腑に落ちただけでも、読んだ価値はあった。しっかり読み込めば、もっと得るものは多いはず。

一点だけ引っかかったところがある。「「マンホールのフタはなぜ丸いのか?」という質問は、地頭力の構成要素すべてを駆使する必要がある・・・と俺には読めたのだが、そうなのだろうか?
円形をしていれば、それよりも小さい穴には絶対に落ちないというのは一目見ればわかることだし、こんな問題に「考える」要素があるとは思えないのだが。知識として知っているか、を問う問題ではないのか?



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135 / 179 哲学的な何か、あと数学とか

10点満点で、8点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間程度

フェルマーの最終定理(n>=3の整数である時、x^n + y^n = z^n を満たす自然数x, y, zの組は存在しない)が証明されるまでを、物語調で追っている。2ちゃんねるの書き込みみたいな文体だが、そこに抵抗さえ感じなければ、非常に読みやすくわかりやすい文章で書いてある。俺にはちょっと抵抗があったが。

基本的には、フェルマーの最終定理が証明されるまでのドラマなので、数学をテーマにした本なのに、その中でも(元々は)整数論なのに、数式がほとんど出てこない。数学と言うだけで拒否反応を示す人も、本書なら特に抵抗なく読めるだろう。とはいえ、読めばわかることだが、フェルマーの最終定理はちょっとやそっとの数学力で理解できる物ではなく、その証明も非常に高度な物なので、数式を書かれたところで、理解できるのは数学を専門にしている人の中でもごく一部なのだろう。何せ、ワイルズの証明は、論文にして200ページもあるらしい。その論文にしても、先人の膨大な研究結果を基にしているので、本当に理解するには数千ページもの論文を読まなくてはならないのだろう。

数学者のエピソードというのは、物理学者などよりも話題に上ることが少ないので、知っている人は少ないだろう。そういう、なかなか知られることのない先人たちについて、わかりやすく面白く書かれていると言うだけでも、本書を読んでみる価値はあるかもしれない。

しかし、いったいどこに哲学が入っているのだろう?
「能力のある数学者であればあるほど、フェルマーの最終定理には手を出してはいけない。才能を無駄にしてしまうから」という風潮と、隠れるように研究を続けたワイルズのエピソードなど、哲学を意識して書かれたのだろうか。よくわからない。



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2009年6月14日日曜日

134 / 178 確率の理解を探る

10点満点で、7点。

普通に読んで、1時間程度。

考えることの科学」を読んで三囚人問題に興味を持ち、本書を手に取った。

三囚人問題とは、A, B, Cの三人の囚人のうち2名が処刑、1名が恩赦されるという状況で、Aが看守に「BとCのいずれかは確実に処刑されるのだから、1名は名前を聞いても自分が処刑されるかどうかという情報は与えられない。だから処刑される人物を1名教えて欲しい」と依頼して、「Bは処刑される」という回答を得たとする。そこでAは「これで処刑されるのは自分かCのいずれかだから、恩赦される可能性が1/3から1/2に増えた」と考えた場合、正しいかという問題。この場合、数学的にはAの考え方は間違いで、Aが恩赦される可能性は1/3、Cが恩赦される可能性は2/3となる!

この問題の拡張型も考察してあり、釈放される可能性がA, B, Cそれぞれについて1/4, 1/4, 1/2だったとする。同様の質問をして「Bは処刑される」という回答を得たとき、Aが釈放される可能性はどれだけか。なんと1/5で、情報を得る前よりも悪化している!

本書は「認知科学」というスタンスで書いてあり、「なぜこうなるのか」という数学的な考察はもちろんしっかりしているが、「なぜこれが理解できないのか」をテーマに書かれている。誤解を招く要素、混乱する要因、等々。しかし個人的には、それよりも数学的な考察部分の方が面白かった。数式なんかはほとんど読み飛ばしたのだが。

数学パズルとして興味を持ち、その意識のまま読んだからだろう。これはこれで悪くないはず。



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133 / 177 ぼくには数字が風景に見える

10点満点で、6点。

活性化(普通に読んだ)・・・2時間程度

比喩ではなく、言葉通りの意味での「天才」の頭の中はどうなっているのか、何となく伝わってくる本。
著者はサヴァン症候群かつアスペルガー症候群で、対人コミュニケーション能力などに障害を抱えるものの、記憶力や数字の認識力などで、言葉通りの天才。数字を見た瞬間に色や形が思い浮かび、単語には独特のイメージがあり・・・正直なところ、読んでもいったいどんな世界なのか、あまりに違いすぎてピンとこない。

文章は若干くどい。恐らく著者の性格と障害から来るもので、その感じが伝わってくる本書の訳は名訳と言っていいのではないだろうか。

読む人により、受け止め方が大きく違う本だろう。何かを得るために読む本ではないと思うが、ではどういう目的で読むべき本なのだろう。今ひとつピンとこない。



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2009年6月11日木曜日

132 / 176 あなたはなぜ値札にダマされるのか?

10点満点で、8点。

活性化(スキタリング)・・・1時間程度

なぜ「間違っているとわかっている」のに、行動を改められないことがあるのか、豊富な実例を紹介してその理由を探り、そして回避する方法を提示している。興味深い内容で、読み返せば読み返しただけ、新たに得られるものがあるだろう。

最終章の要約が、本書の内容を的確に表している。長期的視点で損益を考慮すること。既に投下した資本(労力でもいい)は判断基準から除くこと。一度仮定した判断基準に引きずられないこと、等々。

興味深いエピソードは多数あったが、一番頭に残ったのは、インテルがマイクロチップ事業から撤退することを決めたもの。最終章に再録され、2回記載されている。それだけ、著者も重要だと考えたのだろう。

「もしも我々がクビになって、新しいCEOが来たら何をすると思う?」
「メモリーチップ事業から撤退するだろうね」
「じゃあ、我々はいったんドアを出て、新しいCEOになったつもりでこの部屋に入ろうじゃないか」

言い回しは違うが、こんなエピソード。こういうのには、自分の行動に活用するか否かを問わず、単純に興味深く引きつけられる。なるほど、これが「出来る」人間の発想か。



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131 / 175 28歳までに他社からスカウトされる人脈術

10点満点で、7点。

活性化(スキタリング)・・・15分

非常に読みやすく書いてあり、抵抗なくすっと読めた。
あまりに簡単に読めた分、得るべきものが得られたかは疑問であるが・・・

正直なところ、スカウト云々、転職云々といった話はどうでもいい。もちろんより好条件の仕事があれば移ってみたいという気持ちはあるが、基本的に今の仕事は嫌いじゃない。会社が俺に投資しただけのリターンを返し切れたかというと自信はないし(もう14年目なのに!)、浪花節調の恩義も感じている。だから、即物的な何かを求めると言うよりも、「人脈があれば、少なくとももっといろんなことはできるだろう」という程度の意識で読んだ。

基本は与えること。見返りを期待せずに付き合えば、そういう相手とのつながりが自然にできてくる。著者はそう主張しているのだと読んだ。そして、そういう人たちとだけ付き合えれば、もうそれで十分じゃないか。

基本的に人脈を広げたいとは常々思っているが、それ以上にものぐさなので、具体的に何かがないとなかなか自分からは動かない。それと、必要以上にプライベートをあかし、すぐに深く付き合おうとする癖があるので、反対に相手からは離れられているのかもしれない。本書にそんなことは書いてないが、読みながら「目的を決めて人と付き合うことも必要なのかな」とふと感じた。

そういう意味では、フォトリーディング集中講座の受講仲間と、少数ながら今でも繋がりを保っていることは貴重なんだな。ここからもう少し人脈を広げていきたいところ。



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2009年6月10日水曜日

130 / 174 考えることの科学

10点満点で、7点。

活性化(スキタリング)・・・1時間程度

サブタイトルに「推論の認知心理学への招待」と書いてあるが、この本は数学書じゃなかろうか。
論理学に主題が置かれていて、さまざまな例題とその回答、そして根拠となる理論とその数式が書かれている。

「なぜ論理的に正しいことを受け入れられないのか」と言ったテーマで書かれている箇所もあるが、個人的には心理学の本ではないように受け取った。もちろん、俺自身が心理学を知っているわけではないので、(少なくとも心理学よりは)知識のある数学的な部分にばかり目がいってしまっただけかもしれないが。

そういう捉え方をしてしまったので、なるほどと感心しながら読むよりも、むしろ問題の数学的なアプローチ、面白さに目がいってしまった。「三囚人問題」は面白かったがよくわからず、別の本を読んでみようと興味をかき立てられた。



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129 / 173 あの原子炉を叩け!

10点満点で、9点。

活性化(普通に読んだ)・・・2時間程度

1981年6月8日、史上初めて各施設への直接攻撃が行われた。イスラエルから出発したF-15とF-16の編隊は、完璧な奇襲でイラクのオシラク原子炉を爆破。サダム・フセインの核開発に決定的な打撃を与えた・・・

著者は意図して書いたのか、完全にイスラエル側の視点で、この攻撃についてその背景から訓練、そして決断に至った後決行、事後処理までを鮮やかに描いている。著者の視点にはついて行けないところもあるが、善悪は別として、イスラエルのなんと意志の強いことか!

聖書の時代から対立し、民族滅亡の危機を乗り越えてイスラエルを建国したユダヤ人たちが、ただ生きることにいったいどれだけの覚悟を持っているのか。周囲すべてを敵に囲まれ、「自分はどうなってもいいからユダヤ人を滅亡させたい」と考える相手から生き抜くにはどうすべきか。断固たる意志に裏付けられた行動は、少なくとも首尾一貫している。イスラエルが決していい国とは思わないが、我が国の右往左往を見るにつけ、「覚悟」といった物にどれだけの重みがあるのか、痛感する。

既に歴史になりつつある話ではあるし、本書が書かれたのも古いのだが、国際情勢については知らないことだらけだった。サダム・フセインのイラクを「狂気の国」と認識しつつ、利益のために兵器や核技術、そして核物質を売り続ける国。イラクとフランスとの結びつきがこれほど強いものとは知らなかった。イラク戦争にフランスが反対した理由の一因ではあるのだろうか。

イラン・イラク戦争の際、クウェートがイラクに経済支援していたことも知らなかった。俺は知らないことだらけ。しかし、こうして少しずつ物事を知っていくのは、面白い。



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2009年6月8日月曜日

128 / 172 3分でわかるラテラル・シンキングの基本

10点満点で、6点。

読書時間(普通に読んだ)・・・1時間程度

いったい何が3分でわかるのかよくわからないが、ラテラル・シンキングとは何か、そしてそれをビジネスの場で行かすとどういう効果があるのか、それはわかりやすく書いてあった。

序盤の基本編に載っていることは、「ビル・ゲイツの面接試験」で読んだようなことばかりで、同様の本を読んだことがある人なら読み飛ばしていい。

中盤以降の実践編はなかなか面白く、特に「前提を疑う」以降は、具体的な方法も書いてあり、ちゃんと理解すればすぐに応用が利きそうな感じがして、読後感が心地よい。

最終章の、ラテラル・シンキングに使う道具について、「シックスハット法」はいいと思う。自分が責任者となって、新しいアイデアを出す必要が出てきたときには、是非使ってみたい。問題は、自分が仕切る立場でないと、なかなか言い出しにくい手法だと感じるところだが。

本書を読む前に、パズル本などでラテラル・シンキングに親しんでおいた方が、よりよく理解できるかもしれない。



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127 / 171 無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法

10点満点で、8点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間半程度

最近全文読みしかしていない気がする。それだけ「熟読したい」と思う本が多いわけではあるが、せっかく学んだフォトリーディングのスキルを忘れてしまいそうだ。

さて、本書。時間を「投資の対象」と捉え、有効活用というよりも使い倒すための、「哲学書」ではないかという気がする。著者の他の本と同じく、内容は具体的でわかりやすく書いてあるのだが、個別のテクニックよりも思想の方が遙かに価値があると感じた。

時間を作るための考え方として、「やらないことを決める」という点については、言われてみれば当たり前だが目から鱗。アレもしたい、コレもしたいと考える一方で、「時間がない」といつも感じていたが、その時間を作るために「何かをやめる」ことが必要。いやむしろ、「何かをやめるだけで」時間が作れるのだ、という考え方に気づけたのは、本書を読んで一番の収穫だった。今更こんなことに気づいてる自分にちょっと恥ずかしいが、気づかないよりはよほどいい。

巻末に、例として著者の一週間が記載してあるが、まさに分刻みのスケジュール。そりゃここまでできる人ならこれだけの成果は出すよな、と納得してしまった。
いきなり高みを目指さないで、まずは30分単位で時間を使えるようになろう。



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126 / 170 マインドマップ読書術

10点満点で、7点。

読書時間(普通に読んだ)・・・20分+5分(読み返し)

フォトリーディングしてなかったが、薄い本なのでそのまま読んだ。割とすらすら読めたが、記事を書こうとして内容が思い出せず、ついさっき簡単に読み返したところ。

読んでいるときにはなかなかいいことが書いてあるなと感じていたが、半日もすれば内容を忘れてしまっていた。だから読み返したわけだが、意外に具体的なことは書いてないな、というのが正直な印象。

他の本でも書いてあることが多く書いてあるせいかもしれない。「それは知ってる」という意識で読んだから、そういう部分は頭に残りにくいだけかも。

これは!と思ったのは2点。興味のわかない本を読む方法と、読書前のマインドマップの使い方。前者は「批判的に読む」ことで、悪く言えば「あら探し」をするつもりで読めば、いくらか退屈せずに読める、という意味だと解釈した。後者は重要なポイントで、「事前に知っていることをマインドマップに書き出しておく」ことで、新しい知識、自分の理解とは異なる点などがより明確に読める、ということ。それはそうだ、とかなり感じるところがあった。

しかし、前著「マインドマップ超入門」と同じく、本書もかなり薄い。一冊にまとめて出版してもらえないかな。



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125 / 169 落語家はなぜ噺を忘れないのか

10点満点で、6点。

普通に読んで、1時間半程度。

分類に困る本だが、少なくともタイトルの通り、ダイレクトな内容ではなかった。むしろ、「噺家はいかにして噺を作り込んでいくのか」というタイトルの方がよい。

師匠から噺を教わり、それを自家薬籠の物にするために何を考え、どうやって稽古するのか、そういったことが書かれている。冒頭はタイトル通り、「なぜ噺を忘れないのか」という章立てになってはいるが、直接的なことはほとんど書いていない。

噺家の稽古がどういうものか、興味ある向きにはいいだろう。少なくとも記憶術とかそういったことは期待して読まないように。



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124 / 168 マイクロソフトでは出会えなかった天職

10点満点で、9点。

活性化(熟読した)・・・2時間くらい

どういうきっかけで手に取ったのか思い出せないが、いい本だった。「ムハマド・ユヌス自伝」と同じくらい感動した。

マイクロソフトでそれなりの役職を得ていた著者が、長期休暇を取ってリフレッシュのためトレッキングに訪れたネパールで、学校の図書館に本がないこと、そして貴重な本が傷まないように、鍵をかけて保管してある現実を見て、唖然とする。そして、校長のひと言が、著者の人生を変えてしまう。

「あなたはきっと、本を持って帰ってきてくださると信じています」

恐らく、校長は他の人にも同じ台詞を言ったのだろう。しかし著者は、本の重要性を知り、本に出会える幸せを知っているがために、本を手に取ることができない悲しみを誰よりも理解して、そしてこの思いに応えるために、行動を起こした。

「今後数年は無収入でもやっていける」だけの貯蓄を得られたマイクロソフトを辞め、恋人とも別れ、それでも無給のボランティアとして活動する著者。その思いに呼応する人のなんと多いことか。日本と違い、高収入といえば本当に数年働くだけで一生分の金を得ることができる社会に生きる人たちとはいえ、寄付という行動にこれだけの人が呼応するというのは、やはり素晴らしい。「成功した人は寄付や慈善事業で社会に還元する」という文化が根付いているからこそだろう。日本ではどうだろうか・・・

本を手に取る子供たちの、なんと目の輝いていることだろう。本を手に取ることができるということがどれだけ幸せなのか、考えさせられた。そして、俺も何か行動しよう、と。

今現在、寄付といえば子供が生まれてから毎月1000円ほどあしなが育英会に拠出している以外、何もしていない。決して高収入ではないが、(小遣いの多寡はともかく)生活に困るほどの収入でもない。俺ももっと、社会に貢献しなければ。



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2009年6月4日木曜日

123 / 167 背番号三桁

10点満点で、8点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間程度

2003年のタイガース優勝を、影で支えた男たちの物語。ブルペン捕手、打撃投手、スコアラー・・・決して日が当たることのない、しかし彼らがいなくてはチームが成り立たない、そんな男たちの活躍を描いている。

多くの人物は、自身がプロを目指し、あるいはプロとして日の目を見ることなく、裏方の道に進んでいった。人によって考え方は違うのだろうが、根底には「野球が好き、野球で生きていきたい」という熱い思いが流れているのだろう。だからこそ、年収が10倍も100倍も違う選手を相手に、腐ることなく誇りを持って仕事ができるのだろう。

野球中継の裏側を描き出したテレビ局員の話、そして川藤とほぼ専任の打撃投手の対談は特に面白かった。川藤については、「実績もないくせにエラそうに喋ってる恥ずかしいタイガースOB」というイメージしかなかったが、選手としてはともかく、裏方に対する心配りを見る限り、悪い人物ではないのだと見直した。まぁ、性格が悪ければ、あの成績で「浪花の春団治」なんて人気者にはなれないだろうが。

川藤が練習をさぼると一喝したというグラウンド整備員の話がいい。そして、その一言に自らを振り返った、川藤の素直さもまたよかった。



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2009年6月3日水曜日

122 / 166 戦力外通告

10点満点で、6点。

普通に読んで、1時間半程度。

サブタイトル通り、『プロ野球を「クビ」になった男たち』の物語。短いながらも現役として輝いた時期を持つ者もいれば、一度も花開くことなくひっそりと去っていく者もいる。そんな男たちの物語。

期待しながら読んだのだが、意外に面白くなかった。やはり、よく知らない選手には、なかなか感情移入することができないからか。まぁ、人生それぞれなんだな、という程度の感想しか持ち得なかった。

その中でひときわ異彩を放つ面白さだったのが、最終章の野村克則(カツノリ)について。練習の虫で人柄もよく、若手からは慕われているらしいということは知っていたが、「所詮親の七光り、プロでやっていくだけの実力は持ってないだろう」と思っていた。

プロとして残した実績からするとその通りなのだが、本人がいかに努力していたのか、そして実父(それも名選手にして名監督)の下で野球をすることがいかに辛いことだったのか、今更ながら知った。カツノリというと「城島が座ったまま投げるよりも牽制が遅い」と言われるほどの弱肩、というイメージが強かったが、それは怪我に依るもの。そして、そこにメスを入れることができなかった環境。実際はどうだったのか、今となっては知るよしもないが、これが注目されない選手だったら、もしかしたら現役として花開いていたのかもしれない。

カツノリの人柄といえば、こんな話を思い出した。2000年頃だったか、紅白戦で田中秀太(秀太)が滑り込んだとき、危険なスライディングをしたのに烈火のごとく怒ったと。「相手に怪我をさせるようなプレーをするな!」と。これに対して秀太は、「プロなんだからどんなことをしても生きようと滑り込むのは当たり前」という返答をしたと記憶している。当時は秀太の言い分の方に分があると思っていたが、怪我に悩まされたカツノリの言葉だと考えると、今更ながらカツノリの正しさがわかってきた。ちなみに秀太はその後、確か2003年の日本シリーズでホークスの川崎に膝蹴りかまして「蹴太」というあだ名をつけられていたような。



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2009年6月2日火曜日

121 / 165 さよなら紛争

10点満点で、8点。

活性化(普通に読んだ)・・・1時間程度

武装解除」とほぼ同じ構成、内容。ダイジェスト版と言っていいかもしれない。書き下ろしのようだが、「武装解除」をよりわかりやすく、かみ砕いて書き直しただけ、という印象。

その分ストレスなく頭に入ってくる。読む順番が逆であれば、「武装解除」もより読みやすかっただろう。

とはいえ、内容はほとんど同じなので、ある程度予備知識がある人なら「武装解除」を読めば本書を読む必要はないし、逆に深く知ろうとは思っていない人なら本書だけ読めばいい。



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120 / 164 決定版 真向法

採点するような本ではない。

普段あまりに体が硬いので、何とか柔軟にしたいと思っていたら、こんなのを発見。
ネットにも十分といえる量の情報が載っているが、オフィシャルな解説書を読んでちゃんとやってみようと思い、図書館で借りてみた。

半分くらいが理論とその効用について割かれていて、真剣にやる人のためにはいいのだろうが、お気楽柔軟体操と考えていた俺にはちょっと無用の箇所。なのでそこは飛ばし読み。

体操について、注意点をチェックし、また初心者向けのアドバイスを確認してみる。

さあ、後は実践あるのみ。ネットで発見してから2週間程度やってはいるのだが、まださほど効果は感じない。数年のスパンで取り組む物のようなので、気長にやろう。どんなにのんびりやっても1日10分くらいだし。



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2009年6月1日月曜日

119 / 163 武装解除

咀嚼し切れていないので採点できないが、7点以上はありそうだ。

活性化(スキタリング~普通に読んだ)・・・1時間半程度

NGO、国連などの組織で、東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンと渡り歩いて武装解除という仕事をしてきた著者の回想。ルポルタージュといった方が近いかもしれないが、どちらに分類するか難しい内容。

実際の武装解除プロセスはどういったものか、どんな困難に直面しているのか・・・といった点に興味を持ちながら読んだのだが、俺には各国の情勢をきちんと把握できていないので、残念ながらよくわからなかった。ただ、随所に「大局的な視野なく、具体的な目的もなく、現実を直視することもなくただカネを垂れ流してきた日本の責任」を厳しく糾弾する箇所があり、興味深く読んだ。

「アメリカがテロ対策を簡単に終わらせる方法がある。それは、ビン・ラディンをアメリカの副大統領にすること。だって、我が国ではアメリカ主導で実際にそれをやったじゃないか」というシエラレオネ人夫婦のコメントなど、日本の報道では見たことのない話も多くあり、紛争と平和維持の責任、当事者と第三者の価値観など、深い話も多い。惜しむらくはいささか散漫に書かれていて、集中して読みにくいと感じるところか。読者に知識があればまた違うのかもしれない。

最終章「介入の正義」は、著者の主張がはっきりしていて読みやすかった。一概にこの主張をよしと受け入れることはできないが、傾聴する価値はあると思う。



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