2011年12月3日土曜日

025 / 391 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

10点満点で、9点。

久しぶりに書く。本を読んでいなかったわけではないけれど、この間に電験三種を受けたり、試験前後に39度超えの熱を出して寝込んでいたり、試験終了後現実逃避にじゃりン子チエを全巻読みふけったりして、多分3ヶ月で10冊程度しか読んでないと思う。

その中で、圧倒的な存在感を放つこの本。2段組で700ページ弱、普通の単行本なら3~4冊分の分量。厚さにして4cm程度。存在感も重厚なら、内容も素晴らしい。木村政彦という稀代の柔道家、武道家の生涯を、丁寧に追いかけている。その筆致は師匠である牛島辰熊の生涯も描き、そして弟子の岩釣兼生が逝去するまで追いかけている。

社会人の常識として抑えておきたい所ではあるが、木村政彦とは「木村の前に木村なく、木村のあとに木村なし」とまで言われた、鬼の柔道家。帯に書いてあるだけでも、15年不敗、13年連続日本一、天覧試合制覇。全盛時を戦争に奪われてしまっているが、それでもろくに練習せずに出場した全日本選手権で優勝。引退後何年も経ち、50歳に手が届こうかという歳でも、各国のオリンピック代表を子供扱いした鬼の柔道家。オリンピック金メダリストのヘーシンクについて聞かれ、「あいつは強い、俺がやっても2分はかかる」と言ってのける男。

ヴァーリ・トゥード最強を誇ったエリオ・グレイシーに土をつけた男。しかしその名声は、たった一度の八百長破り、力道山との試合で地に落ちる。視聴率100%の「巌流島の決戦」で、血だるまにされた姿を全国に放送されたからだ。そして、表舞台からは完全に消えさってしまう。その名前が再び出てくるのは、死後UFCで優勝したホイス・グレイシーが「我々は木村政彦を尊敬している」と発言するまで待たなくてはいけない。

とにかく緻密な取材で、学生時代の戦績や行動、交友関係などつぶさに洗っている。師匠の牛島辰熊が最強を謳われた鬼の柔道家でありながら思想家でもあったのに対し、ヤクザとも平然と付き合う豪放さを見せる木村。木村のことを兄貴分と慕う大山倍達(木村が八百長に乗ったのを悲しみ、疎遠になる)、拓大同窓の塩田剛三との交流など。登場する人物が大物ばかりで、その中でも存在感を放ち続ける鬼。ちなみに、講道館で「鬼」と言われる柔道家は4人。牛島と木村はその中の二人であり、そしてふたりとも講道館の本流ではなかったため、正当に評価されているとは言いがたい。

木村の強さの源泉として、高専柔道について詳細な記述があるのが嬉しい。寝技主体の高専柔道は、講道館とは違う、独自の進化を遂げた柔道。その強さは講道館を圧倒し、講道館ルールから次々と寝技に対する制約が増えていくが、なお勝ち続けた柔道。戦後GHQにより事実上解体されてしまうが、今も七帝柔道として連綿と続き、中井祐樹という逸材を輩出している。

木村が学生時代唯一完敗を喫した相手・阿部謙四郎が植芝盛平の薫陶を受けていたり、牛島辰熊が植芝盛平と立ち会わせようとした際に塩田剛三に「植芝という人は塩田の師匠だから、絶対に来るな」と言われていたり、その塩田には腕相撲で負けていたり(ちなみに木村と塩田の体格は比較にならず、身長は30センチも木村のほうが大きい)興味深いエピソードも多い。

そして、憎き敵役・力道山についても、なかなか迫っている。木村ほど丁寧ではないが、力道山という人物がよくわかる(そして、力道山が大嫌いになる)

本書は「真剣勝負であれば、木村は力道山を圧倒したはずだ」という著者の主張を裏付けるために書き始められたが、取材の過程で、そうとも言い切れないことに著者自身が気づき始めている。力道山も確かに一代の英雄であり、そして確かに木村を倒しうる力を持っていたということ。そしてそれに対し木村の衰えは激しく、真剣勝負であっても勝てたか否か怪しいこと。そして、そして、、、

木村政彦という男を軸に、戦前・戦後の格闘界をほぼ網羅した本書は、超一級の資料になりうるものだと思う。真剣に研究するのであれば本書の記述をうのみにするのは危険だが、決して木村贔屓に書いてある本ではなく、かなり信用できる内容だと思う。

今年一番、いやここ数年で一番の良書だと思う。
武道、格闘技、プロレスに興味がない向きには、手にとっても面白さは半減以下だと思うけれど。


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2011年8月21日日曜日

024 / 390 戦場へのパスポート

10点満点で、6点。

軍事ジャーナリスト(戦場カメラマン)の著者が、戦場取材の現場を語った本。あとがきに、「戦場取材のノウハウは、フリージャーナリストにとっては企業秘密」と書いてあるが、本書を読む限りまさにそうなのだろう。ろくすっぽ海外に出たことがない身としては、旅行代理店で往復パックのチケットを買う以外に、どうやって海外に出ればいいのか(そしてなにより、どうやって帰ってくればいいのか)わからない。大体、入国審査で目的やら滞在場所やら期間やらを書くのに、どうやって「あっちの国が面白そうだから行ってみよう」とか動けるのか、さっぱりわからん。

著者は本来、兵士として戦場に出たかったようだ。日本人としてはかなり珍しい部類だろうね。しかし、「目が悪い」という理由で軍に向かないことを悟り、「せめて戦場に近づける仕事」と、紛争地での工事を請け負っている建築会社に入社する。酔狂というか、なんというか。
(どうでもいいが、友人が在籍したことのある会社だ)

それでも諦めきれず、フランス外人部隊を目指して退社。視力を理由に断られ、スペイン、アメリカとわたってなお挫折。仕方ないからとりあえず戦場にだけは行こうと中米に足を運び、そこでジャーナリストという職種に気づくという、相当の変わり種。しかしプレスカードを持っておらず、出版社の依頼状も持たないため、プレスカードを入手するところからして波乱万丈。

そんなドタバタを繰り返しながら、中米、アフリカ、欧州、中東、そして北朝鮮にまで足を運ぶ。元々が兵士志望だったせいか、兵器の危険性や生き延びるための知識などは豊富なようで、何度も危険に遭遇しながらも生還している。
(時折フィルムを没収されたりしているけど)

地雷原の恐怖、ジャングルの虫、諜報機関による逮捕(拷問まではされていないらしい)などなど、綺麗事ではない戦場の雰囲気がよく伝わってくる。

しかし、本書のターゲットって、幅が狭いだろうなあ。
軍事に興味がある人からややずれているし、政治的なことはあまり触れていないし。俺は面白いと思ったけれど、ストライクゾーンが狭い本だと思う。


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2011年8月15日月曜日

023 / 389 豚のPちゃんと32人の小学生

10点満点で、8点。

小学4年生から6年生の間、豚を育て、そして食肉センターに送るまでの「命の授業」をした記録。
考えさせることも多く、「良い授業」だとは思うが、「素晴らしい授業」だとは、手放しで言えないと感じている。

それは、この教育を主導した教師(本書の著者)の、確固たる意志が感じられないことによるものだと思う。難しい題材だけに、教師自身も悩みぬいたことは読み取れるが、それだけに覚悟なくして子供たちを巻き込んでしまったように思えてならない。

結果としては良い授業になったと思うが、それはあくまで結果論。展開次第では、子供たちに深い心の傷を負わすだけの授業になってしまったリスクも高かったと思う。何を考えさせるのかきちんと考え、道を外れそうになったらどうするのか、少なくとも指導者の側がぶれてはいけなかった題材だと思う。

生き物の命を奪い、食べるということについて深く教えることについては異論がない。必要だし、素晴らしいことだと思う。しかしそれだけに、取り扱いには注意が必要だとも思う。結果としてうまく行ったが、毎回こういくとは限らない。だからこそ、この授業は継続されていないのだろうな、とも思う。

どうでもいい話だが、俺は魚釣りが大好き。
家庭の事情により現在は行っていないが、事情が許せば毎日だって行きたい。
しかし、海釣りは大好きだが、川やダムなどの淡水はあまり好きではない。それは、釣った魚を食べるか否かによる。淡水魚だって食えるが、臭みがあってあまりうまいとは思わないからね。
命を相手にする遊びだから、命を奪う遊びだから、釣った魚は食べてやりたい。
本質的には同じ事なのかな。


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2011年8月13日土曜日

022 / 388 エレクトリックな科学革命

10点満点で、8点。

何気なく手にとった本だが、大当たりだった。
電気技術のうち、主に通信と無線、いわゆる弱電に焦点を当てている。照明はエジソンのエピソードでいくらか語られている程度、動力についてはほぼ触れていない。

技術そのものというよりも、その開発に貢献した科学者、技術者のエピソードを中心に語られている。電信技術の基礎を開発したヘンリー、その成果を掠めとったモールス。自らの知識と技術を惜しみなく伝えたヘンリーは最高の科学者として尊敬され、他人が開発した技術の特許をとって財産を築いたモールスは、引換に死ぬまで特許訴訟を抱え続けて尊敬されなかった。
(ヘンリーはインダクタンスの単位としても名前を残している)

このほかもエジソンを始めとして、著名人のエピソードは、なかなか面白いものが多い。多くの場合、知名度の高い人物については、従来のイメージを覆すような悪いエピソード(エジソンは他人のジャマをすることで財産を創り上げたとか、ショックレーはトランジスタ発明の名声を奪い取り、彼を嫌った技術者たちによってシリコンバレーが創られたとか)が紹介されている。反面、電気技術では重要な貢献をしながら、一般的な知名度の低い人物については、親しみの持てるエピソードを多く取り上げている。

解説は丁寧なので、電気に対する知識が少なくとも、読むことについてはあまり支障がないだろう。
それでいて実はかなり深い解説をしていたりするので、真剣に読めばさらに得るものも多い。電気技術について語られた本で、電気と神経の関係にまで語った本なんてそう多くはないだろう。異色の本。


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2011年7月5日火曜日

021 / 387 奇跡の教室

10点満点で、7点。

灘高が「進学校の滑り止め」から「東大合格者日本一の高校」に上り詰めたとき、生徒たちの基礎学力を創り上げることに専心した、エチ先生こと橋本氏の授業について。銀の匙という一冊の小説を、三年かけて丁寧に読み込んでいくというその授業は、生徒たちの「考える力」を大きく養っていった。

教え子には錚々たる人物が多く、皆がみな橋本氏を尊敬しきっている発言をしていることからも(そういう発言を選んで収録したのだろうが)、いかに充実した授業をしていたのか伝わってくる。惜しむらくは、全体の流れが見えてこないで、断片的なエピソードばかりになってしまっていることか。

物事の本質を考える、興味のあることを追求する。橋本氏の授業には、ファインマンさんの父親に通じるものがありそうだ。もっと深く知りたいが、適当な本はないかな。


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2011年5月28日土曜日

020 / 386 核を売り捌いた男

評価の難しい本。とりあえず、10点満点で6点。

パキスタンのカーン博士といえば、数年前結構ニュースで耳にした名前。核不拡散体制を崩壊させ、核技術や核物質、そして核兵器も含んだブラックマーケットを構築した人物。彼がなぜ核開発を志し、パキスタンの核武装だけで満足せずに核市場を創り上げたのか、丁寧に追っている。

・・・のだが、いかんせん読みにくい。
ただでさえ、人名・国名・組織名・役職名など、聞きなれない固有名詞が大量に出てくる。しかも同名の人物も多く、誰がどの立場でどういう行動をしているのか、読んでいてさっぱりわからない。せめて主要登場人物一覧でも付いていればよかったのだが、それもない。メモをとりながら読まなければ、話についていけなくなる。結局少しずつ読み、読破に一ヶ月かかってしまった。

思い返してみると、なぜカーンがブラックマーケットを構築したのか、その動機はどこにあったのか、分からなくなってしまった。本文中に記載があったのかどうかも覚えていない。中盤以降は、パキスタン政府にとってもアンタッチャブルな存在にまで上り詰めたカーンを、世界(主にアメリカ)がどうやって追い詰めていくのかにページが割かれているが、ここでもパキスタンはカーンを守っているのか疎んでいるのか、わからない。偏に俺の読解力の不足か。

ポイントとしていくつかつかんだのは、

・パキスタンとインドの対立は深刻。核開発は、バングラデシュの独立から始まった。
・イスラム社会は、自由主義社会とは完全に違うロジックで動いている。価値観も、倫理観も。
・パキスタンの核武装は、国家の対立を超えて「イスラムの核獲得」という価値があった。
・西側は、パキスタン(カーン)の力をなめていた。危険水域に入ったことにも気づかず、泳がせすぎた。
・カーンはどうやら、相手を選ばずに核技術の取引をしていた模様。
・北朝鮮は重要な顧客であったようだが、全容は未だわからない。
・9.11テロとイラク戦争は、カーンのネットワークを広げる一因となった。
・イラクの末路を見た、カダフィの武装解除という決断がなければ、カーンは今でも暗躍していたかもしれない。
・本書の山場は、上記のリビア武装解除について。この部分は読みやすく、面白い。
・カーンは、現在でも一部では英雄視されている。

メモをとりながら、腰をすえて読むと又違う発見があるだろう。


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2011年5月14日土曜日

019 / 385 7割は課長にさえなれません

10点満点で、5点。

「終身雇用の幻想」とサブタイトルにあるように、日本独自の人事制度として有名な(悪名高い?)終身雇用の弊害を、これでもかというくらいに書いている。

書いていることそのものは大きく間違っていないと思うし、問題点の指摘はいいと思うのだが・・・考察が浅くないか? 新書の限界なのかもしれないが、まるで中学生のレポートを読んでいるような感覚に襲われた。

終身雇用の弊害については、概ね正しいと思う。不景気でも人は切れない、年長者の収入は削れない、若者の収入を上げることはできない、新人を取ることができない・・・こう言った問題について、なにか手を打つ必要があるというのは同感だ。しかし、「なぜそういう制度になっているのか」に関する考察は、甘い。そして、「なぜこの制度を改革できないのか」についても。

著者は、現在の終身雇用は、労使一体になって作りこんだ制度だと主張している。そしてその現状維持に躍起になっている勢力、既得権益組として挙げているのが経団連、連合、共産党、社民党・・・と。派遣について、非正規社員について声高に主張しているものもいるが、彼らにしても正社員の権利が侵されることになると口をつぐんでしまう、と。経営側と労働者側を同列だと論じ、そこからあふれた者たち(非正規社員)との対立軸を描き出しているのは鮮やかだが、「それはそれで正しいのだ」ということには頭がまわっていない模様。

考えるまでもないことのはずなのだが、基本的には組織というものは、所属する者に対する利益を確保するために動く。経営者が企業の利益を考えるのは当然だし、労働組合が労働者の利益を考えるのも当然。そして、「労働組合に加入していない非正規労働者」は、「労働組合が守るべき対象ではない」ことは、当然の帰結としてわかる話だろう。そして、非正規労働者がたとえ組合を結成したとしても、圧倒的多数の正社員が占める連合(その他労働組合共同体)では発言力が弱い事は、これも当然のこととして理解できるはずだ。つまり、非正規労働者が声をあげるのならば、既存の枠組みから踏み出さないと無駄(あるいは非常に効率が悪い)のだ。それが分かっていないのだろうか。

それともうひとつ、年長者の収入を守るために、若者の収入が制限されているという理屈。それはそれで間違っていないのだが、「年長者は、本来受け取るべきだった収入を今得ている」という側面を忘れてはならない。元々の制度に欠陥があったというべきだが、それでも今年長者の収入を削ることは、「年長者の正当な権利を侵害する」ことにほかならないのだ。だからこそ、「若者の正当な権利を守る」こととの両立が難しいのだ。

この他にも、気になることはたくさんある。

・理工系ナメるな。新人でも、学校で学んだ知識は必要。むしろ出世するとマネジメント能力が重視され、専門知識の比率が下がってくる。知識と技術を持っている人材は、需要もある。
・非正規社員が地位を得るために、自分に投資しろ(勉強しろ、技術をつけろ)というのは精神論なのか? むしろ、「努力しないものは救わない」のは、今後の議論をするに当たり前提とすべきことではないのか? その上で、「どう努力すれば良いのか」を提案するのが、人事コンサルタントの仕事ではないのか?
・著者の提案に対する、ネガティブ面からの考察が全くないが、あえて省略したのか?
・現行制度のデメリットを上げるばかりでなく、メリットとのバランスを比較した上で議論すべきではないのか?
・そもそもこの程度の考察しかしていないで、人事コンサルタントを名乗ったり、あるいは政党で講義しているというのは本当なのか? コンサルタントはともかくとして、政治家はそんなに見る目がないのか?

繰り返すが、新書の限界なのかもしれない。本質的な議論を読みたければ、もっとしっかりした本(あるいは学術論文)を読む必要があるのかもしれない。
いずれにせよ、本書は警鐘を鳴らしてはいるが、それ以上の役には立たない。


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2011年5月6日金曜日

018 / 384 頭脳勝負

10点満点で、8点。

将棋を、数学・パズルに分類していいのかな。

史上4人目の中学生棋士としてデビューした、渡辺明永世竜王の著書。
(本書執筆時点では、永世竜王の称号は獲得していないが)

ボナンザとも戦った著者が、将棋の魅力、将棋の奥深さ、そして将棋を見る楽しみについて語っている。スポーツと違い、頭脳勝負の将棋は「知らないと楽しめない」箇所が多いが、そんなことはないんですよ。見て楽しめるものですよ、と語りかけている。

とはいえ、将棋を楽しむにはせめて、局面の有利不利がわかることが必要。もちろんどこまで先を読んで判断できるかということがそのまま棋力になるのだが、一目でわかる局面くらいは判断したい。どういう見方をすればいいのか、本書にはそのとっかかりが書いてある。駒の動かし方すら怪しい俺には、本書の丁寧な解説でもまだわからないところがとても多いのだが・・・

プロになるまでのハードル、収入、女流棋士やアマチュアとの実力差、封じ手の攻防といった話題から、「和服は高いからスーツのほうがいい」といった話まで、将棋を身近に、そして一歩深く楽しむための導入書。将棋そのものの入門書ではないので、興味のある人が読み物として手に取り、そして次に将棋入門書を手に取る、という位置づけだろう。

巻末には将棋のルールと詰将棋も載っていて、ややお得。


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2011年4月24日日曜日

017 / 383 ファインマンさん最後の冒険

10点満点で、6点。

時は冷戦のまっただ中。ふとしたことから、少年時代に見かけた素敵な切手を思い出したファインマンさん。その切手は、「タンヌ・トゥーバ」という国の物だった。そんな国なんて無いよ、という周囲を尻目に百科事典をひもといてみたら、なんと首都は "KYZYL" という地名。母音が一つも無いなんて! これはもう、行ってみるしかない!

当時のトゥーバは、ソビエト連邦所属。ただでさえ自由な出入りができないところに、ロスアラモスでマンハッタン計画に関わった物理学者が行きたいなんて!

その難易度に負けず、ファインマンさんはあの手この手でトゥーバ行きを試みる。外国ラジオ局に手紙を出してみたり、その道の学者に手紙を出してみたり、、、トゥーバ語からロシア語の辞書を入手して、ロシア語からさらに英語に翻訳してトゥーバ語で手紙を書いてみたり。その行動力、そして知性は、さすがにファインマンさん。

思い立ってから10年。その間チャレンジャーの爆発事故が起こり、チェルノブイリ原発事故が起こり、そしてファインマンさんは複数回のがん手術を受けている。最後の冒険は結局、実ることなくファインマンさんは生涯を閉じてしまったのだが、いつだって諦めないファインマンさんからは希望に満ちあふれたメッセージが届いてくる。

ロシア側の人物が入り乱れていて、読みにくいのは正直なところ。
もうちょっと読みやすければ、7~8点くらいの本。


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2011年4月9日土曜日

016 / 382 困ります、ファインマンさん

10点満点で、9点。

ファインマンさんの逸話集。最初の妻アーリーンとの出会いと別れ、父親の記憶、そしてスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故調査委員会での活躍など。本書の過半数をアーリーンの話とチャレンジャーの話が占めているが、個人的には父親のエピソードが心に残った。

彼の父親は学者畑ではないが、「物事の本質を見る」という、ファインマンさんの最も重要な考え方に大きな影響を与えたことがよくわかる。百科事典で恐竜の大きさを知ったときに「うちの二階から頭を突っ込める大きさだが、大きすぎて窓からは入らないな」とか、見つけた鳥の名前はどうでもいいが、「なぜ羽根をつついているのか」を考えさせたり。難しいことを教えているわけではないが、こういうことを教えようとするのは、難しい。

自分の子供に、こういうことを教えてやれる親でありたいものだ。


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015 / 381 9割受かる勉強法

10点満点で、7点。

本書の主張は、割とシンプルにまとめることができる。

・基本はとても大切。基本に一番時間をかけて、完璧にすべし。
・わからなくなったらわかるところまで、基本まで戻る勇気を持て。
・復習は大切。記憶に定着するタイミングで復習する。
・自分のレベルを誤解するな。多くの人は、自分のレベルを過大評価している。
・実は、基本さえしっかりしていれば、少しの努力で上を目指すことができる。

基本的に大学受験向けに書かれているので、現代文の攻略など、あまり縁が無いことにもページが割かれている。俺は大学受験をしたことがないのでわからないが、現代文なんて読書習慣があれば、簡単そうな気がするのだが。単行本、新聞、雑誌、専門誌等まんべんなく読書量を持っている必要はあると思うけど。

合格者の体験談とか、「2000冊の参考書から厳選した云々」、あまり意味が無い図解など、大して重要ではない割にページを割いているところ(ページ数を稼ぐためか?)を飛ばして読めば、30分くらいで読める。こういう本は実践が伴わなければ意味が無いので、短時間でエッセンスを吸収して、すぐに行動に移せるという意味ではいい本だろう。

理工系に使えるかどうかは疑問(体験談も文系ばかり)だが。本書で考え方を身につければ応用できるのかな。
数学、物理をなめてる気がするが、どうなのだろう。


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2011年4月3日日曜日

014 / 380 哲学者とオオカミ

10点満点で、3点。読者を選ぶ本なのだろう。

オオカミと暮らした哲学者が、オオカミを通じて考えたことについて語っている本。amazonの評価は高いようだが、俺にとっては読むのが苦痛に感じる本だった。

・簡単なことを難しく考えるのが哲学なのか?
・自分の価値観を押しつけるのが哲学なのか?
・倫理的に問題を感じる行為が多々あるが、哲学者として問題ないのか?
・つまり、哲学ってのは、よりすばらしい社会を実現するためには無用なのか?

・・・等々、感じてしまった。
オオカミと過ごした日々のエピソードは、面白い。しかし、哲学的に語っている箇所は、つまらないし、苦痛。深く考察しているかのような書き方はなされているが、何のことはない、自分の主義主張を難しい言葉で飾り立てているだけだろう。それが哲学というものなのかも知れないが、哲学というのは「イラナイモノ」だという感想が強く残った。
難しいことを簡単に説明するのは実力とセンスが必要だが、簡単なことを難しく語るのは誰でもできる。

哲学に興味が無ければ、手に取るだけ時間の無駄。
オオカミのエピソードだけ読むならいいのかも知れない。1/3位の時間で読める。


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2011年3月26日土曜日

013/ 379 ご冗談でしょう、ファインマンさん

10点満点で、9点。

ノーベル賞学者、リチャード・ファインマンの自伝。正確には自伝ではなく、本人が語った話を他の人が書き起こしたらしいが、ファインマンさんの活躍が活き活きと描かれている。

天才とはこういう人を言うのだろう。数学、物理に顕著な才能を示し、マンハッタン計画にも参画。ノーベル賞物理学者たちを向こうに回しても一歩も引かずに議論を重ね、自身もノーベル賞受賞。絵を描き始めたら売って欲しいという人が続出し、ドラムを叩き始めたらプロとして演奏依頼が来る。

興味のあることには真剣に、しかも楽しみながら取り組んでいる。そこに義務感はなく、ただひたすら楽しんでいる。

ロスアラモスでは金庫破りの名人と言われ、古代インカの文字を解読し、とにかく興味を持ったこと全て一流になっている。その根底には、基本を徹底的に理解するというスタンスが流れている。学生が数学の基礎、物理の基礎をちゃんと理解していないことに対する嘆きが、それを顕著に表している。

ファインマンさんの科学に関するスタンスは、下巻巻末の「カーゴ・カルト・サイエンス」(大学卒業式での式辞)に凝縮されている。事実に正直であれ、事実を隠すな、事実から目を背けるな、と。ミリカンの油滴実験で、計算値に間違いがあるのに、誰もがミリカンの実験を尊重しすぎるあまりに自分の実験結果から目を背け続けた話を例に挙げ、科学者としてのスタンスをきっぱりと述べている。

理工学の分野に生きる者であれば、常に意識しなくてはならないこと。理工学の分野と縁遠い人も、知っているべきこと。重要なことだが、今現在でも、この認識が徹底されているかというと疑問だろう。

読み物として純粋に面白いので、文系の人にもぜひ読んで欲しい。数学、物理学の話題が多いから、一部読みづらいところがあるかも知れないが、それを補ってあまりある面白さ。


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2011年3月25日金曜日

012 / 378 泣き虫

10点満点で、6点。

ヒクソンの本を読んだので、高田の本も読んでみなくては、と思い立って。著者が高田からインタビューした内容を元に書き起こした本なので、自伝に類する物と思っていいだろう。

幼少の折プロレスラーにあこがれを持ち始めた頃から、新日本入団、UWF、新日本出戻り、第二次UWF、UWFインター、キングダム、ヒクソン戦、PRIDEと、高田の経歴をなぞりながら、主要な一戦は押さえている。

体力に自信を持って入団した新日本プロレスで、あっという間に鼻っ柱を折られてから、藤原や前田にもまれる日々。乗り越えてきた者だから語れるのだろう、凄まじい練習量には圧倒される。
(余談だが、「1・2の三四郎」でのプロレス入門近辺のシーンは、かなりこの空気を見せている)

周囲に翻弄される形でUWFから第二次UWFへと渡り歩き、前田の「解散する」発言で御輿に担ぎ上げられて。UWFインターでは社長兼エースとして、社長業に押しつぶされて選手として価値が暴落していく様が、よく伝わってくる。高田の苦悩を理解しようとしない田村、新日本プロレスの交渉術、選挙・・・
高田に同情したくなるが、読了後、終始「俺は悪くないのに、俺はやりたくなかったのに」という意識が見え隠れしていたことに気付き、少し冷める。もっと前を向いて語れよ、自分の覚悟に責任を持てよ、と。

ヒクソンとの初戦、戦う前から呑まれていたことも赤裸々に語られている。実際、試合では何もできずに一方的に、スパーリングでもやっているかのように決められていた。
そして一年後、今度は気力体力とも充実していたと語る再戦。確かに動きは悪くないが、フィニッシュまでの流れも時間も一年前とほぼ同じ形で、腕ひしぎ逆十時でタップアウト。俺はこの試合を東京ドームに見に行き、「去年と同じじゃないか! オマエ一年何やってたんだよ!」とヤジを飛ばした記憶がある。思えばこの頃から、高田の代名詞が「光速タップの高田」なんて言われるようになったんだか。

プロレスラーは本当に強いんだ、と主張しつつ、アルティメット等で勝てないのは「リアルファイトとプロレスは違うから・・・」と語る。言いたいことはわかるが、それってプロレスファンにしか通じないよなあ。
桜庭はそのギャップを埋めてくれたが、桜庭以外は誰も埋めていないのも事実。
(ダン・スバーンも結構いいとこ見せてるが、プロレスラーとしてのキャリアはやや疑問)

弁解はいいよ。もっと客観的に書いて欲しいな。


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011 / 377 ヒクソン・グレイシー 無敗の法則

10点満点で、9点。

400戦無敗の男、ヒクソン・グレイシー。
一般的にはあまり知名度がないだろうから、どういう人物かと書いておくと。

1993年、アメリカでUFC(Ultimate Fighting Championship)が開催された。噛みつきと目つぶし以外に反則なし、時間無制限でオクタゴン(8角形のフェンスで囲まれたリング)の中で戦い、誰が一番強いかを決めるイベント。プロレスラー、空手家、元力士などが参加する中、無傷で優勝を飾ったのは小柄な柔術家、ホイス・グレイシーだった。ホイスは翌年のUFCでも優勝。そして語った言葉「兄のヒクソンは、私の10倍強い」

ヒクソンは、1994年(だったかな)からは日本でも戦っている。佐山聡(初代タイガーマスク、当時は修斗主催)の招待に応じて、VALE TUDO JAPAN に参戦。こちらはラウンド制、プロレス風リングという違いはあるものの、圧勝を飾る。翌年のVALE TUDO JAPANにも参戦、山本宜久にロープを掴むという手段を執られて苦戦するものの、木村浩一郎、中井裕樹と下し、連覇。

その後UWFインターナショナルのトップだった高田延彦とPRIDE.1で対戦、圧勝。前田日明が対戦に向けて交渉中と明かすも、翌年高田と再戦、全く同じ勝ち方で圧勝。2000年にはパンクラスの船木誠勝とコロシアム2000で対戦、チョークスリーパーで締め落として勝利。その後試合はしていない。

400戦無敗というキャッチコピーは佐山が付けたらしいが、「ストリートファイトを含めてそれくらいやった」という話を膨らませたらしい。どういうわけか本書では460戦無敗となっているが、どこでそんなに試合を重ねたのかはわからない。しかし、公式に確認できる、「ヒクソンに勝った」という男がいないのも事実。実際はバーリ・トゥード(「何でもあり」という意味)以外の試合ではいくらか負けがあるらしいし、本人も別段隠しているわけではないらしいが、誰がヒクソンに勝ったのかはよくわからない。

さて、本書。
個人的には、ヒクソンという格闘家(人物)は大嫌いだった。確かに出場した試合には全て勝っているが、何せ出ない。高田がファイトマネーをつり上げたせいらしいが、VALE TUDO JAPANのワンデイトーナメント以外は、わずか3戦しかやっていない。そのくせ、「負ける可能性がある相手はいない」とか、「私は誰とでも戦う」とか、期待を抱かせる発言多数。戦うとなればルールでゴネて、「オマエ普段言ってることと違うじゃないか」とずっと思っていた。

しかし、本書を読んで、少し考え直した。ヒクソンという人物は、やはり本物なのかも知れない。
本書は格闘技に関する話題の本かと思っていたが、違う。哲学書だ。
本書の見出しから、気になるところをいくらか列挙する。

・教育とは、何かに打ち込める人を育てること
・見えているものが真実とは限らない
・人生に「幸運」はない、あるのは「戦略」だけ
・何か欲しいものがあるなら、必要な犠牲を払う
・勝つために負けを受け入れる
・明日なんて来ないつもりで生きる
・自分を何より大切にする”現代版サムライ”
・「何も持たない」という幸せ
・トラブルの元は大きくなる前に摘んでおく
・現実と向き合わない人間にチャンスはない
・自分の人生を変えられるのは自分だけ
・「もう充分」と満足すればそこで終わり
・イメージして、宣言して、実行する

見出しで人をあおることなく、本文の内容は確かにこういったものだ。

「悪童」ハイアン、「ハイアンなんてかわいいもんだった」と言われるヘンゾ、タップした相手を締め落とすホイス、落ちた山本を蹴り剥がしたヒクソン、「ノールールがいい」と言いながら毎回ゴネる陣営・・・正直なところ、グレイシー柔術に対するイメージは「強いが、少なくとも人間教育はできない技術」というものだった。
しかし、本当は違うのかも知れない。あるいは、ヒクソンのレベルにまで到達したからこそ、本書のような考え方を持つに至ったのか。

グレイシー柔術に対するイメージが、かなり変わった。

ちなみに、ヒクソンの実績を否定するわけではないが、ヒクソンと戦った男たちについて。本当のトップクラスはいなかったことについて書き加えておく。

山本宜久は、当時リングスで売り出し中の若手。その後エースに上り詰めるが、リングス5周年記念大会(だったっけ?)でヒカルド・モラエスに46秒でノックアウトされてから、鳴かず飛ばず。
高田延彦は、新日本プロレスで武藤敬司に足四の字固めでギブアップ負けを喫し、価値が暴落していた(後にシナリオがあったことを明らかにしている)ヒクソンに負けたあと、猪木に「よりによって一番弱い奴が出て行ってしまった」と言われていたが、少なくないファンがそう感じていたと思う。
船木誠勝は、既にパンクラスのエースを近藤有己に奪われていたし、直前にはエベンゼール・フォンテス・ブラガに血だるまにされている。
その他、西良典、木村浩一郎も、別にどこかのエースでもプロですばらしい戦績を残している選手でもない。

一般的には、最もヒクソンに勝てる可能性があったのは船木と言われているが、俺は中井裕樹だと思っている。
噛みつき、目つぶし、金的、肘打ち、頭突きくらいしか反則がないルールで、ジェラルド・ゴルドーに反則の目つぶしを受けて片目を失明しながらも勝ち上がってきた中井が、ヒクソンと戦った中では一番強かったと思う。中井に、万全の状態でヒクソンと戦わせてやりたかった。


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2011年3月8日火曜日

010 / 376 感動を与えて逝った12人の物語

10点満点で、7点。

今のところ死ぬ予定はないが、どんなに先でも100年後には死んでいるだろう。
どうせ死ぬなら、感動を与えて死んでみたい。うまく死ねなかったから死に直し、ってわけには逝かないし。

何かに人生を捧げてきた人、達観した人、自分の人生を振り返って反省しきった人。本書には、その中でも著者になにがしかの感動を与えた、11人+αのエピソードが語られている。なるほどと確かに感動させる人もいるが、それはどうかと思う人も。

よく思うのだが、普段性格の悪さをさらけ出しておきながら、最後にいいところを見せただけで「本当はいい人だったんだ」と言われるの、何とかならんもんだろうか。最後にちょっとだけいいことしたって、普段がろくなことしてないなら、そいつはろくな奴じゃない。反対に、最後に少しくらい悪いことをしていたって、普段いい奴なら、そいつは基本的にはいい奴なんだ。ちょっと考えればわかるはずなのに、印象だけで語るの、いい加減何とかならないかな。

本書には、そういうエピソードを抱えたジジイが出てくる。医者の言うことを聞かずさんざんわがままを言い散らかして、最後におとなしくなったら「本当はいい人だった」で締めくくられている。バカじゃねえか。


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2011年3月1日火曜日

009 / 375 死ぬときに後悔すること25

10点満点で、6点。

今のところ死ぬ予定はないのだが、まぁ遅めに見積もっても60年後には死んでいるだろう。
そのときに後悔しないために、人はどういうことに後悔するのか、読んでみた。

健康に気を配らなかった、行きたいところに行かなかった、言うべきことを言わなかったというのはまぁ想像通り。面白いというか興味深かったのは、宗教を持たなかったことに後悔する人っているんだね。基本的に無宗教だから、「宗教なんてのは、その気にさえなればいつでも信じることができる」と思っているのだが、違うのかな。

宗派にも依るだろうけれど、まさか「10年以上信仰していない人は救済しない」なんて謳ってる宗教はあまりないだろうし、あってもメジャーではないだろうし。それこそ、そんなことで後悔するくらいだったら、死の直前でも教誨師でも何でも呼んで、信じればいいのに。

ま、死ぬときに後悔しないために、いくらかでも行動を改めることはできそう。
豊かな人生を送るためには、早めに読んだ方がいいかな。

しかし、本書の著者って、俺より年下なんだな。俺ももうそんな歳か。


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2011年2月26日土曜日

008 / 374 ろくでなし

10点満点で、7点。

ミスター麻雀・小島武夫最初で最後の自叙伝。
サブタイトル通り、「酒と女とカネの無頼」に生きた75年を、飾ることなく語っている。

読む分には面白いが、人間としては最低だね。妻と子を捨てて女と駆け落ちしたり、その女と子供を作って前妻の子を引き取っといて逃げ出したり。デタラメきわまりない人生だが、開き直りを通り越した態度で淡々と語っている。たぶん、ダメな人はトコトンダメだろうし、そう感じる人の方が多いと思う。しかし俺は、ヒデえなあと思いつつ、若干の魅力を感じながら読んでいた。

使った金も数千万なら、借金も数千万。億の単位の金を動かし、自己破産を経験して、そして商売は博打打ち。芸能人や実業家と昵懇になり、複数の女優と寝て、どうやってこういう人脈を作るんだろうね。カタギの人生を歩んでいても、たった一人の女優とだって知り合うチャンスなんて無いのに。

桜井章一とは、裏社会の住人として知り合いだったのかと思ったら、違うらしい。テレビで裏芸を披露する際、裏芸のできる奴として見つけ出したのが桜井だとか。麻雀は強いが、「自分を神格化するなんて馬鹿げている」と、俺も思っていることが率直に書いてあった。

アウトローな本。好き嫌いがはっきり分かれるだろうね。


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2011年2月23日水曜日

007 / 373 人間最後の言葉

10点満点で、7点。

人が死ぬに当たって最後に発した言葉を、150+600の750件も集めた本。
「余は負わされたすべての罪について潔白でありながら死ぬる。余は余の全ての敵を赦すぞ」と語ったルイ16世から、「やられた!」なんてのまで。

前半150人分は、欧州特にフランスの歴史を知らないと、読むのが辛い。各人のエピソードを交えて書いてあるのだが、人物も時代背景もわからないと、いったい何を書いてあるのかさっぱりわからないものが多い。フランス革命なんかは割とわかりやすいが、時代すらわからないものも多い。

後半600人分は、短くまとまっていて面白い。人生全ての含蓄を含めたもの、本心から絞り出した言葉、最後のユーモアなど。俺もできれば、こういう本にまとまるくらいの、気の利いた言葉を発して死にたいものだ。


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006 / 372 賭けマージャンはいくらから捕まるのか

10点満点で、6点。

賭け事は決して悪いことではない。競馬、競艇といった公営ギャンブルからパチンコまで事実上公認されているのに、なぜ麻雀は逮捕されるリスクがあるのか。麻雀が、そしてギャンブルが大好きな著者が切々と訴える本。

著者の主張に頷けるところは確かにあるのだが、どうも説得力が弱い。公営ギャンブル等との矛盾を指摘するだけにとどめておけばよいのだが、「ギャンブル好きの犯罪率」等のデータを持ち出しているのが、弱い。いや、客観的なデータなしよりはよほどいいのだが、国内のデータが無いからね。紳士の国イギリス、競馬は上流階級の娯楽という国のデータを持ち出されても、「だから何?」と思ってしまう。

俺もギャンブルは好きだし、麻雀は大好きだし、合法化して欲しいとは思うけどね。本書を読んで、なるほどそうだと思う人って、どれだけいるのだろう。

ちなみに、別の本からの知識。賭博の賭け事と博打は別のもの。賭け事は当事者同士が金品等を賭けるもので、博打は胴元が寺銭を回収して開帳するもの。賭け事はゼロサムゲームだが、博打は胴元が必ず儲かり、参加者は最終的に必ず資金が減っていくことから「場朽ち」が転じたものだそうな。日本で合法なのは博打で、賭け事は違法。コレって変だよな。


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005 / 371 陽転思考

小田先生の著書に、採点だの書評だのなんてできません。

アクティブ・ブレインとはまた別の、小田先生が本業と言っている(じゃなかったっけ?)人間教育について。豊かな人生を送るためのヒントが書いてある本。
短いセンテンスにまとまっている本なので、読みやすい。一読。


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2011年2月18日金曜日

004 / 370 C言語撃退講座

10点満点で、5点。

K&Rを置いてまで手にとってはいけない本。
C言語を256倍使う本」を意識したのか、かなり痛い文体で書いてある。かといって内容は、「ふざけた文体で高度な内容」の256倍と違い、些末なことだったりやや怪しげなことだったり。

本書でもポインタについてわざわざページを割いてあるが、そもそもポインタを難しい難しいと言い過ぎるのもどうかと思う。ポインタの難しさは、演算子の優先順位とその効果にあり、覚えてしまう以外にないことだと思う。
(i = *p++; とか、構造体のポインタ演算とか)
ポインタのアドレス演算は言語側で結構しっかりやってくれるので、プログラマが誤解していなければうまく動く。理解が怪しければ数行のテストプログラムを書いてみればわかる話で、うろ覚えだって安全に使える。

ポインタが本当に難しいのは使いこなし方で、配列で済んでしまったりするところがCの懐の深さというか、融通の利きやすさというか、いい加減さというか。「どっちでも書ける」から使わずに過ごし、苦手意識を払拭しきれないだけの人が多いんじゃなかろうか。実は俺もそうだ。

その点256倍はそのあたりにも触れてて、ポインタの深いところまで気付かせてくれる。
(教えてくれるわけではない)

文体が痛いから、評価も辛辣になってしまった。でも、内容もその程度だと思う。
もっと他に、手に取るべき本はあるよ。


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003 / 369 ヘンな間取り

10点満点で、5点。

ドアがなかったり、キッチンが極端に小さかったりする間取りを紹介している。
確かに異様な間取りが多いのだが、出典が記載されていないので、本当に存在するのか疑わしい。いやむしろ、ただの記載ミス、印刷ミスがほとんどなのだろう。入り口がない部屋なんて、そもそも工事ができないもの。

出典と寸法が明記してあれば面白いのだろうが、本書は余計なコメントも多く、なんかつまらない。
昔はやったVOWの間取り版、と思えばよいだろうか。でもVOWほどのインパクトもない。


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002 / 368 ヌスムビジネス

10点満点で、4点。

サブタイトルに「スパイの手口に学ぶ情報「奪取」術」とあるが、本当なのか。少なくとも本書から受けた印象は、「素人が考えるとこうなんだろうなぁ」程度の情報しかない。

こっそり合い鍵を作るにはどうするか?
→ 粘土で型を取り、鍵屋に「鍵をなくしてしまったが、型はある」と言って合い鍵を作らせる

パソコンのログインパスワードを知りたい!
→ キーボードに小さなキーロガーを取り付ける

シュレッダー処理された書類を復元するには?
→ 色別、柄別に用紙を分けて、根気よく並べる

誰がこんなので満足するんだ?
悪用されないように書いているのかも知れないし、もしかしたら実際の現場もこんな努力で動いているのかも知れない。それならそれで、わざわざ本にするような内容ではないよなあ。

いやまぁ、スパイというものに過度のあこがれを抱いている向きに「現実ってこんなもんよ」とアピールする狙いがあったのだとしたら、それなりに成功しているとは思うけれど。

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2011年2月7日月曜日

001 / 367 裏のハローワーク

10点満点で、7点。

いろいろあって放置していたら、年が明けて1ヶ月も経ってしまった。
この間読んだのは、本書、「ヌスムビジネス―スパイの手口に学ぶ情報「奪取」術」「ヘンな間取り」「C言語撃退講座 ~K&Rは置いて、俺の話を聞け」「陽転思考―ほんとうの自分と出会うために」と、ええと、、、書いとけばよかったな。忘れちゃった。あと3~4冊読んだはずだけど。

今月19日に転居予定で、本は既に運んでしまったので、手元から無くなってしまった。
追々書いていこう。

本書は、「何をやってるのか興味はあるけど、なかなか実情がわからない」職種から、「手が後ろに回る裏稼業」まで、様々な職種についてその実情と、その世界に入ることになったきっかけなどについて、著者の取材を元に明らかにしている。とはいえ職種が職種なので、ほんの上っ面のことしか書いてなかったり、あるいは「いったい何を言ってるのかわからない」ような既述でぼかしてあったりするのだが。

まぁ、真面目腐ってこんな本を読む人もいないだろう。
空き時間に興味本位で読み、読んだらブックオフへ。それなりに面白い。

個人的には、麻雀裏プロの読みが面白かった。そこまでピンポイントで読めるもんかね?


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