2018年2月10日土曜日

005 / 460 暴力団

10点満点で、5点。

「世界一わかりやすいわるいやつらの基礎知識」と書いてあるが、そういう書き方だからなのだろうか、目新しいことは書いてなかった。
法律上の定義は別として、一般的に「暴力団」「ヤクザ」と認識される人種について、上っ面を紹介した本。犯罪がらみのちょっとしたルポルタージュとか、あるいはピカレスクものの小説や漫画などを読んだことがあれば、大体は知っていることなんじゃないかと思う。まあ、フィクションと現実がどのくらい違うのかは、こういう現実側の本を読まないとわからないだろうけれど。

出版は2011年なので、もう7年近く前か。「半グレ」について、あとがきで「警察もまだ指摘していない半グレ集団にスポットを当てる」と書いているが、そうなのかな。気になって調べてみたら、関東連合による六本木フラワー襲撃事件が2012年。その前だったのか。確かにそれまでは、「海老蔵事件で話題になった関東連合」くらいしか知らなかったなあ。

本書では、「暴力団の先行きは暗い」と見ている。組織に所属するリスクが大きくなる一方でメリットは小さく、半グレのように法的にも目の敵にされていない立場の方が好きにできるから、なり手が減っている、と。同じ犯罪をしても、暴力団と半グレは量刑にかなりの差があるようだ。なるほどなあ、たしかにそういう論調をよく見るなあ、と思いつつ少し調べてみたら、少なくとも関東連合は暴力団に吸収されつつあるらしい。関東連合だけの話なのか、一般的なことなのかまではわからないけれど。

ついでに、「半グレ」という言葉自体、本書が初出というわけではなさそうだが、著者の造語らしい。警察からでてきた言葉だと思っていたら違うんだな。
もう一つどうでもいいことに、このブログに「新書」というラベルを追加しておいた。分類に困る本も多いからなあ。過去の記事までは修正しないけど。


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2018年2月4日日曜日

004 / 459 プロジェクトX リーダーたちの言葉

10点満点で、7点。

放送の抜粋と、そこで語られたリーダーたちの言葉。本になっているだけで、放送のダイジェストと言っていい内容。読ませる力があるのは、放送そのものが魅力的な番組だったからだろう。
本ならではという部分は見当たらないから、放送を見た人は読まなくていい本だと思う。まあ、放送を見るには時間がかかるから、気になった内容を再確認したいとか、手元においておきたい人には価値があるだろうが。

放送そのものに言えることだが、よくこれだけの案件の取材をしたものだと思う。NHKの凄みを感じる。視聴率は高いだろうが、特定企業に深く取材を重ねることもあるだろうから、民放では出来ない番組だろうなあ。色々問題があって終了してしまったのは惜しい番組。DVDなどのソフト化されていない回もあるし、全部の回を観たいと思うが、もう叶わないのだろうか。


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2018年2月3日土曜日

003 / 458 セミナー講師超入門

10点満点で、7点。

セミナー講師としてデビューを考えている人向けの、タイトル通り入門書。本番での立ち居振る舞いはもちろんのこと、準備について丁寧に書いてあるのが素晴らしい。
多くの仕事で、段取り8割(7割だったり9割だったりもするけど)とはよく言われる言葉。事前の準備がしっかりできていれば、本番で臆することはないし、逆もしかり。その準備とは一体何を考えて何をすべきなのか、しっかり書かれている。セミナー講師向けではあるが、通常のプレゼンに置き換えても十分通用する話だと思う。まあ、宣伝とか集客とかの方法は別だろうけど。

受講料の考え方、会場手配、宣伝・集客方法など、なるほどと思うことは多い。この知識を実際に使うことがあるかどうかは別として、知っておいて損はないと思う。昨今のビジネス書では一般的な作りのとおり、一つのセンテンスは小さくまとまっていて、また本全体の分量も多くないので、かなり読みやすい。読みやすい中に有意義な情報が詰まっている。できれば、もっと微に入り細に入り書いた、大ボリュームで骨太の本を書いてほしいと思う。多分そういう本は売れないんだろうけど。

セミナーという括りではなく、プレゼンの技術としてまとめた本も書いてくれないかなあ。


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002 / 457 プロジェクトX ザ・マン

10点満点で、6点。

かつて一世を風靡したNHKのドキュメンタリー、プロジェクトXに登場した3人へのインタビュー。聞き手はNHKのプロデューサー。
登場するのは、第36回「奇跡の心臓手術に挑む 天才外科医の秘めた決意」の須磨久善、第53回「炎上 男たちは飛び込んだ ホテル・ニュージャパン 伝説の消防士たち」の高野甲子雄、そして第30回「ツッパリ生徒と泣き虫先生 伏見工業ラグビー部・日本一への挑戦」の山口良治。スクール・ウォーズ大好きなので山口先生の回は何度も見たが、それ以外は実は見ていないので、本書で概要を知った。

プロジェクトXのテーマそのものに共通しているが、基本的にはどのリーダーも滅私奉公に近い形でプロジェクトに全力を注ぎ、それに引かれて仲間がついてくるというもの。感動的な話ではあるが、現在の、そして俺自身の価値観にはそぐわないなあ、と思う。他人事と思って読むにはいいけれど、上司にいたらついていけない。他の全てを投げ打って取り組まなければならないのであれば、それはマネジメントが破綻しているせいだと思う。早い話、もっと人、カネ、時間が必要なんだろ。少数に押し付けるな、と。
(消防士はちょっと違うけど)

こういう人たちを美談として取り上げるのはいいけれど、そういう社会が産んできた歪にもしっかり目を向けないと、日本は良くならないんじゃないかなあ。
欧米ではごく当たり前にある、大きなことを成し遂げながら人生を謳歌している、仕事も余暇も充実している人の話って、日本ではあまり取り上げられないね。


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001 / 456 前田日明が語るUWF全史

昨年末、しっかり書いていこうと思っていたのに新年早々サボってしまった。1月に読んだ分を処理しておこう。

10点満点で、3点。

1984年のUWF(柳澤本)に対する公式反論、となっているが、比較するにはあまりに内容がプア。
柳澤本は当時の記録のほか、現在の雑誌やWEB上の情報、あるいはヒアリングを元に書いてあるが(それでも前田を始めとする当事者にはインタビューしてないから、反論の余地はたくさんある)、本書は当時の雑誌記事以外は前田の発言しか拾っていない。「直接関係者に話を聞いていない」ことに怒っていたはずなのに、その反論本で同じことをやっているのでは仕方ない。
また、柳澤本は「今まで公式に明かされてはいないが、UWFはブックもアングルもあるプロレスだった。その実態はどういうものだったのか」というスタイルで書かれている。それに対する反論として、ライターが実際に知っていたかどうかは別として、少なくとも読者には「UWFは真剣勝負である」と思わせるスタイルで書かれていた当時の雑誌記事で反論しても仕方ないだろう。前提が違うのだから。

反論をするなら関係者に丁寧にインタビューを繰り返し、また現在入手できる新たなソース(dropkickチャンネルのインタビュー記事など)から掘り下げていかなければ、「当時公にされていなかったことを暴く」本に対しては意味が無いんじゃなかろうか。
そもそも本書の著者は前田日明となっているけれど、編集者の塩澤が事実上の著者だろう。塩澤が前田側の視点に立って書いた、と最初からうたっていればそれで済む話なのに、姑息な売り方をしているのが評価をさらに下げる。

前田信者なので期待して読んだだけに残念。


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