2016年7月2日土曜日

020 / 433 世界を変えた17の方程式

10点満点で、7点。

読者に数学及び物理の教養を要求する。俺に読みこなすだけの教養があれば、9点だってつけられるのに。

歴史上重要な17の方程式を取り上げて、なぜ重要なのか、世界にどういう影響を与えてきたかを豊富なエピソードとともに紹介している。紹介している方程式は、目次より以下のとおり。

カバに乗った女房; ピタゴラスの定理
手順を短くする; 対数
消えゆく量の亡霊; 微積分
世界の体系; ニュートンの重力の法則
理想世界の兆し; マイナス1の平方根
結び目をめぐる騒ぎ; オイラーの多面体の公式
偶然のパターン; 正規分布
良い振動; 波動方程式
さざ波とパルス; フーリエ変換
人類の上昇; ナヴィエ=ストークス方程式
エーテルの中の波; マクスウェル方程式
法則と無秩序; 熱力学の第2法則
絶対であるのは1つだけ; 相対論
量子の不気味さ; シュレーディンガー方程式
暗号、通信、コンピュータ; 情報理論
自然のアンバランス; カオス理論
ミダスの数式; ブラック=ショールズ方程式

しょっぱな、ピラゴラスの定理から始まっているのでとっつきやすい本かと思ったらとんでもない。考察は幅広く、深く、じっくり考えながら読み進めないととても理解できない。まあそれでも、序盤の割と早い段階で、数学的な理論展開にはついていけなくなって読み物として読んだのだが。

世界を変えた方程式と言われれば、誰もが思いつきそうなエネルギーは質量✕光速度の自乗とか、オームの法則などがありそうなものだが、見出しにはなっていない。前者は本文中に触れていたが、後者は触れていなかったかな。取り上げた基準はあくまで社会に与えた影響範囲であり、重要だが範囲が狭いもの、小さく完結しているものは取り上げていないということか。決してそれだけではない議論の深さがあるのだけれど。

16個がずっと数学あるいは物理学の重要方程式として登場する中、最後のブラック=ショールズ方程式だけは経済学の分野。これは、金融デリバティブ商品の生みの親となった方程式であり、そしてリーマン・ショックなどの金融危機を引き起こしたものとして苦々しく紹介してある。マネーゲームってやつだね。

面白いとは思うが、本書の価値を理解するには、高校数学のレベルでは足りないんだろうなあ。
少なくとも偏微分方程式は高校ではやらないだろうなあ。


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