2018年8月30日木曜日

私の少年 第5巻 第22話 ベンチ(ネタバレ感想)

ようやく読めた・・・が、切なすぎる!
心理描写が秀逸で、みんな思いがわかる、伝わってくる、それだけに辛い。

【ストーリー】
真修は夢を見ていた。聡子がいない2年を振り返る夢。同じことをひたすら繰り返し、わずか3分に圧縮できる夢。しかし、終りが見えない状態で過ごすのは歯がゆかった。その2年が終わる。
聡子から、12/8に引っ越すことになったとメッセージが届く。


学校で、友人の別れ話を小耳に挟む。受験に集中したい、1年この状態が続くのは難しいから、と話している。たった1年で元に戻るとわかっているのに離れるなんてわからない、と思う。

聡子からもらったニガガクに取り組む真修。2の書き方をチェックしたり、xの書き方をチェックしたり。xの書き方を真似てみたり。早く迎えに行きたいと思いつつ、それまでに半分終わらせることにする。


当日。何を話そうかいろいろ悩む。話したいことはいろいろあるけど、俺の話題は面白くないだろうし。とにかく聡子が笑える話がしたい、と考える。


東京駅で聡子と再開。聡子は笑顔で手を振ってくれた。
駅構内の店の話をされるが、真修にはピンとこない。普段使わないからわからないよね、と言われ、これから利用してみます!とよくわからない答えをしたり、気持ちが空回りする。

電車で、今日はどうする予定なのかと聞かれ、引っ越しを手伝うつもりだったと答える真修。トラックが何時に来るかわからないし、まゆが来るからだいたい頼んじゃうつもりだからいいよ、とやんわり断る聡子。じゃあこのまま帰ることになる、もう少し話をしたいと思うが、うまく話ができない。すごく居心地がいいのに、すごく緊張する。


聡子の新居は駅から近い。時間あるしもう少し話そうか、と聡子。家に上げかけるが、東京駅で買ってきたものを公園で一緒に食べよう、と聡子。


最近どんな感じか聞くが、真修は口ごもる。言いづらいことなら無理に話さなくていいけど、少しでも話せることなら教えてよ、と聡子。つまんないと思う気がするから、と答える真修に、面白い話が聞きたいんじゃなくて、真修のことが聞きたいのだと答える。少し安心して、真修の表情が明るくなる。ニガガクに取り組んでいること、高校は家から通えるところにしたことを話す。でも、違う駅とかに行ってみたかった、例えばこの駅とか、と水を向ける。顔をそらし、たしかにいいとこっぽいもんね、とかわす聡子。
話しながら、今日からずっとこうしていられるんだ、いつか2年間毎日考えていたことを伝えよう、いつでもいい、と思う真修。



友達の進学先を聞かれ、結構バラバラになりそうと答える真修。別れ話の話を思い出し、少し口ごもるが何でも話す、と考え直す。受験なんて1年で終わるのに、終りが見えてるのにそんな理由で離れられるなんて、と真修。しかし聡子は、この時期の1年は中学生活の中でもすごく大切な時間、初めて人生の選択を迫られる子がほとんどだろうし、その中でちゃんと自分自身のことを考えて答えを出した二人はえらいよ、と聡子。それに対して真修は、終わるとわかっているなら3分でも2年でもそれ以上でも待てる、と真修。


それはそれで凄い、私は子どもであるこの期間、真修たちは自分自身のことを一番に考えられる環境にいてほしいと思っている、と聡子。聡子が他人行儀に見えて、意図をはかりかねる真修。俺はこれまでの2年間、自分以外の人のことをずっと考えてました、と口に出してしまう。聡子はどうだったかと聞くが、そんなの覚えてないよ、1年も2年もあっという間に過ぎていったから、とかわす聡子。

真修は2年前のことを思い出す。長い2年がようやく終わって、すべてが元通りになると思っていた。夢を見ていた。


いつか言おうと思っていた言葉が口に出る。俺いま、聡子さんにすきって言っちゃだめなんですか。

【感想・考察】
聡子のいない2年間、やはり真修の世界には色がついていなかった。2年間を振り返るのにわずか3分。その終りが見えない期間を振り返るのに、「辛かった」ではなく「歯がゆかった」というのに意思を感じる。自分が子供でさえなければ、できることはあるはずなのに、という思いだろうか。

聡子から届いたLINEは、登録名が16話の「sato」から、「多和田聡子」に変わっている。登録名は他の人あてにも共通だろうから、真修だけのために変えたわけではないかもしれないが、ちょっと気になる。聡子のイメージからはそぐわない、「!」の使用も。

受験のために別れるという話を聞いて、たった1年のために、それも1年経てば元に戻るとわかってるのに、と思うのは、先の見えない中で2年を耐えてきたからこそ言えるのだろうな。耐えたというか、耐える他なかったのだろうが。もし10月に聡子と再会できていなければ、その後も2年3年と無味乾燥な人生を送っていたのかもしれないと思うと悲しくなる。真修にとっては、聡子がいない2年の間、周囲に何ら希望を見出すことができなかったのだろう。そしてこの時点では、聡子と「元に戻る」ことを考えている。

そしていつの間にか、聡子のニガガクを入手している。20話では聡子が今度来る時持ってくる、と言っているが、その後会った気配はないので、送ったのだろう。ということは、聡子は真修の住所を知っているし、真修も聡子の実家住所を把握したということだろう。まさか匿名匿住所で送るなんてことはしないだろうし。もうすぐ東京にでてくるのだから、仙台のどこに住んでいるのかという情報は、もう隠す必要がないということか。
そしてそのニガガクを見て、xの書き方を聡子に合わせて変えてみたり。心当たりがありすぎてよく分かる。
書きながら、「早く会いたい」ではなく「早く迎えに行きたい」という表現を使っているのは、聡子が上京する=一緒に過ごせる時間が増える、と考えているのだろう。ただ会うだけではない、継続的に会える、それが日常になると思っているからの表現ではないだろうか。

会ったら何を話そうか、と考えているのは、18話で電話したときに必死で話題を探していたのを思い出す。言いたいこと、伝えたいことを考えるのではなく、聡子が笑顔になれることを考えている。自分より聡子の気持ちが優先。このとき思い描いた聡子の笑顔が、微妙に年齢相応に老けた感じがするのは気のせいか、意図的なのか。

駅であった聡子が見せたのは笑顔。20話で会ったときは笑顔を見ていないから、真修に笑顔を見せたのは19話で、「だからの先今はわかんないわ」と、息を切らしながら言った時以来。このときは余計なことを何も考えずに、心臓の中に一つだけ残っていた言葉を出したあとだから、自然な笑顔。しかし今回は、他の場面も含め、他人行儀な笑顔に見える。穿ち過ぎかな。電車での表情は固いから、心からの笑顔を見せたわけではないと思うのだが。

はっきりとはわからないけれど、聡子はスカートを穿いているのだろうか。今まで4回(第4話の回転寿司、第10話で想像した未来、第14話の高校時代の回想、それと八島と会った誕生日)しか見せていないから、微妙に特別感を見せている気がする。まあ現時点でスカートに見えるだけで、ガウチョかもしれないけど。

真修が引越の手伝いを申し出たときは自然に断っているが、これは想定して来たのだろうか。でも、引越の手伝いをするのでなければ、上京したその日に会う意味って全然ない気がするけど。19話で、会ったり話をしたりするのはすごく慎重になる必要があると自分で言っているのだから、他に誰もいない状況で食事に行ったりしようとは考えていなかったと思うのだけれど。まゆがいればともかく。逆に、真修は引越の手伝いをしないのなら、そもそも何しに来たんだろう・・・と思わないでもないが、これはまあ会いたいのだから仕方ない。
聡子のことを、居心地がいいの緊張する、と感じているのは、聡子が作っている壁を感じているのだろう。小学生の頃聡子が見せていた笑顔とは違う、と。

マンションについて、聡子が真修を上げなかったのは、単純に荷物がなにもない=椅子すらない、からではないだろうか。真修を上げてもよいかというのは考えてきているだろうから、駄目だと判断したのならばそもそも言い出さないはず。

真修の日常を聞く聡子は、保護者になろうとしているように見える。他の行動からはやや辻褄が合わないけれど、「『少しでも』話せることなら教えて」と言うのは、相手に普通以上の関心を持っているという意思表示だから。

話しながら、この駅に来てみたかった、と水を向ける真修に対し、聡子は横を向いたあとに話をはぐらかす。そういう話をさせないようにしなきゃいけないのに、失敗したと思ったのだろうか。

同級生の別れ話をしていて、終わりがわかっているなら3分でも2年でもそれ以上でも待てる、と言うのは明らかに聡子に向けた言葉。3分というのは動画の再生時間でもあるけど、聡子が荷物を置くのに待ってと言った時間だから、聡子も自分のことを待つ時間だとピンとくるだろう。そして、今はまだ真修との関係を戻せない、まだしばらく待てと言われるのなら、待つという宣言か。19話の電話で聡子が一度拒絶したし、その事情は今でも変わっていないのだから、待たなくてはいけないかもしれないと頭ではわかっているとアピールしているのか。

それに答える聡子は、9話で別のサッカークラブを勧めたときのように、一般論で答えている。あのときよりも真修に対する気持ちは現れているが、真修の視点からは空虚な言葉に見えている。9話では、本心をさらけ出した真修は聡子の心を動かしたが、今回はどうなのだろう。聡子はおそらく、真修がそういう意識を持っていて、それを言わせないように振る舞ってきているから、言わせてしまった場合のことも考えてきているとは思うのだが。それでも、ペットボトルの蓋を落とす程度には動揺している。恋人、という単語を出してしまったな失敗だったんじゃないかなあ。

思いを告げる直前、真修が振り返った動画はしっかりした長さ。2年が3分で振り返れるのに、プールが75分とか。プールは菜緒たちと遊んでいた時間のほうが長いだろうに。
2015年と1年間違えているのはケアレスミスかな。多分単行本では直るのだろう。
すべてが元通りになる夢を見ていた、と夢を強調しているのは、今のままでは戻れそうにないと感じたのか、もっと先へ進みたいと思ったのか。まあ両方だろうけれど、今の聡子からは、関係を切られてしまうリスクを強く感じたんだろうな。

さてこれを受けて聡子はどう答えるのだろうか。思いついたのはこんなところ。

  1. 真修の気持ちを受け入れる
  2. 今はダメだ、大人になるまで待てと告げる
  3. 今はダメだ、大人になるまでもっと周りを見て過ごせと告げる
  4. 真修をそういう対象として見てはいない、と断る
  5. はぐらかす

1番はあり得ないかな。受け入れるのであれば、その前段で一般論をぶつ必要がない。まゆに「禁断の年の差恋愛」と言われたときの反応からしても、真修の恋愛感情を受け入れるとは思えない。
5番もないと思う。19話で真修の成長を認めて、ある程度大人として扱おうと考えているから、真摯に対応すると思う。

ありそうなのは3番かなあ。聡子自身が真修に恋愛感情を持っているかどうかははっきりわからないけれど、真修が聡子に恋愛感情を持つことは健全ではない、と思っているフシがある。その気持に真摯に答えるのなら、頭ごなしに否定するのではなく、大人になるまでもっと視野を広げて生きろ、と言うのが一番自然な気がする。

2番は聡子自身に恋愛感情があるのが前提だから、現時点では難しそう。
4番は逆に、恋愛感情がないことが前提だから、これはこれで微妙に違う気がする。しかし、聡子にその気が全くなければ、これも真摯な態度であることに違いはないから難しいな。

21話で言った「やらなきゃいけないこと」は、真修にとっての one of them になることなんじゃないかなあ。
小学生の真修から聞いた最後の言葉は「いなくならないで」だった。19話で一旦別れを告げようと決意したけれど、本心から出た言葉は「また会えるよ」だったのだから、それを聞いた真修の気持ちを軽々に裏切るとは思えない。新居の場所を抵抗なく教えたこと、家にあげようか逡巡したことも含め、「気軽に会えるその他大勢の一人」になろうとしている気がする。聡子が求めていたのは、真修との「ささやかな流れていく日常」だったのだから、特別な関係である必要はない。もちろん距離感は特別なのだろうけれど、それは常に真修がいなくてはならない、という性質のものではなさそう。ある意味ずるいのだけれど、恋愛関係ではない特別な関係、という中途半端な立ち位置を維持するのが、聡子が求めるものではないだろうか。それは、仮に真修に恋人ができても成立しうる関係だろうから、真修に年齢相応の喜びを知ってもらうことと矛盾しないし。

まあ、最終的には真修と聡子が恋人もしくはそれ以上の関係になってほしい、第10話で想像した未来の姿がラストシーンであって欲しい、と思う一読者としては、上記の推測は見当はずれであってほしいのだけど。

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
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2018年8月25日土曜日

私の少年 第5巻 第21話 穴(ネタバレ感想)

とうとう連載に追いついた。そして待ち遠しかった22話は明後日読める。幸せ。
でもネタバレ防止のため、22話について書くのは一週間後、ヤンマガが店頭から消えてからにしよう。

【ストーリー】
まゆの回想から始まる。
母との関係がギクシャクしている聡子。しかし何を聞いても「まゆには関係ないよ」と教えてくれない。
聡子が進学のため家を出る前日、母と喧嘩して泣いていた。しかしその理由を聞いても、関係ないよと教えてくれない。ずっと意地悪だと感じていたので、翌日病気のフリをして見送りに行かなかった。


それからまゆが専門学校を卒業した歳に、父は祖母の介護を理由に家に帰ってこなくなった。変わりに、母はよく人を呼ぶようになった。
その年のクリスマス、母が人を連れてきてホームパーティをする。その中のひとりが、トランプゲームの途中で手を握ってくる。トイレに逃げて、イライラのあまり壁を殴るまゆ。そこだけ変な壁紙を貼ってあるところは、剥がしてみると穴が空いていた。母の腰に男が手を回していたのを思い出し、聡子が母に男がいたことを知っていたのだろう、と気づく。聡子は、まゆに醜悪なものを見せないようにしていたのだ。


舞台は現在へ。
ルームシェアなんて無理だからね、と聡子。仕事とか彼氏とか、ちゃんと考えて物を言いなよ、お母さんはどうすんのよ、と聡子。別に大丈夫でしょ、なんか問題ある?とまゆ。問題と言うよりも、ひとりでやんなきゃいけないことがたくさんあるの、と聡子。例えば、と聞くが、まゆには関係ないことだし、と答えない。


翌日、二人で物件を見に行く。スイッチの位置、カビのあとなど、細かいところに鋭く気がつくまゆ。聡子が観察眼鋭いね、昔はぼんやりしていたのに、と言うとまゆは「もう二度とぼんやりしたくないって思ったから」と答える。
このFBIにかかればまくらくんの正体も一発、というと聡子は慌てて真修に何、と言いかける。やんなきゃいけないことってのも真修関係でしょ、禁断の年の差恋愛だから言えないよね、と茶化すと、聡子は真剣な目で「あんた 何言ってんの?」と唖然としたような、睨むような、驚いたような表情を見せる。真修は完全にそうなのにこの顔はなんだ、と驚くまゆ。


母親のことを聞くと、亡くなっている、と聡子。私は真修が、家族にしてもらえてないことをしてあげたかったんだと思う、と聡子。聡子は真修の母になろうとしているのか、自分が母からもらえなかったものを真修に与えて、与えることで真修から同じものをもらって、埋めあいっこしてるわけじゃないよね、とまゆ。聡子の表情が真剣なのを見て、話を切り上げる。
その気持はわかるけど、聡子が与えたい形と真修から帰ってくる形は笑えるくらい違う、それを無理やり埋めようとしたらどんどん隙間ができる、と思うまゆ。

次に見に行った物件では、WICに大きな穴が空いている。よりによってこんなものが、と思うまゆを知り目に、聡子は広さに目を見張る。眼の前の穴が目に入っていない。まゆに言われ得て初めて気づく。直さないで済むことはできないか、と意に介していない聡子。絶対キレイにしてもらったほうがいい、というまゆに聡子は、やらなきゃいけないことがあるからこんな穴なんかどうでもいい、と言い切る。


その姿を見てまゆは、聡子はずっと穴を見つめて生きてるのだと思っていたが、もう別の場所が映っているのだと知る。
ここで見たいものができた、だから一緒にいよう、とまゆ。

【感想・考察】
これまで断片的に匂わす程度でしかなかった、聡子の家庭環境が明らかになる。第1話で真修の母親のことを「いないことにしたい?」と思ったのは、自分自身がそうだったからなのだろう。
そしてまゆがFBIになった理由も明らかになる。自分自身に対する怒りもあるだろうけれど、聡子のことは本当に好きなんだろうなあ。

まゆに対し、仕事とか彼氏とかどうする、と言っているが、本当にどうするんだろう。そもそもまゆは今、仕事してるのだろうか。聡子が大学に進学する時中学生くらい、もしかしたら小学生かもしれないとして、せいぜい5歳くらいしか離れてなさそう。となるとまゆだってもう30近いわけだから、仕事はしているだろうに。大学院にでも行ってれば別だろうが、「専門学校を卒業」と言っているから、多分二十歳で就職したのだろう。高校は農業高校だし。最後に「仕事早く見つけなよ」と言われ、「履歴書の写真めっちゃ盛るから」と答えているから、今は仕事をしていないのか。仕事を持ってたら、辞めるという話が先に来るべきだし。

聡子と真修の関係を、茶化しながらでも正面から受け止めて、否定していないのがいい。恐らく関係性に理解があるのではなく、二人の人物を見て、変なことはしないと思ったのだろう。
しかし、まゆに恋愛感情を指摘されたときの聡子の表情が怖い。焦りは見えず、怒りと驚きが見える。他人からはそう見られる恐れのある関係であることを理解できない聡子ではないだろうに、この表情。自分自身が全く恋愛感情を持っていないから驚いたのか、まゆですら誤解していることに驚いたのか。いずれにせよ焦りの表情が見られないということは、逆に聡子には恋愛感情はないか、あってもごく小さなものなのか。これまで時折その感情を思わせる表情はあったが、どれもごく僅かな瞬間なので、聡子の中では真修は恋愛対象ではないのだろう。

逆に、母親になろうとしているのではないか、と言われたときの表情は真剣に考え込んでいるので、こちらはほぼ正解なのか。
おそらく自分でも整理できていないものの、そう説明するのが最も近いのだろう。
この短時間で、聡子と真修の感情を読み取るFBIっぷりは恐ろしい。

さて、聡子の言う「やんなきゃいけないこと」って何だろうか。
真修に別れを告げるつもりなら、そもそも東京に引っ越してこなくていい。今回のように、偶然会ってしまうリスクもあるわけだから、19話で決意した「さよならしよう」とは違うはず。
真修との関係をきれいにして、後ろ指を指されないようにしたいのだろうか。そうなると、どうやっても早見ともう一度話をする必要がある。しかし早見は大阪に単身赴任中なので、東京にいる意味はない。まあ、真修と交流するには東京にいるべきだから、話をつけたあとのことを考えて東京に出るのかもしれないけど。それにしても、それならそれで、早見と話を付ける前に真修との交流を再会するのは悪手の極みだから、違う気がする。もちろん早見に反対というか拒絶される可能性は小さくないから、そうなっても真修と交流を続けるという覚悟を持っている可能性もあるけれど、それは考えにくいなあ。それは、椎川を始めいろいろなところに問題を起こす可能性が高いことだから、聡子がそういう選択肢を取るとは思えない。あるとすれば、真修としっかり話をした上で、真修が成人するまでは交流が持てないと説得するくらいか。でもこれも、やはり東京にいるリスクは高いから、違う気がする。

こういうことを考えて、悶々としながら次の話を待てるのは幸せ。
途中から変な方向性で話が展開したり、あるいは無期限休載になったりとか、そうならなければいいなあ。

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2018年8月24日金曜日

私の少年 第5巻 第20話 黄色と青(ネタバレ感想)

【ストーリー】
聡子のことを思い、勉強が手に付かない真修。数学の点が取れない。社会は勉強しなくても取れるのになあ、と思った時、聡子に「もしかして社会得意?」と聞かれたことを思い出す。そういえばあの時から社会が得意になった。


聡子のことが気になり、いつ東京に戻ってくるのか聞こうとするが、考え直す。変わりに、数学の勉強方法について聞くことにする。聡子からは、ニガガクという参考書を紹介される。見たことがない本で、書店で問い合わせると新宿には在庫があるとのことで、新宿まで出かけることにする。本のカバーが、聡子が紹介してくれたのは黄色、現在流通しているのはリニューアルされて青らしい。中身のレベルはいっしょなのだろうか、と考えながら歩いていると、髪の毛を黄色から青に染めている女性を見かける。なんとなしに見ていると、その側に聡子。思わず声を掛ける。

なぜここに、横の人は誰だろう、と思っていると、髪を染めた女性が勢いよく話しかけてくる。真友子といい、聡子の妹と名乗る。聡子はもう東京に戻っているのかと聞くと、1ヶ月後に戻るから、住む家を見に来たと言う。真修と聡子が話しているところへ、まゆはご飯を食べに行こうと誘う。真修は家で食べないといけないが、ご飯食べなくていいなら行きたい、と答える。

二人のきっかけが気になるんだけど、と聞く聡子に、サッカーの練習をしていただけの関係だと答える聡子。まゆは真修に兄がいるかと聞く。兄じゃなくて弟がいると答える真修。聡子は話題を変え、真修の用事があるのではないかと聞く。真修はニガガクを探しに来たと答えると、まゆは「だから部屋にニガガクがあったんだ」と言う。聡子は真修が必要だったらあげようかと思って探してみたが、ボロボロだったと言う。

話しているあいだに、聡子に電話がかかってくる。まゆが何を言うかわからないので席を離れたくないが、不動産屋からの連絡だとまずいので席を立つ聡子。
まゆは例によってFBIっぷりを発揮。まくらとは父親のことかと探りを入れるが、真修は小学生の頃うさぎにまくらという名前をつけていたことを言う。まくらとは真修のことか、と気づくまゆ。
真修は聡子のことが好きなのか、とストレートに聞くまゆ。別にそういうのじゃないんですけど、と真修。いつもどんな感じで会っていたのかと聞かれ、公園での練習、そして試合で頭をなでてくれたことを話す真修。


テレビで見たサッカー少年に憧れてサッカーを始めたが、ずっと補欠だった。聡子と出会ってからはどんどん楽しくなってサッカーが好きになったが、中学ではやめてしまった。本当はサッカーがやりたかったんじゃない、天才少年の頭をなでていた家族に憧れていたんだと語る真修。聡子がなでてくれたことで、ずっと憧れていた手があって嬉しかった、と真修。


それを聞いて真修の頭を撫でるまゆ。戸惑う真修に、私じゃ嬉しくないでしょ、真修が欲しかったのは「誰か」じゃなくて聡子の手だったんでしょ、とまゆ。


そこへ聡子が戻ってきて、物件は他の人に取られたと言う。
真修は意を決したように、聡子のニガガクが欲しい、今度東京に来るときは迎えに行くから必ず言ってください、と言う。ふおおおお、と混ぜっ返すまゆ。


帰り道。疲れ切って酒を買おうとする聡子にまゆは、一緒に東京に住むと宣言する。

【感想・考察】
多分単行本には収録されない、アオリ文が秀逸。


そう、真修の世界が再び色づき始める。恐らく、聡子と出会う前の真修は、無色の世界にいたのだと思う。そして、聡子と離れてからも無色の世界に戻りつつあったのではないだろうか。
それが、聡子と出会うことで色のある世界を取り戻しかけて、今また再開して色づいてきたのだろう。
また、この話からは真修が明確に恋愛感情を意識し始める。14歳という年齢だし、もう一つの意味で色づき始めるのだろう。

FBIまゆ再登場。予定通りなのか、16話でのFBIっぷりが好評かつ使いやすかったための再登場なのか。読者としては、話を大きく進めてくれるキャラだからありがたい。しかも真修聡子双方に理解があるし。

数学68点という真修は、特進クラス5位にしては悪すぎないかなあ。こういう塾には行ったことがないからわからないけど、超進学校を目指すようなクラスだろうから、平均点で90点程度、80点を切るとかなり悪い部類に入るんじゃないか。得意という社会も92点だから、普通に成績がいいレベルのような気がする。
聡子に社会が得意なのか、と聞かれてから得意になった、というのはこの世代であるあるすぎる。ちょっとしたきっかけで好きになり、好きだから得意になる、というパターンだろうな。

聡子に頬をぷにっとされたことを思い出して赤面しているが、あのときの反応は単に驚いた程度だったから、意識してなかったんだろうな。今だと、直接顔に触れることがハードルの高いことだ、というのを理解しているのだろう。
そして、本当に聞きたいことは聞かずに、当たり障りのない話題を送るのもあるある。

まゆのテンションの高さが素敵。最初からまくら関係者だと感づいているのはさすがFBI。恐らく、聡子が東京に戻るということを知っていることから、今でも連絡を取り合っている、ただのご近所さんではないと思ったのだろう。ご飯食べなくていいなら行きたい、と正直に話す真修は、FBIの前ではもう隠し事なんて無理だねえ。

ニガガクの話で、母親の物持ちがいい、というのがちょっと以外。家庭のことはあまり興味がない人物かという印象があったが、決してそういうわけでもないのか。

聡子が不動産屋と話すために席を外す時「見てるから」というのがちょっと怖い。明らかにまゆが探る気満々で、それを牽制しているのだろうが全然効いてないし。その後の展開を見ると、見える場所では話ができなかったんだろうなあ。まゆ無双すぎる。
そしてまくらが真修のことだと気づいて、恋心だろうと感づいても、否定しないのが(読者的には)いい。16話の段階で聡子はまくらと一緒の時間を過ごすべきだと思っていたのだろうが、相手が中学生だと知っても動揺しないで、そのまま受け入れている度量は只者ではない。真修の真っ直ぐさはすぐに感じ取っていたから、好感を抱いたのだろうけれど。

聡子が頭をなでてくれた話を引き出す時、周囲の客が引くほど大声を出しているのはどうかと思うが、真修が恋心を自覚するように誘導したのは素晴らしい。そして自覚した真修は、前にも増して攻めてくるようになった。顔を赤く染めて、まゆですら目をむくほど真っ直ぐに、聡子に対し正直になっている。まゆが混ぜっ返したときも、俺は真剣なんだ!という目でまゆを見ている。これでもう、自他ともに認める恋愛感情に入ったのだろう。それに対し聡子がまゆを睨みつける視線は、余計なことしやがって・・・と語っているように見えるが、これは本心なのか立場を意識してなのか。

最後にまゆが同居を宣言するのは、唐突すぎてよくわからない。何を意図しているのだろう。単に野次馬根性なのか、聡子の露払いをしたいのか。少なくとも邪魔をしたいわけではなさそうだが。

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2018年8月23日木曜日

012 / 467 超高速!参勤交代リターンズ

10点満点で、6点。
前作が想像以上に面白かったので手に取った。期待しすぎたせいか、やや期待はずれ。

前作以上に設定に無理がある。前作でもかなり厳しかった日数がさらに半分。出発するまでの経緯も無茶苦茶。前作で瀕死の重傷を追った登場人物たちも、体力的には全快といっていい状態で登場するが、半年からせいぜい1ヶ月経っていないくらいの話だったり。

2日しかないので、事件も大掛かりなものを用意できず、また数を用意することもできないので、刺客が襲ってくるのがメインテーマ。前作は知恵で困難を乗り切るのが面白かったが、今作は武力勝負で乗り切るシーンが多く、ご都合主義が目につく。前作の完成度を高めていた、時代トリビアも殆ど無いし。

その分深く考えずに読むことができるので、時間はかからない。400ページほどの本ながら、2時間弱でサラリと読むことができた。気軽な読書、というにはちょうどいい本かもしれない。

文庫本kindle

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私の少年 第5巻 第19話 酸素(ネタバレ感想)

19話からはまだ単行本未収録。5巻収録予定。

【ストーリー】
「会いに行きます」
彼に言わせてはいけない言葉だった もらってはいけない言葉だった
だけどもそれは 私にとってこれ以上ない言葉だった

涙をこらえ、意を決してなにか言いかける聡子だが、電話から聞こえてきた調子はずれのチャイムでタイミングを失ってしまう。落ち着きを取り戻し、真修の身長を聞く。166, 7と聞いて、もうすぐ抜かれそう、と聡子。
真修の成長を実感し、真修の2年を無視し続けて、何も言わなかった自分を反省する。


思い直して、仙台には来ちゃだめ、と告げる。真修と会ったり話をするのは楽しいけど、これは慎重にならなくてはいけないこと。今までサッカーの練習をしたり、試合会場まで送り迎えしたことは、「大人が未成年をかどわかした」と言えることなのだ、と告げる。


「それダメなことなんですか」と真修。他の人から見たら変かもしれないが、俺と聡子さんは普通だ、と言い切る。
だから仙台に行く、と言う真修を聡子は止める。行くと困るか、と聞く真修に、困らないけど困ることにはなるかも、と聡子。言葉を失った真修に、私が会いに行くから、と言う。ちょうど仕事で本社に呼ばれていて、そのときに話そうと告げる。

電話を切ったあと、やってしまったかも、と悩む聡子。あのままだと本当に仙台に来そうだったし、だいたい往復でいくらかかるかわかってるのだろうか、わかってるんだろうなあ、と思う。2年間頭の中にいた真修は小学生のままだったが、年齢とか環境とか思考とか、見た目以外も変わっていることを思う。真修にあったら全部説明しよう、仙台に行くまでに起きたこと、父親のこと、正直にでも傷つけないように話して、それからさよならしよう、と決意する。


東京に出てきて、移転した本社に戸惑う聡子。セキュリティのしっかりしたビルで、受付で渡されたカードキーがないとエレベータすら操作できない。
32階に上がると、椎川から声をかけられる。窓から外を眺めて、懐かしいと感じるかと思っていたが、そうでもないんだな、と思う。椎川の印象も変わっている。お土産を渡す時、左手から指輪が消えていることに気づく。

椎川が話し始めるのを遮って、新プロジェクトの参加を断る聡子。そもそもなぜ仙台の自分が、本社の人のほうが適任ではないか、と言う聡子に、椎川は部署にこだわらず適任と思しき人に声をかけているのだと答える。取引企業とのコネクションを考えると聡子が適任だし、仙台に行ったあと穴を埋めるのにも苦労した、と言う。そして、早見の会社とはうまくやれている、もう2年もたったからいいだろう、帰ってこいと言う。


そこに、遅れてきた田中が来る。聡子が知っているどの田中でもなかった。時刻は16:05。

17:50、真修は指定の店に着く。メニューを見て値段に驚き、最安値のコーラを注文。

18:21、田中はまるで関係ない話が止まらない。18時には切り上げたいと言っていたのに終わらないし、椎川もどこかに行ってしまった。約束の時間を20分も過ぎて焦る聡子。休憩を入れてもらい、エレベータに飛び乗る聡子。しかしカードキーを忘れ、1階に降りることができない。他の人に同乗して10回まで降りたところで真修に電話。風の音が強くよく聞き取れないが、真修は店を出て待っているらしい。今日は寒いから温かいところに、と言いつつ歩いていると、非常階段を見つけて、すぐ行くから!と聡子。


階段なんて楽勝だったはずなのに、駆け下りて息が上がる聡子。真修に会って話をしようと思っていたことが、どんどん頭から消えていく。なんとか地上まで降りたものの、疲れ切ってへたり込む聡子を見つけ、真修が手を差し伸べる。プールで過ごした時を思い出す聡子。真修の手は冷え切っている。なんでこんなになるまで外にいたの、なんでそういうとこ全然変わらないの、なんで今も手をひいてくれるの、と思ったら無意識に、わたし東京戻ってくるからまた会えるよ、と言ってしまう。だから、と言いかけるが、その先はわからない。冷たい風が吹いて震えたところに、真修は仙台でもらったマフラーを返す。そして笑顔で「おかえりなさい」とかけた言葉に「うん、ただいま」と返す聡子。


言ってはいけない言葉だった、あげてはいけない言葉だった、だけどそれは窒息しそうな心臓の中に一つだけあった、これしかない言葉だった。

打ち合わせの席に戻った聡子は、企画の話を詳しく聞かせてほしい、と切り出す。

【感想・考察】
俺が初めて読んだ話。予備知識皆無でヤンマガで読んだときは、雑誌掲載の「30歳のOLと12歳の少年が出会う」「年齢や立場の差を超え心を通わせる」「だが真修との交流が問題となり、聡子は東京を離れる」という概要説明から、「大人と子供の恋愛モノかよ、大人が手を出したのが問題になって飛ばされたのに、またよりを戻すとかいう話になってるのか、キモっ!」という印象。実際、最後に「また会えるよ」という発言もあるし、何このキモい世界・・・と思っていた。
それがまあ、1話からちゃんと読んでいくと、変わるもんだなあ。我ながらどうかしてるレベルで評価を変えている。まあ、正しく評価できるようになった、と思うことにしよう。

ヤンマガに移籍したことで、単行本のあとがきで何度も言及されていたH澤チェックがなくなったようで、作画がちょっと荒い気がする。荒いと言うか、18話までのクオリティが異常だった気がしないでもないけれど、でも何となく落ちる。

最初、チャイムに邪魔されなかったら、聡子は何を言うつもりだったのだろうか。意を決した目からは、別れを告げようとしていた感じがする。それを押し留めたチャイムGJ。
真修の身長を確認することで、真修の成長を感じ、子供ではなく一人の人物として対応しようと考え直したのだろう。

聡子が「大人が未成年をかどわかした」と言う時回想しているのは、第4話で回転寿司のあと真修に初めて「聡子さん」と呼びかけられたシーン。聡子から声をかけたわけではない場面が出てくるというのは、この瞬間から聡子の心が真修に奪われた、ということなのだろうか。そうでなければ、聡子が真修に声を掛ける、あるいは真修を連れ出すシーンじゃないとおかしい。まさか被害意識を持っているわけでもないだろうし。

真修の「かどわかすという意味がわからない」というのは、まさか言葉通りの内容ではないだろう。塾では特進コースにいるし、本も読んでいるから言葉を知らないわけでもないだろう。「普通の人間関係なのに、かどわかすと言われる理由がわからない」ということか。いやでもそこはわかれよ。もちろん、そう言われる筋合いはないと思うだろうし、それはそれでいいのだけれど、他人からは表面しか見えないのだし。
他の人から見たら変かもしれないけど、「俺とかから見たら普通」という、「俺とか」が気になった。「俺から」じゃないのは、聡子から見てもそうだろうと暗に言っているのか、それともただの若者言葉なのか。聡子さんも普通だと思うでしょ、という意味が込められているのではないかなあ。

聡子の「困らないけど、困ることにはなるかも」というのはどういう意味だろうか。感情的には困らない、しかし社会的には困る、ということか。

電話を切ったあとの、聡子の悲壮な決意が悲しい。心から真修のためを思って、自分がどう思っても、真修のために別れようと考えたのだろう。

久しぶりに登場した椎川は、聡子のことを終始「多和田」と呼んでいる。椎川なりに感情を整理したのだろうか。指輪がなくなっていることといい、聡子に向けた視線といい、聡子の年齢相応のパートナー候補として再度役割を与えられるという描写なのだろうけど、オマエも菜緒同様モブ扱いでいい。社会的存在として聡子と真修の関係が危ういものであることを知らしめる存在であってもいいけれど、人間関係には立ち入ってくるな。
そして椎川は、やはり会社にとって重要人物なのか。聡子を仙台に出したのも、役員から直接連絡があったようなことを言っている。もちろん上長経由で相談があった可能性のほうが高いが、仙台に出すときも、東京に呼び戻すときも、人事としては椎川以外の人物が登場していないから、相当なキーパーソンであることがわかる。ただの主任にこれだけの影響力は普通ないだろう。

聡子が真修と合う場所として指定した店は、本社の近くでたまたま見かけたところなのだろうか。コーヒー1杯1,300円とか、中学生を呼ぶ店じゃないし。最後の大切な話だから、あまり人がいないようなちゃんとした店を選んだのかもしれないけど。どっちだろう。

階段を駆け下りるだけで息が上がる聡子は、第1話の描写とは逆に、仙台で運動する習慣がなくなってしまったことを表している。もちろん男性用の靴とは歩きやすさが違うのだろうが、階段を降りるだけなら、10階だって酸素全部吐き出すほど大変ではないはず。自他ともに認める運動不足の俺が思うのだから、少なくとも2年前まで体を動かしていた聡子がそこまで疲れるというのは、尋常ならざるスピードで駆け下りたのだろう。

ようやく地上についた聡子を迎えた真修は、聡子の記憶にある、優しい真修のまま。聡子の心を埋めてくれた、たくさんのものをくれた、真修の変わらない姿を見て、聡子が必死になって守ってきた殻が全部破れてしまった。
思わず「また会えるよ」と言ってしまったが、だからの先はわからない、というのは、自分でもどういう形で真修と接していくべきかわからないのだろう。考えてこなかったわけだし。しかし、「おかえりなさい」と声をかけられて、自然な笑顔で「ただいま」と返事をしたのは、何かが吹っ切れたのだろう。

そして最後にどうでもいいが、聡子はどうやって32階まで戻ったのだろうか。まさか階段を再び登ったとか・・・

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
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第1話のネタバレ感想

単行本kindle

011 / 466 不死身の特攻兵

10点満点で、7点。

9回の特攻出撃を繰り返し、「必ず死んでこい」と言われながら生還を果たした特攻兵、佐々木友次氏の話。そういう人が存在するというのは聞いたことがあったけれど、具体的なことは何も知らなかった。たまたま書店で、太平洋戦争特集みたいなコーナーに置いてあるのを見かけて手に取った。

本書の大半は、既に絶版となっている高木俊明氏の「陸軍特別攻撃隊」の抜粋。著者が佐々木氏を知ったのは他界される少し前で、佐々木氏の戦争体験を詳しく聞くことはできなかったから、それは仕方ない。著作権者の許可も得ているようだし。
これによると、佐々木氏の戦争経験は非常に厳しい。パイロットに憧れて訓練を続け、凄腕のパイロットとして頭角を現したばかりに、特攻兵として選抜を受ける。その隊長は体当たりの有効性を否定し、跳躍爆撃という難易度は高いが撃破率も高い方法の第一人者として訓練を重ねていた岩本大尉。岩本が行ったのだからもはや体当たりしかない、という世論を煽るための、政治的な人選。
しかし岩本大尉は、本来できないはずの爆弾を投下する方法があることを知り、それを部下に伝える。またそれとは別に、死ぬことが目的ではない、敵艦に命中させることが目的なのだから、何度でもやり直していいと告げる岩本大尉は、本物の軍人だろう。それに比べ、後方の安全なところで、ただ名誉のために死ね死ねと命令を出し続ける連中の醜悪さが目に余る。

佐々木氏は結局体当りすることなく、機体不良で帰還したり、あるいは爆撃に成功したりして、都合9回の出撃から生還する。しかし戻ってきたときに待っているのは、前線の兵士からの尊敬だけではなく、後方からの罵倒と叱責。俺もあとから逝くから、と言って送り出した連中は誰も逝っていない。

この醜悪さは、戦後も尾を引いている。当時の指揮官は(少なくとも佐々木氏にとって)真実を語らず、特攻兵を美化するばかり。
元特攻隊員の桑原氏が、戦後予科練の懇親会でインタビューを受けて「皆死にたくなかった、怖かった、しかし命令であるから従うほかなかった」と語ると、予科練の面汚しだと四方から罵声が飛んだと言う。しかしその中で、実際に特攻隊に配属された経験があるのは桑原氏だけで、罵声を飛ばした人々はその経験がない。当事者と外野の意識の違いがよく分かる。

単行本kindle

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2018年8月22日水曜日

私の少年 第4巻 第18話 距離(ネタバレ感想)

【ストーリー】
真修からの「通話とかはできませんか?」とのメッセージに「もしかして何かあった?」と返す聡子。心配させてしまったかと思いつつ、「はい、ちょっと・・・」と返す真修。聡子はちょっと待って、場所移動するからと返信。嘘をついてしまったけど話せる、と真修。
車に移動した聡子から電話がかかってくる。心配する聡子に、実は何もなくて、と答える真修。何もないんならよかったが、こういう嘘はだめでしょうが、と聡子。真修が何か言いかけると、大きな声で呼ばれる。驚いた聡子に、ばあちゃんに怒られた、今は父が単身赴任してばあちゃんが来てくれている、と話す。ばあちゃんとは今までずっと会えなかったから、俺のこと小2とかだと思ってる、と真修。わかるわかる、最初に会ったときの年齢で時間が止まっちゃう、久しぶりに会うとこんなに大きかったっけ?・・・と聡子。聡子も自分が変わってて驚いたか、と真修。しばらく話をして、明日もまた話せるかと聞く真修。多分大丈夫と答える聡子。明るい表情の真修に対し、聡子の表情は暗い。


翌日学校で、菜緒に電話で話をしたことを告げる真修。もっと早くこうすればよかった、と礼を言う。学校では、今日は何を話そうか、と思いながら周りを見る。


夜、何時頃電話ができるかと聞くが、仕事で遅くなるのでまた今度、休みの日なら話せるかもしれないから、何かあったら連絡してみて、と聡子。
その後聡子から連絡はなく、悶々としながら過ごす真修。日曜日の夕方までボーッと過ごし、気分転換に図書館に行くが、臨時休館。帰り道、真っ暗な公園で子供を見かける。

手を洗った子供にハンカチを差し出す真修。なんとなく置いて帰りづらくなり、話しかける。お母さんと喧嘩して一人になった、帰りたくない、寂しくないと強がる子供。なんで泣いているの、と聞くが、泣いてないと強がる。正反対のことばかり言うなあ、と思いながら泣いている子供を見ていたら、聡子が泣いている姿を思い出す真修。


そこへ母親が戻ってくる。泣いて駆け寄る子供。母親は真修をじろりと見て、そしてポケットのハンカチを見つける。真修のものだと聞き、乱暴に押し付ける母親。帰るよ、と子供に言うと、子供は真修に駆け寄ってきて、「これあげる」とイクラのストラップを差し出す。懐かしく思い、つい聡子に電話する。


何かあったの?と聞く聡子に答えず、マグロのストラップを覚えているかと真修。サッカーの練習をした公園にいて、小さい子供に渡されて、懐かしく思ったと真修。回転寿司の思い出を語る。あの頃は寿司はよくわからなかったから何のストラップかわからなかった、聡子に言われて初めてマグロだと知った。何食べるか決めるときも、ポテトとかうどんばかりに反応していた。でも今は好きなネタも増えた、あの日はサーモンとたまごが美味しかったとか言ってたけど。
聡子の反応が鈍く、話題を変える真修。花火のことを話しかけるが、「もう切らなきゃ」と冷たく答える聡子。いつだったら話せるかと聞くが、聡子はもう連絡できないと答える。


真修のイメージから、聡子の顔が見えなくなる。聡子はどうして俺に優しくしてくれるのか、と聞く。優しくなんかしてないでしょ、今私が言ったこと聞いてた?と聡子。もう二度と連絡できない、と言いかける聡子を遮って、聡子は何でもないと言いながら泣いたり、猛練習はできないと言いながら髪を拭いてくれたり、さよならしたあとマフラーをまいてくれたりする人。だから今も、正反対のこと、嘘をついてるんじゃないかと真修。聡子はいつも俺に優しいと期待してしまう。会えただけでいいとか言っときながら、聡子にはわがままになる、と真修。

電話の向こうで涙を流す聡子に、真修は「会いに行きます」と告げる。

【感想・考察】
この話も、連載版と単行本では内容が変わっている。結構大きな違いなので、わざわざkindleで雑誌のバックナンバーを買ってしまった。

真修と連絡するのに慎重だった聡子が、真修が何かあったようなことを匂わせるとすぐに電話をかけてくるのは、「真修の平穏が最優先」という価値観じゃないだろうか。たとえ自分の立場が悪くなったとしても、真修は守らなくては、と思っている気がする。もちろん本心では真修と話がしたいし、だからこそLINEも登録してしまったのだろうけれど、大人として真修と連絡することを極力避けているはず。それでもやはり、真修が困ったのなら力になるべきだ、と思っているのだろう。
だからこそ、周囲に聞かれたらまずい話になる可能性を考えて、わざわざ車に移動したのではないだろうか。

聡子と話ができる、と思ったあとの真修の思考が、連載版と単行本とで変わっている。以下その違い。

連載版単行本

この変更はよくわからないなあ。連載版は、聡子が何故泣いたのかを気にしているけれど、単行本は一体何を聞こうとしているのかわからない。逆なら、連載だと意味不明だったので修正したとわかるのだが、どういう意図が込められているのだろう。菜緒の存在を強くアピールしたいのだろうか。

はじめての通話で、真修の家庭環境が聡子に伝わる。祖母が来ていると聞いて、聡子は安心したのではないだろうか。話し方がくだけてきて、自然な感じ。もしかすると、もう真修から手を離しても大丈夫、真修は年相応に生きていける、と感じ取ったのかもしれない。
最初にあった時の状態で時間が止まっちゃうと言ったのは、自分自身が真修に感じていたこと。その間真修は成長し、自分は外見上はあまり変わっていない。
このあとどの程度話をしたのかわからないが、真修の表情と翌日なおに話しかけたことからは、普通に会話できていたことが読み取れる。それだけに、また話したいと言ってきた真修に対し、聡子は離れるべきだと強く思い直したのかもしれない。

真修が学校で虹を見て、聡子と何を話そうか考えていると目が良くなる気がする、と思うのは、聡子がいない日常では周囲が見えていなかったことの裏返しだろう。父親との関係、小学生時代のクラスの様子を考えると、真修の世界は聡子がいなければ本当に無味乾燥だったように思える。聡子と出会えて真修自身が変わったことで、和樹のように声をかけてくれる友人ができたのではないだろうか。真修自身はあまり意識していないようだけれど。

ガンガン攻めていく真修に対し、聡子は距離を置く。強い拒絶の言葉を使わないのは、真修に対する思いやり以上に、自分自身の未練だろう。そうでなければそもそもID登録しないだろうし。まあしないと話が進まないんだけど。

連絡したい、話をしたいと思いつつその口実を探したり、連絡が来ないと悶々としたり。これは誰がどう見ても恋だなあ。俺にもそんな時期があったような気がする。
季節感は違うし、こちらは「めぞん一刻」の主題歌だけど、村下孝蔵の「陽だまり」が頭の中で流れて消えない。

この場所から遠く空を見て ああ君に会いたい 今すぐに声を聞きたい
早く会いたい たった一言 心から叫びたいよ きっといつかはめぐりあい 結ばれると信じていたと


公園で泣いている女の子を見て聡子を思い出すのは、第15話と同じく、最初から聡子を頼りになるお姉さんではなく、一人の人物として見ていたからなのだろう。ある意味、真修は最初から聡子に母性ではなく、恋愛感情を持っていたのだろうか。違うと思うがなあ。
母親の失礼な態度は、世間一般ではそう見られる関係性だということ、聡子が真修に声をかけたのもリスクのある行動だった、と真修に暗に教えているのだろう。真修がピンときた感じはしないけれど。

2度目の電話、聡子はちゃんと出るが、最初の言葉はやはり「何かあったの?」と、真修を心配している。逆に、何もなければ話をしない、という意思表示だろう。それにもめげず話し続ける真修がいじらしい。

そしてここからがまた、連載版と単行本とで大きく変わっている。この修正は大きい。
連載版は、泣いている女の子を見て聡子を思い出した、なんで泣いていたのか聞きたくなった、と言う。それを聞いた聡子は涙をこらえながら、真修との日常を思い出していた、楽しかった、でももうこんなことを思い出しちゃいけない、と言う。


帰り道のたった1回だけの会話、えびがおいしかったということを今でも覚えている聡子。
聡子の気持ちも真修のそばから離れていないことがはっきり伝わり、それに真修が勇気づけられて、また恐らくは聡子のためにもなると思って、会いに行きますと言うのがとても格好いい。惚れる。

ところが単行本では、真修が一方的に聡子への思いを語っているだけ。聡子は涙を流しているけれど、それが真修に気取られているかどうかはわからない。


どっちもアリだとは思うけれど、連載版のほうが二人の感情が見えて好きだなあ。
どうでもいいことだとは思うけれど、聡子の服が変わってるのはなにか理由があるのだろうか。

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
第23話のネタバレ感想
第22話のネタバレ感想
第21話のネタバレ感想
第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
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第16話のネタバレ感想
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第5話のネタバレ感想
第4話のネタバレ感想
第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想

第18話が収録されている4巻はこちら。ちなみに連載版を読みたければ、月刊アクションのkindle版バックナンバーを買うしかない。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

双葉社講談社kindle月刊アクション

2018年8月21日火曜日

私の少年 第4巻 第17話 ラジオ(ネタバレ感想)

【ストーリー】
彼氏の愚痴をこぼすりおん。嘘をつかれた、既読無視されてる、といくつも不満を言うりおんに、嘘をつかれたのが嫌なんだったらそれだけ言えば、とアドバイスする奈緒。言葉が深い、南中の母だ、と言われる菜緒。実はラジオの受け売りだったりする。ラジオを聞きながら、私もなにか相談を送ってみようか、と考えて、真修の横顔が浮かんでくる。


ラジオの中で、「大事なのは何を言うかじゃなくて誰が言うか」という言葉を聞いて、私は誰かの役に立ってると思う。


塾の自習室で真修と会った菜緒。真修がスマホばかり見ているのを見て、なにか悩みがあるのか、と声を掛ける。若干恥ずかしいからな、と答える真修。偶然会って久しぶりに連絡取れるようになった友達がいるけれど、以前はどうでもいいこととか簡単に喋れていたのに、今は緊張する、と言う。もしかしてこないだ授業中に笑ってたのも?と水を向けると、驚いて顔を赤く染める真修。相手が女子と聞いて、真修が女子のことで悩むとは意外、と言う菜緒。全然そういうのじゃない、と焦る真修。


うまくアドバイスできなかった、力になれなかったと思う菜緒。ラジオに相談を投稿する。ラジオで帰ってきたアドバイスは「病もうよ」「モヤモヤを楽しめ」


早速真修にそれを告げようとするが、一人悩んでいる真修の表情を見て、楽しめなんて言えるわけない、と思い直す菜緒。噛みながら、「もういっしょ(噛んだ)会って話しちゃえばいい」と言う。驚いた真修の表情を見て、やはり私の言葉じゃ駄目だと思うが、真修はずっと考えてくれてたが嬉しかった、と返す。


帰り道、自分の言葉が届いた、良かったと思いながら心が痛む菜緒。
真修は聡子に、通話はできませんか、とメッセージを送る。

【感想・考察】
聡子でも真修でもない人物の視点で話が進むのは久しぶり。第3話以来かな。あのときも菜緒視点だった。
菜緒は真修に対する聡子以外の、年齢相応の相手として重要な扱いなんだろうけれど、うん、どうでもいい。真修の心の中では、聡子以外の女性はモブだから、君の思いは届かないよ。

この話、雑誌連載版と単行本ではちょっと違うらしい。雑誌連載版では、菜緒は真修が思い悩んでいる相手は女性だと気づいていないとか。相談内容からラジオパーソナリティはピンときたものの、菜緒は最後まで感づくことなく、単に真修に「直接話しちゃえ」とアドバイスを送っておしまい。プールで聡子に何かを感じ取った菜緒の反応からは考えにくい鈍さで、これが単行本で修正されたみたい。単行本ではごく自然になり、また奈緒が真修に恋心をいだいていることもわかる。

真修は菜緒と話をしていて照れているが、ここで初めて自分の感情が恋愛感情だと意識したんじゃないだろうか。今まではただ会いたい、話をしたいと思っていただけだが、それは恋愛感情によるものだと、この時はっきり認識したのだと思う。そしてそれだけに、なおのアドバイスに素直に感謝して笑顔を返している。報われないけど。

うーん。やはり聡子でも真修でもない視点だと、読後感があっさりしてるな。
完全にこの二人の虜になってしまった。

第25話のネタバレ感想
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第17話が収録されている4巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

双葉社講談社kindle

2018年8月20日月曜日

010 / 465 超高速!参勤交代

10点満点で、7点。

「私の少年」に関する記事を読むべく、ダ・ヴィンチのバックナンバーを読みに行った図書館でたまたま手に取った本。
本屋で見かけたことがあって、タイトルは気になっていたのだが、映画になっていたのね。wikipediaを見る限り、「脚本及びそれをもとにした小説、映画」とあるから、最初からメディアミックスを考えて書かれたものだったということだろうか。

期待以上に面白くてびっくり。時代トリビアがそこかしこに散りばめられていて、年代や人物も妙に具体的なものがやたらでてくるから、ひょっとしたら実話をもとにしたフィクションなのかと思ったくらい。内藤政醇は実在の人物なのね。享年31歳とあるから、この参勤交代が終わったらすぐに死んでしまったくらいなのか。

妙に緻密な時代考証があるかと思うと、政醇たちの行動が即時老中に筒抜けだったり(携帯電話でも持たせていたのだろうか・・・)斬り合いがあっても騒ぎにならなかったり(「生類憐れみの令」以来、抜刀は基本的に法度)変なところもたくさんあるが、そういうのをツッコむのは野暮というもの。むしろ、毎日のように窮地に陥り、それを知恵であったり腕力であったり幸運であったり、様々な手法で切り抜けていくのを素直に楽しむべし。

重要な役回りを演じる忍者の雲隠段蔵、名前の由来は加藤段蔵かな。万能すぎるが心に傷を追っているとか、使い勝手がいい登場人物だろうに、退場の仕方がもったいない。いや見せ場なんだけど、もっともっと活躍させたかった。

続編も読まなきゃ。

文庫版kindle版

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私の少年 第4巻 第16話 絆創膏(ネタバレ感想)

【ストーリー】
午前3時過ぎ、寝付けない聡子。お湯を飲もうとすると、母親が起きてくる。起こしてしまったかと声をかけると、いつもこれくらいに起きていると返ってくる。孫もいないのにもう老人、と言われてしまい、ごめんね、と返す。
八島からはなじるLINEが届いている。昨夜のことを思い出すと、真修の笑顔が浮かんでくる。たった2年であんなに成長するんだ、私は身長も声も変わっていないから、真修は私を見つけられたけれど、私は真修を見つけられなかっただろう、と思う。真修の2年を思う聡子。


真修はスマホを見てぼーっとして、なにか反応がある度に動揺する。しかし届くのは菜緒のLINEだったり、和樹からの連絡だったり。連絡しなくていいなんて言わなければよかった、と後悔する。

仕事から帰宅した聡子はぼーっとしている。まゆが話しかけても反応がない。顔の傷、跡のこんないといいね、と声をかけると、微妙に表情が変わる。なにか感づいたまゆ。
夜、聡子の部屋にプリンを持っていくが、聡子は寝落ちしている。スマホの充電を忘れているので繋げてやると、テーブルに貼り付けてある絆創膏を発見する。何この絆創膏、という言葉で聡子が飛び起きる。聡子の態度から、男の連絡先だと気づくまゆ。とりあえずLINEのIDから、「まくら」と呼ぶことにする。八島とこじれたのは絶対関係あるでしょ、と言うが聡子は否定する。まゆは顔写真あるかも、ID検索をしようとするが止められる。聡子の異様な態度に、日曜帰ってきてから変だというまゆ。怪我だらけで帰ってくるし、暴力かと思ったけどころんだだけだと言うし、その割に嬉しそうだったし、もう絶対まくら関連でしょ。既婚者じゃないことだけ確認すると、ハッピーになるものから距離置こうとする精神はどうかと思う、と言うまゆ。


まゆが出ていったあと、絆創膏を捨てようとする聡子。ふと鏡で顔の傷を見て真修の手を思い出し、ついID検索してしまう。出てきたのは早見真修という名前と、エー玉の写真。花火を思い出す。声も髪も目線もカバンも、2年前と何もかも違うのに。


真修が塾で授業を聞いていると、電源を切り忘れたスマホが反応する。見ると、聡子がLINEの友達を追加したというメッセージと、「こんばんは。」の一言。真修はこの上なく幸せな表情を見せる。


【感想・考察】
表情だけで言葉に出来ない感情をすべて表現している、素晴らしい回。特に聡子がエー玉の写真を見つけたときと、真修が聡子からのメッセージを読んだときの表情は絶品。表情だけでこれだけの感情を伝えてくる漫画は、他に知らない。でもエー玉の写真を見たときは、多分俺のほうが聡子より先に泣いた。

冒頭、「孫もいないのに」と言う聡子の母親は、もう八島が聡子の人生に登場することはないと悟ったのだろう。
その八島は絶望的に空気の読めないLINEメッセージを送っている。これはもう、逃げ出して正解。

真修のことを「あんなに成長するんだなあ」と思い返した時、真修に男を感じたのではないだろうか。もう子供ではなくなりつつある、とはっきり認識したと思う。

聡子からの連絡を待つ真修は、完全に虜になってしまっている。2年間思い続けて、諦めきれなかった聡子に再会できたのだから、今度は偶然ではなく連絡を取りたいと思うのはごく自然。ぼーっとしているところなど、恋してる状態に近いとは思うけれど、まだ自分では意識してないのではないだろうか。また会いたい、話したい、という感情が強すぎて、それ以上のことは考えていないのではないかと思う。

父親からばあちゃんあてに届いた荷物の宛名は「森倉」だから、母方の祖母だろう。方言からすると九州、博多あたりの人なのか。小学生時代、荒れ果てた家庭に応援がなかったのも、遠距離故か。それでも、自分の親ではなく、亡き嫁の親に子供の世話を頼むということは、真修は早見の血を引いていないということなのかもしれない。もちろん、早見の両親が既に他界しているとか、他の理由だっていくらでも思いつくけれど。真修母の名前は雪、そして母方の祖母は他界していることが、祖母の話からわかる。

真修の中学校は、国分寺市立南中学校。ということは、これまでの舞台も国分寺だったのだろうか。それとも引っ越したのか。聡子が帰宅するのにバスを使っていたということは郊外だろうから、ずっと国分寺かな。

聡子とまゆの夕食はレトルトパスタ。食後聡子が寝落ちしているのが20:32だし、二人共服が変わっているということは恐らく入浴後。そう考えると帰宅は決して遅くない時間だが、レトルトで済ませているということは、普段からちゃんと食事を作るという習慣がないのだろうか。そういえば、14話でもカレーを買って帰れと頼まれていた。

まゆのFBIっぷりは凄まじい。敵に回すと恐ろしい。聡子の表情の変化から、複雑な感情を見事に読み取っている。事情は知らないまでも、聡子の感情を後押ししているのは読者的にGJ。

真修がLINEの画像をエー玉にしたのは、どういう意味を込めていたのだろうか。
聡子との思い出で、形があるものはエー玉とサッカーボール。サッカーボールは別れの象徴になってしまったから、どちらか選ぶならそりゃエー玉だろうが、聡子と関係ないものを選んでいてもおかしくない。真修にとって、聡子との思い出以上に大切なものは存在しないのか、聡子が去ってから無味乾燥な毎日を送っていたのか、あるいは何かの表紙に聡子が自分の画像を見かけた時、すぐに気づいてくれるようにとの思いを込めたのか。冒頭にも書いたけれど、色んな思いが伝わってきて、これを見た瞬間泣けた。
2年前と何もかも違うのに、という言葉のあとに続くのは、変わらない思い、だろうか。真修が自分との思い出をどれだけ大切にしてくれていたのか伝わってきて、言葉に出来ないのだと思う。

最後の真修の表情も絶品。2年分の思いが報われた、と感じさせる。
菜緒が微妙な表情を見せているが、個人的には椎川と同じくモブ扱いなのでどうでもいい。椎川も菜緒も、年齢相応の相手で聡子と真修に想いを寄せてくる相手、という立ち位置なのだろうが、もうここまで来ると二人の間には誰か別の人物が入り込む隙間なんてない。

第25話のネタバレ感想
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第22話のネタバレ感想
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第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
第17話のネタバレ感想
第16話のネタバレ感想
第15話のネタバレ感想
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第11話のネタバレ感想
第10話のネタバレ感想
第9話のネタバレ感想
第8話のネタバレ感想
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第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想

第16話が収録されている4巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

双葉社講談社kindle

2018年8月19日日曜日

私の少年 第4巻 第15話 再会(ネタバレ感想)

【ストーリー】
あのひとが泣いた日を覚えている
あのひとの泣く姿を覚えている
あのひとは まるでちいさい女の子のようだった


偶然聡子を見かけ、声をかけた真修。人違いか、と思ったら聡子は走り出す。逃げた、と思った矢先、聡子は派手に転んでしまう。
コンビニで絆創膏を買って渡す真修。擦りむいた肘に貼り、それじゃあ、と席を立つ聡子を、真修は無意識に引き止めた。

真修は学校生活を思い出していた。学級委員長として、修学旅行の班割をする真修。男子はあっさり決まっているが、女子は難航しており菜緒が苦労している。揉めてたね、と声を掛けると菜緒は女子のほうが熱心だからだよ、と答える。班割なんて修学旅行のあいだだけなのに、と言う真修に菜緒は、一生に一度の修学旅行だから最高の思い出にしたいんだよ、と返す。たとえそれで泣く人が出ても。


帰宅して塾のテキストを開く真修。志望校調査の紙に、志望理由を書こうとして悩む。父親の出身校だから、という以外に理由がない。俺って何もないな、と思う。かつて弟が帰ってこなかったことを父親に言わなかった時、サッカーを続けていいのは弟の面倒をみるから、レギュラーになれなかったらクラブは辞めるはずだった、それらの約束を全部破ったと責められて、クラブを辞める羽目になったことを思い出す。ふと聡子の笑顔を思い出し、したいとかほしいとか俺にもあったよ、と思う。これで届かないならもうやめよう、と思いつつ、何度目か思い出せないくらい聡子にショートメッセージを送ろうと試みて届かない。ストーカーみたいだ、と自己嫌悪する。


修学旅行の場面では、彼女と出かけるやつを見かけたり、あるいは自分と写真を撮りたいと言ってくる女の子がいたり。真修には相手が誰だかわからない。
お土産は別行動で、と告げると、みんなバラバラに行動を始める。班で歩いてる人もいない。それを見て、最高の思い出、とぼんやり考えたら、聡子と買い物をしている自分が思い浮かんだ。それで泣いちゃう人が出ても、という菜緒の言葉を思い出して、泣くのはやだな、と思う。そう思った矢先、泣いている人を見かけたと思ったら、それが聡子だった。

現実に戻った真修は、聡子にずっと謝らないとと思ってた、という。謝らないといけないのは、と聡子がいいかけるが、「俺が馬鹿だから」と真修。父親と回転寿司に行ったときに聡子と行ったことを話したことを思い出す。その直後、父親は早く家に帰るようになり、わがまま聞いてやれるのは今だけだぞ、と言われる。頭を撫でる父親に嫌悪感を覚える真修。父親を怒らせたから、金曜日の練習が禁止されたと思っている。


聡子との約束を破って、と言いかけるところを「なんで謝るの」と遮る聡子。手当もしてくれたじゃない、と絆創膏を見せる。

改めて話し始める二人。真修は声変わりしていて、聡子には誰だかわからなかった。聡子さんはかわらない、と真修。なぜここにいたのかと聞かれ、修学旅行と答える。聡子の携帯がなるが、大丈夫と言って出ない。
聡子の顎が擦りむけていることに気づいた真修は手を伸ばすが、聡子はビクリと反応し、とっさに顔を背ける。何も言えなくなった真修は席を立つ。あれは拒絶だ、俺が馬鹿だったから、金曜日の練習の約束を守らなかったから、したいとかほしいとかを言い過ぎたから、周りから誰もいなくなると言った父の言うとおりになった、と悔やむ真修。


トボトボと歩いているところに、聡子が追いかけてきた。何事か、と驚く真修にマフラーをかける。さっき顔に真修の手があたった時、あまりに冷たくてびっくりした、という聡子。いらなくなればどこかに捨ててもいいし。元気でね、と聡子。
あれは拒絶じゃなかった、と安心したら涙が伝ってくる。たまらなくなり、再び聡子を呼び止める。絆創膏が一枚ほしいとせがみ、自分の連絡先を書いて聡子の手に貼る。連絡先を知りたいし、話をしたいし、またご飯も食べたいし、さっき泣いてた理由を知りたいし、まだあるけど全部叶わなくていい。もっかい会えたから、と真修。今度こそ晴れやかな笑顔で聡子と別れる。


帰りの新幹線で、和樹に自分用のお土産を買えばよかったのに、と言われるが、膝のマフラーを見てもう十分だと答える。


【感想・考察】
辛い話が続いたあと、希望が持てるようになった回。今回初めて、真修の視点で話が展開する。
あとがきによると、これまであえて真修の掘り下げをやらないことで一種のファンタジー感を出していたが、ようやく真修を人間にしてやれた、とか。確かに、この話以降一気に真修が年齢相応に見えてくる。
(今までは、異常に物分りが良すぎてやや気持ち悪さを感じるレベルだった)

冒頭、聡子が泣いている姿を思い出しているところから始まる。第1話で体温計の話をしたときのことだろう。真修の目には「ちいさい女の子のようだった」と映っていることから、最初から聡子は真修にとって大人ではなく、強いところも弱いところもある一人の女性として認識されていたことがわかる。自分が守ることができる、と感じたからこそ、抱き寄せて胸の音を聞かせるということが自然にできたのだろうか。

声をかけられた聡子がとっさに逃げ出したのはどういう心境だろうか。もう真修と接点を持ってはいけない、と自分に言い聞かせていたからというのはあるだろうが、それ以上に真修に弱い自分を見せたくなかったのではないだろうか。自分が弱い存在であることが真修に見られてしまうと、真修が離れていくことができない、と考えている気がする。

真修に絆創膏を買ってもらい、それをイートインスペースで待つというシチュエーションがどういう流れで出来上がるのかよくわからないが、転んだところで改めて声をかけられたので逃げるわけにもいかず、気持ちを落ち着かせるために少し離れてもらった、というところだろうか。

真修の中学生活が少しずつ見えてくる。学級委員長になっており、班割も和樹に誘われていることから、小学生の頃ほど孤立していないことがわかる。誰かわからないというのがちょっと切ないが、真修のことを気にかけている女の子も菜緒以外にいるようだ。しかし、真修自身は周囲をかなりドライに見ている。意識しているわけではないと思うが、用がなくともなにか話す、典型的な友人はいないように見える。

真修がサッカークラブを辞める羽目になったときの会話が明らかにされる。これまでの真修あるいは早見の説明とはやや異なる内容。「早見が何もしなくていいなら続けていい」という説明だったが、実際には弟の世話をするという条件が付与されていたことがわかる。レギュラーになれなかったら辞めるというのも、早見は聡子に「辛かったら辞めていい」という趣旨だったと説明しているが、早見はそもそも辞めさせたがっていたことがわかる。しかし、「自分のしたいことばかり通して肝心な約束を守らない」と真修を責める早見は、それ以前に父親としてやるべきことをやっていない、説得力のない人物に見える。

したいとかほしいとか、俺にもあったよ、と真修が思い出すのは、社会のプリントを見てくれたときの聡子の笑顔。何かをしているわけではない、単に側にいるだけの姿を思い出しているのは、聡子が「いてくれるだけで幸せ」な存在だったということだろうか。
スマホで何度もショートメッセージを送ろうとして失敗しているところを見ると、聡子は電話番号を変えているのだろう。そして、そのことに真修が気づかないわけがないのだが、それでも送り続けているということは、聡子の電話番号を今でも大切に持っているということだろう。

最高の思い出、というキーワードで聡子の姿が浮かんでくるのは、どんな思い出よりも聡子と過ごした時間が大切だったことがわかる。むしろ、聡子がいない時間は、真修にとって無味乾燥な時間だったのだろう。

真修と父親との会話、「金曜日の練習の約束を守らなかったから」というモノローグから見ると、花火の翌週(かな?)練習に行かなかったのは、聡子と話がついていることを知らなかったように思える。花火の後で父親を怒らせたから練習に行かせてもらえず、真修が来なくなったから聡子がいなくなった、と受け止めているのだろうか。ここまで単純ではないが、練習に行かなかったことが、聡子にダメージを与える行動だったと思っているのだろう。

謝ろうとする真修に「手当もしてくれたじゃない」と遮る聡子は、真修がいつまでも辛いことを思い出さずに済むように気を遣っているのだろうか。そう言われた真修の微妙な表情からは、心の重しが取れていないことがわかる。

最初の別れ、聡子の顔を見ずに「それじゃあ」と告げる真修、席を立たずに「じゃあね」と手を挙げる聡子は、二人共話したいことをぐっとこらえている様子がわかる。特に真修は、話したいことがいくらでもあるのに、言い出せなくなった辛さがよく分かる。
店を出る真修を見送る聡子の表情は、何も話さないという選択をしたことを後悔しているように見えて、また話を続ける口実を探しているようにも見える。だから、わざわざ店を出て追いかけたのだろう。
マフラーをかけて、真修の手があまりに冷たくてびっくりした、という聡子は、自分の態度が真修を傷つけたことに気づいていたのだろう。話は出来なくとも、真修に新たしい傷をつけずに済んだ、そう思ったから二度目の別れでは笑顔で「元気でね」と言えたのではないだろうか。真修も今度は聡子の目を見て頭を下げている。

もう一度思い直し聡子を呼び止めて、いろいろあるけどもう一度会えたからいい、と真っ直ぐな目で聡子に告げる真修は、その目が2年間いかに聡子のことを思い続けていたのかを雄弁に語っている。聡子の表情から笑顔が消えているのは、声変わりした真修に男を感じ、そしてその態度に恋愛感情を感じたのではないだろうか。小さくなっていなければならない自分の存在が、真修にとって「会えただけでいい」とまで言わせる存在になっていたことについて、受け止めきれていないように思える。

第25話のネタバレ感想
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第15話が収録されている4巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

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