2018年8月8日水曜日

私の少年 第2巻 第6話 すきなもの(ネタバレ感想)

このブログを書くためだけに、単行本で持っているのにkindle版も買ってしまった。
ハマってるなあ。本当に、こんなにハマった作品って、映画も小説もドラマも全部入れても他に記憶がない。

【ストーリー】
聡子の好きなものを次々と聞く真修。聡子の好きな色はターコイズ。好きな動物、好きな色、好きな植物、好きな教科と聞いていく。社会という答えに、真修は宿題のプリントをやっていないことを思い出す。うつむいて「社会得意なんですね」とつぶやく真修を見て、聡子はつい「勉強見てあげようか」と言ってしまう。真修の笑顔を見て、この顔が見れたらもうどうでもいいや、と思う。


聡子の部屋で、ルンバや扇風機など、自宅で見慣れない家電製品にはしゃぐ真修。
父は仕事、弟は友達の家に行っていると言うので、弟が帰ってくるまでには終わらせようと聡子は声を掛ける。とはいえ社会は基本的に教科書に答えが載っているので、見守ることしか出来ない。見ていると真修は、スラスラと答えを書いていく。社会は得意なのか、と聞くと別に得意ではないと答える真修。その横顔を見て、つい頬をつついてしまう聡子。


おやつを出してあげようとするが、家には酒のツマミしかない。引きつる聡子に、真修はツナが美味しいと言う。魚が好きなんですね、という真修に、私ばかりじゃなく真修の好きなものは何か、と聞く。真修は、好きなものがすぐに答えられない。
好きなものがすぐに答えられるのは、好きなものが増えなくなったから、むしろ好きだったのに辛い思い出が結びついてしまったものが増えたからだと思う聡子。真修にはなるべく好きなものでぎゅうぎゅうになってほしいと思う。

真修が帰ったあと、ぼんやりしながら「真修といる時間は結構好きかもしれない」と考える聡子。


と、夜8時、真修が青い顔でやってきた。弟が帰ってこない。

【感想・考察】
冒頭、母が似合うと言ってくれた色を「私の嫌いな色」というモノローグから始まる。好きなものが嫌いになることの象徴だろうか。

真修が聡子を質問攻めにするのは、聡子の特別になりたいという気持ちの現われだろうか。前回椎川という、聡子の過去を知る人物に会ったことで、椎川に対するライバル意識も目覚めたのではないかと思う。
好きな教科の話から宿題を見てもらうという流れになるが、おそらく最初からそれを狙っていたわけではないだろう。宿題を思い出した時は、すぐに聡子に教えてほしいと思ったようだが。それでも実際、はじめてみると聡子の指導は必要なかったようなので、これは聡子にもっと会うための口実だろう。聡子は「懐かれるってよいものだ」と思っているが、真修の気持ちは回転寿司以降は「懐く」の次のステップに進んでいる。まあでも、恋愛感情とかではなくて、憧れに近いのかなあ。仲のいい友達の中で、最上級に位置する「好き」と、小さな子が無邪気に、母親や面倒を見てくれる人のことを「好き」というのに近い「好き」と、憧れとが入り混じった感情。

この段階になってくると、聡子はもう真修を家に上げるのに、さして抵抗を感じていないように見える。自然な関係として受け入れていると言うべきか。特別な関係、とは思っていないだろう。
もちろん、世間一般的に名前のつけられる関係ではないことは理解しているだろうが、でも特別だとは思っていない。
真修がルンバや扇風機を見て驚く姿を見て笑っている、これは気持ちのいい距離感であることを表していそう。

友人を家に上げたときの回想が登場するので、聡子は一緒に遊ぶ仲間がいないわけではなさそうだ。まあ現時点でいるのかは不明だけれど。

父親と弟はどうしているのかを聞いている聡子に特別な感情はなさそうだから、特に秘密にするつもりもなさそう。
ちゃんと話が通っていれば、家に上げても問題ないとは思うが、これは後々効いてくる。

鉛筆の持ち方がいびつな真修は、このあたりのしつけをちゃんと受けることが出来なかったということを暗示しているのだろうか。

おやつに出そうとしたものがおつまみしかないという描写は、普段から家で普通に酒を飲んでいるということなのだろうなあ。第1話からして、仕事帰りに公園でビールを飲んでしまうくらいなので、酒が日常にあるんだろう。

好きなものを聞かれてとっさに答えることができない真修は、抑圧されてきた経験を物語る。聡子に促されていろいろ思いついたあと、「社会も好き」と言っているのは、「聡子が好き」と言っているのと同じ意味なんじゃないだろうか。最初は「嫌いじゃないけど・・・」と消極的な表現なのに。

真修といる時間が結構好き、と思う聡子は、日常に真修を感じているのが好きなのだろう。居心地のいい相手、と捉えているのか。いい友人関係と言っていい気がする。

最後、弟が帰ってこないと真修が頼ってくるのは、真修にとって聡子は「頼れる人」になった証だろうか。

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第6話が収録されている2巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。
双葉社講談社kindle



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