2018年12月26日水曜日

私の少年 第25話 砂時計(ネタバレ感想)

【ストーリー】
例によって後日。

【感想・考察】
物語が大きく動くけれど、ちょっとご都合主義がすぎるかなあ・・・というのが第一印象。
まゆが真修祖母と仲良くなっていることについて詳しく描写されているけれど、カラオケでのあの出会い方から、翌日家に遊びに行くまでの関係になるのは流石に不自然すぎる。そもそも真修がまゆとさほど親しいわけでもないのだから。
考えてみたら、4巻までは偶然に頼った展開は殆どない。第1話の出会いは偶然ではあるけれど、そもそもあれがなかったら物語が始まらないのだから別。それ以外は、14話で劇的な再会を果たした以外は、偶然や幸運で片付けられる展開は思いつかない。むしろ詰将棋のように、必然が積み重なって二人の関係が出来上がってきた印象。それが19話以降は、聡子が階段を駆け下りるハメになるのも、新宿でばったり会うのも、まゆが真修祖母と会うのも、仲良くなるのも、全部都合の良すぎる偶然。なんというか、物語が薄くなってきている気がする。

聡子が「やらなきゃいけないこと」と言っていたことが明らかにされた。真修をネグレクトの環境から救い出すことだと言っているが、これはどこまで本心なのだろうか。


もちろんそういう気持ちは強く持っているのだろうが、それが第一だとすると、19話で東京に帰ってくると宣言したときの笑顔が説明つかない。多分これは後付けの理由で、自分自身をその理由で納得させようとしているのではないかなあ。
腕のあざを気にしているけれど、多分これは視野が狭くなってしまっていて、気になったことが悪い方にしか見えなくなっているのだと思う。もちろん本当に虐待を疑うのであれば、子どもから感じるサインは悲観的に受け止めるのが大原則なのだけれど、聡子はとにかく真修のマイナス面ばかりを見ている気がする。23話で銭湯に行くときは、真修の真っ直ぐな好意をちゃんと受け止めて回想しているから、やはり意識的にマイナスを注視しているのだろうなあ。

まゆが真修の細かな面にまで気づいていて、聡子より真修に詳しいんじゃないかと言ったときに本気で張り合っているのは、誰よりも真修のことを考えてきたと無意識にでも自負しているからなんだろう。その根本は母性なのか恋愛感情なのかはわからないけれど、少なくとも真修のことをずっと考えてきたのに、他の人物に真修を語られたくないと感じているのだろうな。


真修の家庭環境を見て、「今見えているものだけで安心しちゃダメだ」と思い直しているのは、視野狭窄のなせる技ではないかなあ。2年前に真修を救うのに失敗したと思っているのだろうが、それは自分の見立てが悪かったわけではなくて、真修父との対応、関係づくりに失敗したから。多分それは聡子自身もわかっている。それなのにネグレクトに意識が向くのは、「真修を救う」という大義名分がなくなってしまえば、真修と関わる理由がなくなってしまうと感じているのだろう。なくなってしまうというよりも、むしろ2年前の出来事を考えれば、真修の元から去らなければいけないはずだから。


そして真修祖母に、現状を問う覚悟を決めた聡子。自分と真修の関係をどう説明し、何をどう聞こうとしているのかが気になるけれど、その後どうするのだろう。

真修祖母が、荒れた家庭を見ていた場合、聡子の感情を理解して味方になってくれる可能性はある。だがその際、「真修のことを心配してくれてありがとう、これからも親しくしてあげてください」と言われたら、聡子はどうするのだろうか。祖母が安心できる人物だと感じた場合、聡子の理屈では、これ以上真修に関わる理由が失われてしまう。真修から離れるべき理由は残ったまま。多分物語の展開としては、これで改めて自分の感情と正面から向き合うことになり、自分自身が真修といっしょにいたいのだ、と気づく(というか、認める)事になりそう。それから真修を恋愛対象として意識した上で、では年齢歳による社会的ハードルをどう乗り越えるのか、という展開になるんだろう。もちろん祖母だって、真修が聡子のことを恋愛対象と捉えているなんて思っていないだろうから、祖母との関係を作り直す必要もある。一番素直な読み。

真修祖母の対応は変わらないが、聡子は祖母のことを安心できる人物と思えなかったか、あるいは信用しきれなかった場合。これは難しい。色んな人との関係が、悪い方に向かっていく。祖母とは微妙に距離を置くだろうから祖母から不信感を寄せられることになり、真修と関わることも難しくなる。真修は相変わらず(まゆの助言もあって)グイグイ押してくるだろうし、今と同じように中途半端な接し方でもだもだしていくのだろう。現在までの展開だと一番自然な進み方だろうけれど、話としては3巻から立ち込めた暗雲が一向に晴れない、すっきりしない展開。

真修祖母が聡子のことを警戒すべき人物だと受け止めた場合。これはキツイ。どう転んでも、明るい展開にはならない。
聡子が真修祖母を、安心できる人物だと感じたならば、聡子はもう離れていくしかない。今後描かれるのは、真修との別れにしかならない。
聡子も真修祖母に対して警戒感を緩めることができなかったならば、もうどうなっていくのか想像もできない。祖母に警戒されたらまゆだって真修に近づきにくくなるだろうし、聡子にできることが思いつかない。聡子が何をしても空回りだろうから、何をしても誰にとっても不幸な展開になるとしか思えない。

ということで、一読者としては、素直に聡子が恋愛感情に向き合う展開を期待。
この作品、年の差恋愛物だと受け止めて読んでいるわけではないのだけれど、でも剥き身の感情を描くと自然にそうなるべきだと思う。そうなれば、次は真修14歳、聡子33歳という年齢から、性欲をどうするかという大問題が出てくるのだけれど、多分それは描かれないかなあ。

さて、本編では久しぶりに菜緒が登場。2年前の出来事をしっかり覚えていたり、真修に恋する存在だということをアピールされているけれど、いやもう個人的にはどうでもいいです。
ただでさえ聡子と真修の間には高いハードルがたくさんあるので、これ以上邪魔しないでください・・・
もちろんそういう人物が存在するほうが自然なんだけれど、でも多分真修が聡子以外の女性に目移りすることはないから、だとするとどうやっても単に真修と聡子の関係を邪魔する存在としてしか描かれなくなってしまう。それはそれで不幸だし。

25話が収録されているヤングマガジンはこちら。

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