10点満点で、7点。
芦原会館の創始者、芦原英幸の伝記といっていいのかな。著者は芦原の弟子なので、中立を意識しつつもかなり芦原視点の内容ではあるが、単純に面白い。
生い立ちから大山空手との出会い、稽古、ケンカによる処分、四国行き、破門、その後・・・と、どこから見ても波乱万丈。そこかしこで喧嘩を売って回ったり、決して褒められた人物ではないが、魅力的に思えるのは著者の筆力か、それとも芦原の人物のなせる技か。大山との確執も、その最初期における道場内での孤立から触れられていて、興味深い。
「ケンカ十段」の異名は「空手バカ一代」で梶原一騎がつけたもので、もともとは安田英治のことだった・・・とwikipediaで読んだ知識でそう思っていたのだが、本書によるともともと芦原のことらしい。それが梶原が芦原を嫌いだしてから、あれは別人のことだと言い出したのだとか。どこまで本当なのかわからないけれど、その真偽はどうでもいいと感じさせるくらい、本当に強い人物だった、というのは読み取れる。
本書もそうだし、他の極真関係の本を読んでいて思うけれど、大山倍達が人格者だと描かれている作品(フィクション、ノンフィクション問わず)は無理があると感じる。強さに疑問を感じたことはないけれど、人物としては決して尊敬に値するものではない気がする。弟子のことは捨て駒のように扱うし、陰湿なこともたくさんしている。生前も死後も、多くの弟子が極真を離れて自分の流派を立ち上げてしまった一因が本書からも読み取れる。もちろんそのぶん、多くの弟子が一流一派を立ち上げるほど、強くなっていったということなのだけれど。極真本部の会議で芦原の破門が決まったときも、今までは増長した芦原を大山が切り捨てた、というイメージで捉えていたのだが、本書を読むと印象がまるで変わってくる。両者とも鬼籍に入ってしまったから、本当のところはどうだったのかもうわからないけれど(当時を知る関係者だって、立場ごとの偏見はあるだろうし)、芦原がただの喧嘩屋でなかったことだけはよく分かる。
反面、正道会館のことが殆ど書かれていないのは残念。芦原側から見ると許しがたい存在であっておかしくないのだが、大人の事情で触れられないのかな。
見る機会はあったはずの人物なのに、一度も目にすることがなかったのがただただ残念。
にほんブログ村書評・レビューランキング
0 件のコメント:
コメントを投稿