2018年9月24日月曜日

018 / 473 博士の愛した数式

10点満点で、7点。

なんか、断片的に知っていた書評とか紹介とかで、ずいぶん誤解していた。
マッドサイエンティストの本だとか、フォン・ノイマンがモデルだとか、どこでそういう誤解をしていたのかすら思い出せないけど、そう思い込んでいたらぜんぜん違う。「博士の異常な愛情」と混同していたか。

交通事故により、17年前より記憶が停まってしまった博士と、博士の世話をする家政婦、家政婦の息子の3者のドラマ。博士は新たな記憶は80分しか保たないため、毎日家政婦が何者であるかを聞くところから始めなくてはならない。元数学教授であった博士は数学について考えることに異常な関心を示し、また語りだすと止まらない。しかしそれは他者を省みないという意味ではなく、聞き手がいれば聞き手に理解できるよう、平易な言葉で説明することを厭わない。18歳でシングルマザーとなり、数学からは縁遠い生活を送っていた家政婦は、博士との会話で少しずつ数学について考えるようになる。

博士は家政婦と二人のときはあらゆることに無頓着でありながら、子どもには異常なまでの愛情を示す。家政婦に子どもがいると知ったら、子どもは親と過ごさねばならないと留守番させることを禁じ、一緒に食事を摂り宿題を見てやる。食事も、家政婦と二人のときはボロボロとこぼすのに、頭の形からルートと呼ぶことにした子供の前では完璧なマナーを示し、また子どもが最もいいものを食べるよう厳命する。
子どもを一個の人間として、そして宝として扱う博士の態度は実に立派で、これだけの振る舞いを見せる人物はリアルでは聞いたことがない。博士は事故に遭う前からこうだったのだろうか。

ルートも博士のことを深く尊敬し、博士が傷つくことがないよう、子供らしからぬ配慮を見せる。80分しか記憶が保たない博士は、ルートと会う度に初対面のはずなのに、ルートと博士は深い信頼関係で結ばれている。

博士は数学、特に素数について深く語り、家政婦はそれを理解しようと努めているが、作品の中であまり重要な要素である気はしない。門外漢には理解しがたい世界を理解しようとする、家政婦の誠実さを表している以上の意味があるのだろうか。

博士が愛した数式として、オイラーの等式、
eπi+1=0
が、とても重要そうにでてくるけれど、最後まで特別な意味を持ってなにかが起こることはない。博士は大切にしているらしいが、博士にとってどんな意味を持ち、周囲にとってどんな意味を持っているのか、作中で明かされることはない。

電気屋の端くれとしては、どうせならオイラーの公式
e=cosθ+isinθ
から等式を導出するところまでやってほしかったけど、まあ作品の本質とは全く関係ないから仕方ないか。ファインマンさんに、人類の至宝とまで言わしめた式なんだけど。

数学の話は少なからず出てくるけれど、上述の通り作品の本質とは直接関係ない感じ。興味がない向きは、数学について話している部分は飛ばしても、全く問題ない。
本質的には、博士と家政婦、そしてルートの交流を描いた話。

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2018年9月22日土曜日

私の少年 第5巻 第23話 蓋(ネタバレ感想)

【ストーリー】
「聡子さんに すきって言っちゃ だめなんですか」
こぼれ落ちた真修の問いに、聡子は「だめじゃ ない」と答える。答えながら手が震え、さっき拾ったペットボトルの蓋を締めかける。土がついていることを真修が指摘し、蓋を洗ってくる。
戻ってきて蓋を渡す真修の腕に、痣を見つける聡子。どうしたのかと聞くと、階段の手すりにぶつけたと答える真修。ほんとに?とやや疑問を持って聡子が聞き直すが、真修は一体何を気にしているのかピンとこない。


聡子は少し考えて、改めてだめじゃないよと告げる。しかし同時に、大人として真修の気持ちに応えることはできない、とも告げる。
遼一が帰ってこない、と真修が助けを求めてきたとき、家に上がったときのことを話す。あの時真修の家庭環境に問題を感じた、しかし適切な対応をせず、他人だからと及び腰で、真修を見放してしまった。今度こそ真修を守らせてほしい、と言う。

俺は聡子さんに守られたいって思わない、と応える真修。俺が弱いと思っているからなのか、と言う真修に、聡子はそうじゃなくて子どもは、と答えかけるが、電話に遮られる。もう帰る、と言って飲み物のお金を払おうとする真修の財布から、あの日のビー玉がこぼれ落ちる。悔しさと恥ずかしさが混ざったような表情を見せて、逃げるように去る真修。


帰宅した真修は呆然としながら風呂に入り、失恋した現実を噛みしめる。

引っ越しの荷物を受け取った聡子は、開梱しながら真修の言葉を思い返す。受け流すこともできたはずなのに、だめじゃないと言ってしまった自分は、一体何を言おうとしていたのか。

真修の痣を思い出し、真修の感情は「甘えられる大人」である自分に対する感情がごちゃごちゃになっているのだろう、と思う。真修の気持ちを拒むことと、誠実な大人であろうとすることがイコールであることに苦悩するが、真修のためにはそうするしかない。

まだガスが開通していないので風呂に入ることができず、銭湯に向かうことにする。
歩きながら真修のことを思う。仙台で転んだときに手を差し伸べてくれた真修。東京で再会し、おかえりなさいと言ってくれた真修。むかえにいきますと言った真修。真っ直ぐな目で、すきって言っちゃだめなんですか、と問いかけてきた真修。涙が溢れ、どうして一緒にいられないんだろう、と思う。


同じ頃、疲れてうたた寝している真修に、まゆからLINEでメッセージが届く。

【感想・考察】
脳内BGMは西村由紀江さんの「伝えたいのに」
アルバム「扉をあけよう」に収録。いいアルバムなので、興味がある向きはぜひご視聴を。


想像以上に聡子が真剣に対応していて少し驚いた。予め用意しておいた答えではなさそうだけれど、真剣に考えながら対応しているのがよく分かる。
とっさに「だめじゃ ない」と返しているのは、あとから何を言おうとしていたのか自分でも考えているところを見ると、階段を全力疾走したときと同じく、本心から出た言葉なんだろう。答えながら手が震えている。自分が引こうとしたラインを踏み越えてしまいそう、そのことに気づいていながら、理性で感情を押さえきれていない様子が読み取れる。もし前回ペットボトルの蓋を落としていなければ、真修が蓋に注意をしなければ、そのまま受け入れてしまっていたのかもしれない。タイトルの「蓋」は、聡子の心の蓋もさることながら、感情のブレーキを取り戻すのに重要だった、このペットボトルの蓋を指しているのかもしれない。

しかし、真修が仙台行きを言い出したときと同じく、ここで一呼吸入ったことで冷静さを取り戻している。
戻ってきた真修の腕にアザを見つけて、DVを疑ったのだろう。これが決定打になって、言うべきことを考え直したように見える。自分の立ち位置は、「真修を守る大人」であろうとしていることを。それが母親代わりの存在なのか、別の存在なのか、具体的な在り方は、聡子自身わかっていないのかもしれない。「やらなきゃいけないこと」とは恐らくそれなのだろうが、現時点ではまだはっきりとはわからないな。

あなたの気持ちに応えることはできない、と言っているが、「大人として」という前提がついている。本心は別にある、と言外に言っているのか。真修がそれに気づいている感じはしないが。
真修の家に上がったときのことを思い出し、何もできなかった自分のことを「あなたを見放した」と表現している。あれを見たからこそ、一歩踏み出してプールに連れ出したりもしたのだろうが、踏み込むことはしなかった、と後悔しているのだろうか。然るべきところに連絡をして、と言うのは、真修にとって助けを求める相手が自分以外にも存在するべきだった、ということだろう。自分にはそれができたはずなのにしなかった、それを悔やんでいるのか。
今度こそあなたを守らせて欲しい、と言う言葉に真修は反発しているが、聡子にしてみれば「いなくなることはない」という意思表示ではないだろうか。そして現在も、聡子にとって真修は守るべき対象なのだ、恋愛対象ではないのだ、ということをアピールしている。

真修にしてみれば、聡子が泣いた姿を「小さな女の子のようだった」と思い返しているくらいだから、保護者/被保護者という関係は最初から頭にないんだろう。もしかしたら、聡子がそういう意識を持っていることを、考えたことすらなかったのかもしれない。応えることができないと言われたときよりも、守らせてほしい、と言われたときのほうがショックを受けたように見える。年齢以外は対等の関係だと思っていたところに守りたいと言われたから、自分が弱い存在だと思われていたことにショックを受けたのか。

聡子が真修のことを「あなた」と呼んだのは初めてじゃないだろうか。普段真修からはさん付けで呼ばれ、自分は呼び捨てにする、年齢からくる上下関係を意識的に排除しつつ、客観的事実として年齢差が存在することをアピールしているのか。そこまで考えてはなくとも、事実として真修は子どもと言われる年齢だからこう言わざるを得ないけれど、子ども扱いはしていないよ、という意思表示か。

このタイミングで電話をかけてくる空気を読まない存在は誰なのだろう。まさか八島(絶対違う)
まあ椎川とかだったらこの日のうちに回想などで登場するだろうから、引っ越し屋の可能性が高いか。

真修は折りたたみの財布からビー玉を落とすって、いったいどういう持ち歩き方をしてるんだか。毎日持ち歩くものとして扱ってるんだろうけど、変な膨らみ方してしまうだろうに。これを落としてしまったことで、聡子の気持ちも離れてしまったという感情を表しているのか。逃げるように去っていく真修の表情は、思いが届かなかった悲しさよりも、弱い存在、対等ではない存在だと思われていたことに対する悔しさが見える。
失恋したんだ、と振り返っているが、「振られた」という表現ではないんだな。真修のことを大切に思っている、聡子の気持ちもある程度わかるのか。

聡子は帰宅後、受け流さなかったことを後悔したのだろうか。でも、受け流さずにちゃんと答えて正解だと思う。
真修の気持ちに応えることはできないと言い切ったが、自分がそういう感情を持っていることは否定していない。理性と感情のバランスで、真摯に対応したらああ言う他なかったのかもしれない。真修を守りたいというのも間違いなく本心だろう。しかしそれは、恋愛感情と同居できる感情のようだ。聡子は明らかに、真修の言葉に感情を動かされて、自分も恋愛感情を持っていることに気づいた。そして、真修の気持ちをわかった上で、一緒にいたいと思っている。理性で押さえつけてはいるけれど、理性が邪魔だと感じ始めているようにも思える。だから、真修の言葉を思い出したとき、困るのではなく悲しくなるのだろう。

私がここにいる理由は真修だ、と言っているが、自分の感情も真修の感情も、大人として聡子があるべきだと思っている関係になれるとは思えない。そもそも、このあと真修とコンタクトを取るなんてできそうにない。真修から連絡をしてくるのはなにか口実が必要だろうし、それは相当な不可抗力でないと動けないだろう。聡子からコンタクトをとるのは残酷過ぎる。太宰治が身を投げた川とあるから玉川上水のようだが、真修と同じ中央線沿線だとしても、ターミナル駅ではなさそうなので駅や電車で偶然会うというのも考えにくい。いやまあ、仙台で偶然会う可能性なんてもっとなかったんだけど。

だからこそ、最後にまゆからメッセージが届くことで、次の展開につながるのだろう。
しかしいつの間に連絡先を交換したのか。20話で交換したのなら、もうその時点でまくら=真修ってわかるのだから、21話でカマをかける必然性がなさそうだけど。

次の展開が気になるけれど、聡子の気持ちも見えてきたから、2ヶ月はなんとか耐えられそう。
22話で次回休載なんてことになってたら、耐えられそうになかったけど。単行本派の人はキツイだろうなあ。

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
第23話のネタバレ感想
第22話のネタバレ感想
第21話のネタバレ感想
第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
第17話のネタバレ感想
第16話のネタバレ感想
第15話のネタバレ感想
第14話のネタバレ感想
第13話のネタバレ感想
第12話のネタバレ感想
第11話のネタバレ感想
第10話のネタバレ感想
第9話のネタバレ感想
第8話のネタバレ感想
第7話のネタバレ感想
第6話のネタバレ感想
第5話のネタバレ感想
第4話のネタバレ感想
第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想

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2018年9月18日火曜日

017 / 472 七帝柔道記

10点満点で、9点。

何度も読み返しているので当然書いてると思っていたが、書いてなかった。
戦前の高専柔道の流れをくむ、旧七帝大学(北大、東北大、東大、名大、京大、阪大、九大)のみで行われている七帝柔道の世界を描いた、著者の自伝的小説。

物語は、主人公が名古屋から北大へと進学し、北海道の大地を踏むところから始まる。二浪で合格した主人公は、一浪で先に入学していた鷹山と会うが、一緒に七帝柔道をやろうと離していた鷹山は、あまりの練習の辛さに既に柔道部を辞めていた。
七帝柔道との出会いは、名大柔道部が近隣の進学校を集めて開催した合同練習。愛知県でもそれなりの強さだった主人公は、寝技でても足も出なかったことに驚き、しかも名大柔道部の何割かは白帯スタートだと聞いて驚く。寝技に待てがない柔道、一本勝ち以外ない柔道、練習量がすべてを決める柔道という言葉と、七帝戦で勝つために力を貸してほしいという真っ直ぐな思いに心を動かされる。しかし地元を離れたかった主人公は、とりあえず遠くに行こうと受けた北大で景色に魅了され、二浪の末合格を果たす。

柔道部に入ってみると、そこは想像を遥かに超えた世界だった。苦しいという言葉では表しきれない、地獄の世界。「練習量がすべてを決める」ということはつまり、逃げ場がないということ。勝てなければそれは、練習量が足りないことを意味するのだ。一分でも練習したほうが、一本でも乱取りをしたほうが勝つ世界。580ページ近い本文の7割、いや8割は、辛い、苦しい、辞めたいという言葉が並ぶ。
待てがないどころか、参ったすらない世界。「参ったなんかしたらあんた、七帝じゃ笑いもんで」と言われ、絞め技は落ちるまで絞める。関節技は怪我をするため、練習ではそこそこで切り上げるが、本番では折る。
抜き役と分け役が決められ、分け役は徹底的に引き分けを狙う。抜き役と分け役に上下はない。抜き役を止めた分け役は、一人抜いた抜き役と同じ価値がある。史上最強の分け役、という一体なんだかわからない二つ名を持つ選手すらいる。

なぜここまで苦しい思いをしなくてはならないのだろう。先輩はなぜここまで厳しいのだろう。「七帝戦を見ればわかる」と言われ、地獄の苦しみに耐える日々。
ようやくたどり着いた七帝戦では、「お前俺達のために死ねるか」とまで声をかけられる。「試合にはみんなの人生がかかっとるんで」とまで言われる。

これだけの練習を重ね、覚悟を決め、それでも勝てない。涙の中で主将が交代。
決勝戦に感動し、勇気を出して優勝した京大の選手に話しかけたら「どんなに苦しくても辞めるな」と言われる。ホテルのロビーで偶然会った、京大と同時優勝の東北大の選手にも「絶対に辞めるな」と言われる。みんな苦しい練習に耐え、次々と辞めていく仲間を見送り、自分も辞めたいと思いながら歯を食いしばってきたのだ。

新主将の元、以前にもまして地獄の苦しみが続く。しかしそれは一年目だけではなく、二年目三年目も同様に地獄。
練習を離れたら本当にいい人たちばかり。これで練習さえなければ、と思うが、練習では容赦なく絞め落とされる。

新人歓迎合宿では体力の限界まで練習したのに、深夜まで寮歌の練習をする謎の歓迎イベント、カンノヨウセイ。気の荒いOBが多数出席し、毎年怪我人が続出。大学からはいい加減やめろと言われているらしいが、先輩は「お前たちだけは絶対に守るから」と言われて臨む。その先輩には、木刀で殴られた傷跡がある。合宿最終日、ついに訪れたカンノヨウセイでは何が起こるのか。

「柔道部がやってたんじゃ売れないだろ」というだけの理由で、「焼きそば研究会」を名乗って出店する北大祭。他の部やサークルが警備のために深夜までいるところを狙って、深夜料金で販売する意地汚さ。こちらは合宿や遠征費を捻出するのに真剣なのだ。

同期には、直情的で喧嘩っ早いが魅力にあふれる竜澤。三浪の体でスタミナこそ劣るものの、技は四年目にも引けを取らない沢田。他にも多数、七帝戦までには12人が残るが、それからも次々に辞めていく。

地獄のような練習にも、馬鹿な遊びにも全力で取り組む。全力で臨まないのは授業くらい。

靭帯を切って入院した病院で、柔道の話ばかりしていて看護婦に「柔道が好きなんですね」と言われるが、決して好きじゃない。じゃあどうして柔道を続けてるんですか、と聞かれて自然に出てきた「もちろん七帝戦で勝つためだよ」の一言。この言葉が出てくるまでに、一年以上かかっている。

常識はずれの世界。青春どころか、人生を柔道に捧げる男たちの世界。その柔道はあまりにマイナーで、柔道専門誌にすら掲載されない世界。
しかしこの世界は、現在も連綿と続いている。

本書は2年目の七帝戦までで終わっているが、その2年後に中井祐樹が入ってくる。
続編が現在「月刊秘伝」で連載中のようだが、早く読みたい。

ちなみに、コミカライズもされている。こちらはもうすぐ完結かなあ。できれば続編まで続けてほしいけど。

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2018年9月16日日曜日

エネルギー管理士(電気分野) その3

3年かかったけど卒業できたので、一応メモ。

難易度:

ぶっちゃけ電験三種のほうが難しいと思う。扱っている内容は電験より高度だけど、範囲が狭い。電鍵を勉強しているなら同時に受けたほうがいい、と言われるのも納得。
内容もかなり電験とかぶっているし、微積分が入ってくる理論については、数式の誘導・展開過程の穴埋め形式なので、上っ面の知識でも正答にたどり着ける。電験よりも付け焼き刃でなんとかなると思う。

テキスト:

ほぼ過去問のみ。エネ管はまともなテキストがないと言われているけれど、本当。2冊ほど買ったのはいいけれど、ほとんど開かなかった。
過去問の解説を読んでわからないところについて、テキストを開いても参考になるような情報がない、というのが多すぎ。むしろ電験のテキストのほうがよほど役に立つ。
過去問は2冊買って、複数の解説を参照して理解を深める、あるいはどちらか読んでわかればよい、というスタンスで取り組んだ。それでもわからないところはあるので、できれば3冊以上欲しいけれど、選択肢もあまりないしそこまでする必要はないかなあ。
どっちの過去問集も、ページレイアウトの配慮が殆ど無いので、読みにくいし使いにくい。この辺も電験とはエラい違い。マイナー資格ってこんなもんね。
あとは数学。これも、高校数学をちゃんとやった人なら、ラプラス変換だけおさらいすれば大丈夫。でも実は、それすらできなくても合格できた。


過去問の取り組み方:

問題を読む。そのまま答えを読む。数式ではなく言葉などを入れる穴埋め問題なら、問題に答え(ズバリではなく、選択肢の番号)を書き込んでしまってそれを読む。
それを2周くらいしたあと、考えながら読む。1年分あたり5周くらいはやる。基本的にはこれだけ。
計算問題はさすがに理解して手を動かさないとわからないので、丁寧に式展開して考える。でもこれも、いきなり取り組んでできるわけがないので、最初は答えを見ながら考えながら書く。3周目くらいから、いくつかポイントが分かればそこからの式展開はできるようになるので、怪しいポイントを重点的に理解または記憶するようにする。

勉強時間と方法:

課目I; エネルギー総合管理及び法規・・・20時間程度

こいつばかりは電験とまるでかぶってないので、ゼロベースで勉強するしかない。
でも特に難しくないし、過去問の解説で十分理解できる内容なので、過去問を複数回やるだけで十分。過去問10年分やってこの程度の時間しか使ってない。

課目II; 電気の基礎・・・15時間程度

微積分とラプラス変換が避けて通れない、電験三種から一番レベルアップを感じるところ。課目としては電験の理論+機械。この課目の勉強時間は15時間程度だけど、数学の復習に同程度使っている。
でも根気がないので、丁寧に復習したのではなくて、上っ面だけラプラス変換ができるようになった程度。過去問は5年分くらいか。問題のパターンが多くないし、問題に沿って式の展開(穴埋め)をしていけばいいので、これでもなんとかなる。

課目III; 電気設備及び機器・・・無勉強

電験の電力課目かなあ。まるきり勉強してなくても合格点が取れたので、あまり記憶にない。
電力の基礎知識さえあれば、あとは(電気屋としての)一般常識でなんとかなる気がする。

課目I, II, IIIは1年目で3科目合格。課目IVは1年目無勉強で不合格、2年目10時間程度の勉強で1点足らず(119/200であと1点だった)、3年目に合格。

課目IV; 電力応用・・・30時間程度

電験の機械課目+高校物理。あと空調。
過去問10年分やった。エレベータとポンプがほぼ毎回出るので、これはしっかりやる。問題11はクソみたいな難易度なので捨てていい。でも、理論がちゃんとわかっていれば取れるはず、ちゃんとわかってなくてもなんとなくで半分くらい取れる。
選択科目は電気加熱、電気化学、照明、空気調和の4科目から2科目選ぶもので、普通は電験とラップしない空調は捨てるらしい。でも、過去問を見た限り空調が一番簡単なので、これを捨てるのはもったいない。逆に電気化学と照明は苦手なので、一通り取り組むつもりが照明は早々に、電気化学も3年分くらいやっただけで捨てた。電気加熱は熱計算が簡単なので、半分は確実に取れるし。

取ってみて

難易度の割に、知名度実用性とも電験に大きく劣る上、受験料は高いし免状もらうのに更に金がいるしで、コストパフォーマンスのとても悪い資格。
電験三種から二種へのステップアップとして、練習問題扱いで取り組むのが一番いい。本当にエネ管の資格が必要なら、熱分野のほうが簡単らしい。実際、電験三種持ちで熱受験という人は結構いる。

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016 / 471 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?

10点満点で、6点。

うーん。タイトルと内容が違ったというか、期待していた内容と違ったと言うか。
これむしろ、コンサルタント向けの教科書じゃないかなあ。

ノートのまとめ方としては、ルールだけ言うならとても単純。

  1. 見出しをつける
  2. 3分割にする
  3. 事実、解釈、行動の領域に分けて使う

これだけ。本書の大部分は、それを使いこなすための考え方、まとめ方について書いてあるのだが・・・
簡単そうに書いてあるけど、すっと入ってこない。なぜだろうね。事例もそれなりに載っているのだが、「きれいだけど俺には無理だな」という印象。「このまとめ方ができる人なら、教わらなくともできるんじゃないの?」と思ってしまう。

勉強にも使える、と書いてあるが、そもそもの視点が違うのだろうね。
勉強でノートを使うとき、要点をわかりやすくきれいにまとめるためにノートを使う、という前提で書いてある。まあそういう用途で使う人が多くいる、多数派かもしれないことは否定しない。でも俺は、ポイントノートを自分で作ることには全く価値を感じていない。専門家が書いた教科書に勝るものを自分で作ることができると思っているのか、という単純な理由。もちろん自分にとって不要な情報はあるだろうし、ダラダラ書いてあるわかりにくいテキストが多く存在することも知っているけど、それでもまとめ直すためにノートを使う価値はあまり感じない。テキストにマーキングでもして、覚えるのは記憶術でも使えばいい。

それよりむしろ、普段勉強している理工系の内容であれば、原理を理解したり結果を得たりするのに数式を追うことが必須。考えながら手を動かしてナンボだと思っているので、綺麗にまとめる必要なんてない。見返す必要だってない。理解できれば覚える必要なんてないのだし。

本書の内容が有意義でないとは思わない。むしろいいことがたくさん書いてあると思う。
ただ、俺が手に取った目的とは合わなかったかな。

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2018年9月13日木曜日

015 / 470 自衛隊に学ぶ「最強の仕事術」実践ノウハウ

10点満点で、7点。

ビジネス書を多数出版している松尾氏と、元陸自冬季戦技教育隊戦闘戦技教育室室長の久保氏の共著。冬季戦技教育隊、略称冬戦教はレンジャー訓練終了者のみ受けられる更に上級の訓練。レンジャーよりもまだ上があるのね。いやまあ、あっても不思議はないけれど。
自衛隊の戦闘訓練において、その根底にある思想をビジネスに応用展開するとこういうことだ、というスタンスで書かれている。

・誤解のない情報伝達は奇跡と思え
・誤解されて当然、理解されたら偶然
・未達成箇所を分析して解決策を同時に持ってくるものは、評価を上げることすらあると知らしめる
・メモをうまく取るには、後々自分が人に伝えることを前提にする
・考えをまとめてからではなく、「報連相」をするために考えをまとめる
・本当に人を動かすには、理由も伝える
・質問がなければ、こちらから質問する
・必成目標と望成目標を分ける
・やらないタスクを明確にして、前処理をする
・部下には「考えること」を学ばせなければならない
・人を育てることが最大のコストカット
・「落ちこぼれ」はリーダーが作り出した「落ちこぼし」
・常識は一致しない、だから基準を明確にする
・感情をコントロールして「強い自分」を演出する
・無能な指揮官は、部下を休ませることが出来ない
・立場をわきまえるとは、権限を目一杯使うこと
・「なぜ」を5回繰り返す
・アイデアの不足は足でしか補えない

他の本でも書いてある、基本的なことばかりではあるけれど、それだけに重要かつ出来てない人が多いということだろう。俺も含めて。
見出しと記述内容が噛み合っていない箇所がいくつか気になったけれど、内容そのものはわかりやすい。自衛隊における具体例が書かれていて興味深いが、カエルを食べるだとか、なかなか他の本では見かけない描写もあったり。

それほど厚くない本なのに、ところどころ読み込んだので、思いの外読むのに時間がかかった。
読みやすい本だけれど、じっくり時間をかけて読むべきなのかもしれない。

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2018年9月7日金曜日

【妄想】私の少年 最新話

妄想が止まらないので垂れ流し。
妄想なので実際の最新話とは全く関係ないし、面白くないのでこんな予想は外れてほしいと最初に言い訳。23話が公開されたら消そう。

想像したBGMは、西村由紀江さんの「手紙」
どんなに寂しくても、正面から受け止めて前を向こうという曲。

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言わせてしまった・・・と悔やむ聡子。しかし予想もしていたことなので、覚悟を決めて話し出す。
「ありがとう。真修の気持ちは嬉しいし、私も真修のことが大好きだよ。でも私の好きと真修の好きは多分違うし、真修の気持ちには応えられない」
なぜ、と聞く真修に、真修のことが家族のような存在として好きだから、独占したいわけじゃない。子どもらしい幸せを求めてほしいし、真修に恋人ができたとしても、それを心から喜ぶことができる、と答える聡子。

それに、私達は一度問題になっているのだから、そもそもこうやって会うこと自体がマズいんだよ、と改めて言う。そして、2年前に何があったのか、真修の父に何を言って何を言わなかったのか、それの何が問題なのか、なぜ転勤を受け入れて、真修に何も告げずに去っていったのかを話す。

でも連絡をくれたじゃないですか、と言う真修に、私も真修と話がしたかった、会いたかった、だから連絡をしてしまったけど、それが間違いだったと答える聡子。そして、真修と話をしていて、2年間心を縛ってしまっていたことに気づいたから、それを解放しなきゃいけないと言う。音信不通の2年で心を縛ってしまったのだから、今度はいなくならないで、手の届く距離で、真修にとってただの友人の一人になるために東京に出てきたの、と言う。

私も同じようなことがあったの、昔付き合っていた人と別れたあと、何年もその人に心を縛られていて、周りのことが見えてなかった。真修と出会ってから解放されたのに、その私が真修に同じことをしていちゃダメなの、と言う。

俺は縛られてなんかいない、人を好きになるのってそういうことでしょう、と真修。しかし聡子は、それはまだ真修が狭い世界しか知らないからだ、これからもっと成長して、周囲を見ることができるようになれば、自分の視野が狭かったことに気づく。私は真修がそうやって成長してくれるのが一番嬉しい、と答える。子供らしい時間を過ごして、きちんと大人になってほしい。

じゃあ、大人になるまで待ちます。4年でも6年でも、と真修。
聡子は絶句して、真修が18になる頃には私は36だよ、この年齢差で釣り合うわけ無いでしょう、そういう事もわかってくるのが大人になるということなのよ、と答える。
そんなのは関係ない、他の人から見たら変かもしれないけど、俺と聡子さんは普通だ、って言ったじゃないですか。俺は、終りが見えてれば何年でも待てます、と返す真修。
---

あああつまらん。つまらん上に救いがない。だいたいこれでは話を切り上げるタイミングがない。こんな妄想は見当違いであってほしい。
そもそも前提として、聡子には恋愛あるいは結婚願望が乏しいか、殆どないということにしてるんだけど、どうなんだろう。八島と会っているときも、割と投げやりな態度だったので、結婚したいと思ってるわけじゃないけど流されてしまえ、という感じがした。親はうるさいし、年齢もそれなりなんだから、もう諦めて結婚しよう、という感じ。だからこそ、真修に年齢差のことは話をしても、自分に恋人ができる、あるいは結婚するという可能性については触れないんじゃないかなあ。
反対に真修は、聡子が自分以外の男に心を奪われる、という可能性は全く考えてなさそう。年齢差、社会的立場という障害さえなければ、すぐにでも気持ちを受け止めてもらえるのに、とか考えていそう。

高野ひと深さんがインタビューなどで語っていることを考えると、もっといろんな可能性があるけど、作品から読み取る限りこんな展開になりそうなんだよなあ。
聡子は時折真修のことを恋愛対象として意識しているけど、あまり強くないし自分自身で否定してる。母親代わりになろうとしてる、というまゆの指摘を否定できなかったから、そういう要素が一番強いのはまず間違いない。だからこそ、年齢相応の青春を送っている真修を見るのが一番の望みだと思う。それこそ、自分のことなんて考えてなさそう。真修が自分を慕ってくれるのは嬉しいけれど、それは母親に懐くようなもので、真修が自分を恋愛対象として意識するのは間違っている、と考えていそう。

いい方向に裏切られてほしいなあ。

2018年9月6日木曜日

014 / 469 シャトゥーン ヒグマの森

10点満点で、7点。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」、「七帝柔道記」の増田俊也氏のデビュー作。第5回「このミステリーがすごい!!」優秀賞受賞作なので、ミステリー小説だと思って読んでいたらぜんぜん違う。北海道の厳冬、そしてヒグマの驚異が圧倒的な筆致で描かれている。

ヒグマがどれだけ恐ろしい存在なのか、小説とはいえ本書を読むまでは知らなかった。なにせ現物を見たことあるのは、動物園のツキノワグマくらい。クマはたしかに脅威だが、体格は人間とそう変わらず、また基本的にクマは人間を恐れるものだと思っていた。
ヒグマは違う。ツキノワグマの体重が最大70kg程度なのに対し、ヒグマは400kgを超える。200kgを超えるエゾシカを一撃で屠る。5tものマイクロバスをひっくり返す。時速80kmものスピードで走る。散弾銃ではダメージを与えることなどできず、ライフルですら足止め程度。顔を半分吹き飛ばしても、脳のダメージが小さければ攻撃を続け、心臓を撃たれても動く。

土佐薫は、娘の美々、後輩記者の瀬戸とともに、年末年始を兄のいる北海道大学天塩研究林の山小屋で過ごすべく雪の林道を行く。途中、ゴミだと思ったものが人間の足だと気づき、とっさにハンドルを切ったことで車が横転。降りて確認すると、ヒグマに襲われたと思しき遺体、その残骸だった。その場にいるのは危険なので、クルマを諦めて歩いて小山で向かう。
小屋には薫の双子の兄で研究林林長の土佐昭、薫と昭の後輩で猛禽類研究者の小野眞伊子、眞伊子の婚約者で同じく猛禽類研究者のエスコ・バーネヤン、そして明らかに密猟者としか見えない西良明の4人がいた。すべてを自然の保護と研究に捧げ、電気の使用すら拒む昭が西にやたら遠慮しているのが異様。雪道を一時間以上歩いて小屋にたどり着いた薫たちは、ヒグマが人間を襲った跡があることを告げる。そしてその死体が、西の仲間であることを知る。

交通手段はなく、小屋に閉じ込められた7人。西の仲間を襲ったのは、シャトゥーンと呼ばれる、冬ごもりに失敗したヒグマ。シャトゥーンは小屋を発見し、襲ってくる。ろくな武器はなく、西の散弾銃もあてにならない。眞伊子の友人が車で迎えに来る一週間後まで耐えるしかないが、シャトゥーンは簡単に小屋を破壊し、一人、また一人と食われていく・・・

迫真の描写でヒグマの恐怖が迫ってきて、怖い。そして、ヒグマに襲われたものの末路が恐ろしい。生きたまま食われるというのはどういう状態なのか、生々しい。こういう描写が苦手な人にはおすすめできない。
しかし、ページをめくる手が止められない引力はある。



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2018年9月2日日曜日

013 / 468 とんでもなく役に立つ数学

10点満点で、6点。

「渋滞学」を専門にしている著者の研究室に訪れた、12人の高校生に対する講義を書籍化したもの。実社会で数学がどのように応用されているのかを語っている。
応用というのは、例えばコンピュータの基礎理論がこうだとか、構造力学で使用する数学だとか、そういう意味ではない。本書で紹介している事例をざっと並べると、だいたいこんな感じ。

  • 最短経路の求め方(微分)
  • カードマジック(群論)
  • ひき逃げ犯目撃証言の信頼性(確率)
  • 波の変化(三角関数と微分方程式)
  • 囚人のジレンマ(ゲーム理論)
  • 解けない問題(不完全性定理、組み合わせ爆発、カオス、矛盾)
  • 津波警報(ソリトン理論)
  • インクジェットプリンタのチューブ設計(ソリトン理論)
  • 電波塔の最適配置(セルオートマトン)
  • 渋滞学(セルオートマトン、微分方程式)

まあ三角関数と微分方程式は、ほぼすべてのジャンルに絡んでくるのだけれど。
それぞれの分野について深く掘り下げるのではなく、解決の根本には数学的発想がある、あるいは数学的アプローチで問題解決を試みるといった内容。対象はどうやら高校一年生っぽく、まだ微積分を教わっていないようなので、数学的に深く突っ込んだ話はしない。考え方について語っているだけなので、数式を飛ばしてもちゃんと理解できる内容。もちろん数式を追うとより深く理解できるのだろうけれど、そこまでして読む必要はないと思う。

面白かったのは、セルオートマトンってちゃんと応用できるんだな、と感じたこと。ライフゲームとか知ってるけど、「面白けどだからなに?」という存在だったのが、ちゃんとそれを応用して社会的な問題にアプローチできることを知った。数学者ってややこしい数式をこねくり回して、「この数学が実際に役立つのは200年後」とか言ってるイメージがあったのだけれど、そうでもないのね。いやもちろんそういうジャンルもあるだろうけど、実社会への応用をメインに考えるのは、数学者ではない別のジャンルの人達かと思ってた。

ちなみに本書に登場する高校生は、都立三田高校だとか。調べてみると現時点で偏差値は64。超エリートとまでは行かないけれど、まあエリートたちだろうね。地方(山口県とか・・・)だと県下トップクラス。都内だと80番台とかになってるけど。
こういうエリートたちではなく、偏差値50-55くらいの高校生相手だったらどういう内容になったのか、少し気になる。

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