2018年8月13日月曜日

私の少年 第3巻 第11話 ノイズ(ネタバレ感想)

ねとらぼのインタビューで、高野ひと深先生自ら「年の差恋愛を描くつもりはない」「どんな事があっても大人と子供が恋愛関係になってはいけない」「責任能力がないとされる年齢のまま答えを出す」等答えているのを見て軽くショック。
真修が少年のうちは仕方ないけれど、聡子と真修には最終的にくっついてほしい。でもこの答えだと、恋愛関係(あるいは結婚)でハッピーエンドを迎えることってないじゃないか。。。

【ストーリー】
真修がなにか言いかける前に、父親に話しかける聡子。少し説明をさせてほしいと言うが、誰だかわからない人物から話をされても状況がよくわからなくなるだけ、と拒まれてしまう。父親は真修を連れて帰ろうとするが、不穏な空気を感じた真修は立ち止まったまま動かない。やむなく、話を聞くから駅前のファミレスに行ってくれ、一旦真修を帰らせると父親。


父親を待つ間、いつかは話をしなくてはいけないと思っていた、しかし何から話そうかと悩む聡子。ちゃんとしなきゃ、と自分に言い聞かせる。


名刺を渡して名乗ると、父親はヨネサスと取引をしたことがあるらしい。少しガードがゆるんだと感じる聡子。真修との出会いから話し始める。


よく知らない方に腕を掴まれていたのでとっさに声をかけたと言いつつ、「よく知らない方なんてまんま私のことじゃん・・・」と思う。6月頃から、毎週金曜日に練習していることを説明し、これまで挨拶していなかったことを詫びる。


真修の説明と同じだからそうだろう、と父親。人に懐くことは珍しい、それも他人には、と父親。


真修はもうサッカーを辞めたから、練習など必要ないと言う。きっかけは些細なことだし、クラブの度に暗い顔をして帰ってくるし、向いてないのはわかっていたと言い出す。聡子は話を聞いているはずが、他の客の話に意識が行ってしまい、ちゃんと聞くことが出来ない。


聞こうとしているのになぜ、と考えて、父親の話とこれまでの真修が噛み合っていないからだ、と気づく。


今の真修は何をしてもすべて成長になる、それを見ていると眩しいから見守りたくなる、と聡子。

父親が何かを言いかけたとき、真修が店に飛び込んできて、聡子をかばうように立つ。約束はすべて守るから、里琴の練習を許してほしいと頼む真修。父親は聡子とLINEの連絡先を交換し、練習前と終わりに連絡をすることを条件として、聡子と真修の練習を許す。


今日は遅いからこのへんで、会計はしておくからと席を立つ父親。聡子に、若い人におごってもらうのは苦手と声を掛ける。30なので若くない、と答える聡子に、ふと遠い目をして「30は・・・若いですよ・・・」とつぶやく父親。妻が30で他界したことを思い出す。
聡子は真修と翌週の練習を約束し、なんとか乗り切った、と思う。

【感想・考察】
帰るぞ、と促された真修が、露骨に不安な表情を見せている。聡子と父親の態度から、何やらまずいことのようだと感じ取ったのだろう。聡子が背を向けたときには、泣きそうな表情になっている。
ファミレスで「ちゃんとしなきゃ」と自分に言い聞かせる聡子は、おそらくこの段階では、自分が不審な人物ではないとアピールするつもりだったのだろう。

名刺を渡してガードがゆるんだと感じる聡子がちょっと羨ましい。うちの会社は知名度がないので、社外で会った人に名刺を渡しても、まずわかってもらえないからなあ。その意味で、知ってる社名の名刺がでてくると、確かにやや安心できる気はする。しかし、単に社名を知っているだけではなく、取引したことがある、という発言が後々効いてくる。

自分を説明しながら、自分自身が父親から見たら不審者だと思う聡子は、相手の、そして読者の視点をちゃんと理解している。しかしおそらく、真修の家庭環境から、そもそもちゃんと話ができる相手だとは想像できていなかったのかもしれない。父親が予想外に常識人に見えたことで、今後どう関わっていくべきかも含め、自分自身が混乱しているように見える。

父親が、真修が他人に懐くのは珍しい、と語るのはおそらく、自分自身に懐かれていないからだろう。わざわざ「知らない他人」という表現をしているのは、自分が「知っている他人」という存在ではないかと思わせる。似ていない顔立ち、弟に「遼一」と名付けることから、真修とは血の繋がりがないことを暗示している気がする。俺には懐かないのになぜ聡子に、という思いがありそう。

話をする聡子のTシャツには「hit me」とのプリント。聡子が一方的に打ちのめされるわけではないが、ダメージを負うことを表しているのか。

真修がいつもクラブから暗い顔で帰ってくるのは、父親が見に来てくれないから、ではないだろうか。少なくとも、第2話で他の子を本気で応援している姿からは、自分が上達しないから楽しくない、という態度ではないと思える。本当は無関心なのに、真修のことを心配している風を装っている、そう見える。本当に真修のことを気にかけているのなら、少なくとも第1話で真修が外泊をしている、そのことが問題になっていないわけがない。

父親と話をしながら、聡子の「ちゃんとしなきゃ」が、自分のことを説明しようという意志から、真修を守ろうという気持ちに傾いていることが読み取れる。この父親は真修のことを見ていない、私が助けなければ、真修の笑顔は守れないという気持ちを強く持ったのではないだろうか。真修を見守りたいという言葉は本心からだろう。

真修が飛び込んできたとき、両手を広げて聡子を守るように入ってきているのが興味深い。その視線も、言葉遣いも、子供が父親に向けるものではない。真修にとって父親は保護者ではなく、守ってくれる存在ではないこと。素直な感情をぶつけることができる聡子は、父親と対峙してでも守るべき存在であることを表している。父親の苦虫を噛み潰したような表情が怖い。

最後、聡子と翌週の練習を約束する真修は、今回初めて笑顔を見せている。父親には決して見せないであろう笑顔。

連載当時のbbsやブログを参照してみると、「聡子と父親にフラグが立った」と書いてあるのをいくつか見かけたけど、さすがにそれは感じられないなあ。
このあとの展開を知っているからかもしれないけれど、この展開では、少なくとも聡子が父親に魅力を感じることはないと思う。むしろ聡子からは、真修にとって父親は横暴な権力者である、と見えたんじゃないかなあ。

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
第23話のネタバレ感想
第22話のネタバレ感想
第21話のネタバレ感想
第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
第17話のネタバレ感想
第16話のネタバレ感想
第15話のネタバレ感想
第14話のネタバレ感想
第13話のネタバレ感想
第12話のネタバレ感想
第11話のネタバレ感想
第10話のネタバレ感想
第9話のネタバレ感想
第8話のネタバレ感想
第7話のネタバレ感想
第6話のネタバレ感想
第5話のネタバレ感想
第4話のネタバレ感想
第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想

第11話が収録されている3巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。
双葉社講談社kindle



0 件のコメント:

コメントを投稿