2018年8月15日水曜日

私の少年 第3巻 第12話 ビー玉(ネタバレ感想)

【ストーリー】
金曜日。聡子は真修との練習開始を、LINEで写真とともに父親に連絡する。律儀な人だ、と思っていると、後ろから覗き込んだ同僚が「子煩悩ですね」と声を掛ける。なにか答えかけると、同僚は姪っ子と回転寿司に言ったときの動画を披露する。見ていて和んだ父親は、今まで一度も連れて行ったことがないな、今度うちも行ってみるか、、と思う。


聡子は真修に、花火大会には行けないと告げる。練習を許してもらえただけで僥倖、花火大会に連れて行くなんて言い出せないと聡子。激しく落ち込む真修を見て、代わりに公演で花火をしよう、と提案する。
父親との会話を思い出し、言っていいことは全て言った、これ以上を言うと関係が終わってしまう、と考える聡子。今まで、一歩間違えると「全部終わる」ことを続けていたのだ、と思う。


いつもの練習が終わり、花火を楽しむ真修と聡子。聡子と花火ができることが心から楽しそうに見える真修。


聡子と火の受け渡しをする真修の表情は、今まで見せたことがないもの。


花火が終わり、聡子はラムネを取り出す。聡子にとって花火といえばビールとイカ焼きだが、さすがに学習して真修が喜びそうなものを準備した聡子。
聡子はラムネの栓に使われているのが、ビー玉ではないという説があるという雑学を披露する。栓に使うには完全な球体である必要があり、その選別に残ったのがエー玉。不合格品がビー玉という説。子供の頃その話を聞いて、父親に取り出してほしいと頼んだら、便を叩き割られたと聡子。ガラスは飛び散って怒られるし、せっかくのエー玉もコンクリートで傷がついてしまった、としょっぱい思い出を語る。

それを聞いた真修は、エー玉を取り出すんだ、と開けようとする。


その姿を見て、聡子は「私が出してあげる」と手を差し伸べる。


と、あっさり空いてしまう。ショックを受ける真修に、真修が先に緩めてくれていたから、と声を掛けるが、聡子にきれいなまんまるを見せたかったから俺が出してあげたかった、とつぶやく真修。
出せたのは真修のおかげだから、これは真修が持っていて、と優しく語る聡子。


エー玉を空に向けて、月より丸い、瓶から出しても綺麗なままだね、と語り合う。

【感想・考察】
回転寿司の話は、次へ続く大きな伏線となっている。

花火大会に行けないと言われた真修が「来週・・・」と言っているので、この回で描かれているのは8月27, 28, 29日のいずれかというところだろうか。
第8話で花火大会は「来月の28日」と言っているから8月28日だろうし、恐らく金土日のいずれかにやるのだろう。平日にやっている花火大会も少なくないが、平日だと聡子が気軽に行こうと言えないだろうし。

聡子が危うい関係だったと回想しているとき、真修が車に乗れるようになれば・・・と話していることを思い出しているのは、聡子も真修が成人するまで、あるいはその後も自然ないい関係でいたいと思っているからだろうか。親に話して「おかしくない」関係、と強調しているということは、やはり恋愛感情は持ってなさそう。今の距離感が気持ちいいんだろうなあ。その意識がとても自然に思える。

真修の「しないんですか?」は「一緒にしたい」という意味だ、と聡子が感づいているが、これはどういう心境なんだろうか。
少なくとも聡子の前では、真修は割とストレートに希望を言っている。遠回しに意思を伝えてきたのは、宿題を見てもらったときくらいじゃないだろうか。家庭環境を見て、父親を見て、抑圧されていると感じ取ったからなのだろうか。

聡子と火の受け渡しをする真修の表情から、とうとう恋心が見えてきた。「火がほしい」と言ったとき、頬が赤く染まっている。火を見つめている目は、恋人と過ごしているかのような表情。
そんな真修を見る聡子の表情は、母親が子供に向ける笑顔に見えて仕方ない。

回想で聡子の父親が初登場。このあと少なくとも21話までは登場しないから、さほど重要人物として描く予定がないのだろうか。ビー玉を出してほしいと頼まれて、聡子が止める間もなく叩き割ってしまうのは、乱暴な性格を表しているのか。眼鏡をかけてたばこを吸うのは、椎川との共通点。
(椎川がたばこを吸う描写は13話で登場する)

エー玉を取り出そうと四苦八苦する真修に聡子が向けた眼差しは、まるで真修そのものを檻から出してあげる、と語っているかのようだ。真修の表情は、救いを見つけたように見える。
しかしいざ聡子が出してみると、真修は心底残念そうな表情。聡子にきれいなまんまるを見せたかったと言う真修は、小さな頃聡子が味わえなかった喜びを、他の誰でもない、自分が与えたいのだと言っている。真修にとって聡子は保護者ではなく、年齢差はあるもののある意味対等な存在なのだろうと思う。だから、自分にできることで聡子を喜ばせてあげたいと思うのだろう。

そう言われた聡子は驚き、頬が赤くなり、そして視線が少し変わる。一方的に保護される存在ではない、自分なりに聡子と対等の存在であろうとしている真修を、一人の人物として見つめ直したのだろうか。

月とエー玉を見つめる二人の表情が明るい。そして現時点では、これが最後の楽しい思い出になる。

第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
第23話のネタバレ感想
第22話のネタバレ感想
第21話のネタバレ感想
第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
第17話のネタバレ感想
第16話のネタバレ感想
第15話のネタバレ感想
第14話のネタバレ感想
第13話のネタバレ感想
第12話のネタバレ感想
第11話のネタバレ感想
第10話のネタバレ感想
第9話のネタバレ感想
第8話のネタバレ感想
第7話のネタバレ感想
第6話のネタバレ感想
第5話のネタバレ感想
第4話のネタバレ感想
第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想

第12話が収録されている3巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。
双葉社講談社kindle



0 件のコメント:

コメントを投稿