2018年8月25日土曜日

私の少年 第5巻 第21話 穴(ネタバレ感想)

とうとう連載に追いついた。そして待ち遠しかった22話は明後日読める。幸せ。
でもネタバレ防止のため、22話について書くのは一週間後、ヤンマガが店頭から消えてからにしよう。

【ストーリー】
まゆの回想から始まる。
母との関係がギクシャクしている聡子。しかし何を聞いても「まゆには関係ないよ」と教えてくれない。
聡子が進学のため家を出る前日、母と喧嘩して泣いていた。しかしその理由を聞いても、関係ないよと教えてくれない。ずっと意地悪だと感じていたので、翌日病気のフリをして見送りに行かなかった。


それからまゆが専門学校を卒業した歳に、父は祖母の介護を理由に家に帰ってこなくなった。変わりに、母はよく人を呼ぶようになった。
その年のクリスマス、母が人を連れてきてホームパーティをする。その中のひとりが、トランプゲームの途中で手を握ってくる。トイレに逃げて、イライラのあまり壁を殴るまゆ。そこだけ変な壁紙を貼ってあるところは、剥がしてみると穴が空いていた。母の腰に男が手を回していたのを思い出し、聡子が母に男がいたことを知っていたのだろう、と気づく。聡子は、まゆに醜悪なものを見せないようにしていたのだ。


舞台は現在へ。
ルームシェアなんて無理だからね、と聡子。仕事とか彼氏とか、ちゃんと考えて物を言いなよ、お母さんはどうすんのよ、と聡子。別に大丈夫でしょ、なんか問題ある?とまゆ。問題と言うよりも、ひとりでやんなきゃいけないことがたくさんあるの、と聡子。例えば、と聞くが、まゆには関係ないことだし、と答えない。


翌日、二人で物件を見に行く。スイッチの位置、カビのあとなど、細かいところに鋭く気がつくまゆ。聡子が観察眼鋭いね、昔はぼんやりしていたのに、と言うとまゆは「もう二度とぼんやりしたくないって思ったから」と答える。
このFBIにかかればまくらくんの正体も一発、というと聡子は慌てて真修に何、と言いかける。やんなきゃいけないことってのも真修関係でしょ、禁断の年の差恋愛だから言えないよね、と茶化すと、聡子は真剣な目で「あんた 何言ってんの?」と唖然としたような、睨むような、驚いたような表情を見せる。真修は完全にそうなのにこの顔はなんだ、と驚くまゆ。


母親のことを聞くと、亡くなっている、と聡子。私は真修が、家族にしてもらえてないことをしてあげたかったんだと思う、と聡子。聡子は真修の母になろうとしているのか、自分が母からもらえなかったものを真修に与えて、与えることで真修から同じものをもらって、埋めあいっこしてるわけじゃないよね、とまゆ。聡子の表情が真剣なのを見て、話を切り上げる。
その気持はわかるけど、聡子が与えたい形と真修から帰ってくる形は笑えるくらい違う、それを無理やり埋めようとしたらどんどん隙間ができる、と思うまゆ。

次に見に行った物件では、WICに大きな穴が空いている。よりによってこんなものが、と思うまゆを知り目に、聡子は広さに目を見張る。眼の前の穴が目に入っていない。まゆに言われ得て初めて気づく。直さないで済むことはできないか、と意に介していない聡子。絶対キレイにしてもらったほうがいい、というまゆに聡子は、やらなきゃいけないことがあるからこんな穴なんかどうでもいい、と言い切る。


その姿を見てまゆは、聡子はずっと穴を見つめて生きてるのだと思っていたが、もう別の場所が映っているのだと知る。
ここで見たいものができた、だから一緒にいよう、とまゆ。

【感想・考察】
これまで断片的に匂わす程度でしかなかった、聡子の家庭環境が明らかになる。第1話で真修の母親のことを「いないことにしたい?」と思ったのは、自分自身がそうだったからなのだろう。
そしてまゆがFBIになった理由も明らかになる。自分自身に対する怒りもあるだろうけれど、聡子のことは本当に好きなんだろうなあ。

まゆに対し、仕事とか彼氏とかどうする、と言っているが、本当にどうするんだろう。そもそもまゆは今、仕事してるのだろうか。聡子が大学に進学する時中学生くらい、もしかしたら小学生かもしれないとして、せいぜい5歳くらいしか離れてなさそう。となるとまゆだってもう30近いわけだから、仕事はしているだろうに。大学院にでも行ってれば別だろうが、「専門学校を卒業」と言っているから、多分二十歳で就職したのだろう。高校は農業高校だし。最後に「仕事早く見つけなよ」と言われ、「履歴書の写真めっちゃ盛るから」と答えているから、今は仕事をしていないのか。仕事を持ってたら、辞めるという話が先に来るべきだし。

聡子と真修の関係を、茶化しながらでも正面から受け止めて、否定していないのがいい。恐らく関係性に理解があるのではなく、二人の人物を見て、変なことはしないと思ったのだろう。
しかし、まゆに恋愛感情を指摘されたときの聡子の表情が怖い。焦りは見えず、怒りと驚きが見える。他人からはそう見られる恐れのある関係であることを理解できない聡子ではないだろうに、この表情。自分自身が全く恋愛感情を持っていないから驚いたのか、まゆですら誤解していることに驚いたのか。いずれにせよ焦りの表情が見られないということは、逆に聡子には恋愛感情はないか、あってもごく小さなものなのか。これまで時折その感情を思わせる表情はあったが、どれもごく僅かな瞬間なので、聡子の中では真修は恋愛対象ではないのだろう。

逆に、母親になろうとしているのではないか、と言われたときの表情は真剣に考え込んでいるので、こちらはほぼ正解なのか。
おそらく自分でも整理できていないものの、そう説明するのが最も近いのだろう。
この短時間で、聡子と真修の感情を読み取るFBIっぷりは恐ろしい。

さて、聡子の言う「やんなきゃいけないこと」って何だろうか。
真修に別れを告げるつもりなら、そもそも東京に引っ越してこなくていい。今回のように、偶然会ってしまうリスクもあるわけだから、19話で決意した「さよならしよう」とは違うはず。
真修との関係をきれいにして、後ろ指を指されないようにしたいのだろうか。そうなると、どうやっても早見ともう一度話をする必要がある。しかし早見は大阪に単身赴任中なので、東京にいる意味はない。まあ、真修と交流するには東京にいるべきだから、話をつけたあとのことを考えて東京に出るのかもしれないけど。それにしても、それならそれで、早見と話を付ける前に真修との交流を再会するのは悪手の極みだから、違う気がする。もちろん早見に反対というか拒絶される可能性は小さくないから、そうなっても真修と交流を続けるという覚悟を持っている可能性もあるけれど、それは考えにくいなあ。それは、椎川を始めいろいろなところに問題を起こす可能性が高いことだから、聡子がそういう選択肢を取るとは思えない。あるとすれば、真修としっかり話をした上で、真修が成人するまでは交流が持てないと説得するくらいか。でもこれも、やはり東京にいるリスクは高いから、違う気がする。

こういうことを考えて、悶々としながら次の話を待てるのは幸せ。
途中から変な方向性で話が展開したり、あるいは無期限休載になったりとか、そうならなければいいなあ。

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