2018年8月20日月曜日

私の少年 第4巻 第16話 絆創膏(ネタバレ感想)

【ストーリー】
午前3時過ぎ、寝付けない聡子。お湯を飲もうとすると、母親が起きてくる。起こしてしまったかと声をかけると、いつもこれくらいに起きていると返ってくる。孫もいないのにもう老人、と言われてしまい、ごめんね、と返す。
八島からはなじるLINEが届いている。昨夜のことを思い出すと、真修の笑顔が浮かんでくる。たった2年であんなに成長するんだ、私は身長も声も変わっていないから、真修は私を見つけられたけれど、私は真修を見つけられなかっただろう、と思う。真修の2年を思う聡子。


真修はスマホを見てぼーっとして、なにか反応がある度に動揺する。しかし届くのは菜緒のLINEだったり、和樹からの連絡だったり。連絡しなくていいなんて言わなければよかった、と後悔する。

仕事から帰宅した聡子はぼーっとしている。まゆが話しかけても反応がない。顔の傷、跡のこんないといいね、と声をかけると、微妙に表情が変わる。なにか感づいたまゆ。
夜、聡子の部屋にプリンを持っていくが、聡子は寝落ちしている。スマホの充電を忘れているので繋げてやると、テーブルに貼り付けてある絆創膏を発見する。何この絆創膏、という言葉で聡子が飛び起きる。聡子の態度から、男の連絡先だと気づくまゆ。とりあえずLINEのIDから、「まくら」と呼ぶことにする。八島とこじれたのは絶対関係あるでしょ、と言うが聡子は否定する。まゆは顔写真あるかも、ID検索をしようとするが止められる。聡子の異様な態度に、日曜帰ってきてから変だというまゆ。怪我だらけで帰ってくるし、暴力かと思ったけどころんだだけだと言うし、その割に嬉しそうだったし、もう絶対まくら関連でしょ。既婚者じゃないことだけ確認すると、ハッピーになるものから距離置こうとする精神はどうかと思う、と言うまゆ。


まゆが出ていったあと、絆創膏を捨てようとする聡子。ふと鏡で顔の傷を見て真修の手を思い出し、ついID検索してしまう。出てきたのは早見真修という名前と、エー玉の写真。花火を思い出す。声も髪も目線もカバンも、2年前と何もかも違うのに。


真修が塾で授業を聞いていると、電源を切り忘れたスマホが反応する。見ると、聡子がLINEの友達を追加したというメッセージと、「こんばんは。」の一言。真修はこの上なく幸せな表情を見せる。


【感想・考察】
表情だけで言葉に出来ない感情をすべて表現している、素晴らしい回。特に聡子がエー玉の写真を見つけたときと、真修が聡子からのメッセージを読んだときの表情は絶品。表情だけでこれだけの感情を伝えてくる漫画は、他に知らない。でもエー玉の写真を見たときは、多分俺のほうが聡子より先に泣いた。

冒頭、「孫もいないのに」と言う聡子の母親は、もう八島が聡子の人生に登場することはないと悟ったのだろう。
その八島は絶望的に空気の読めないLINEメッセージを送っている。これはもう、逃げ出して正解。

真修のことを「あんなに成長するんだなあ」と思い返した時、真修に男を感じたのではないだろうか。もう子供ではなくなりつつある、とはっきり認識したと思う。

聡子からの連絡を待つ真修は、完全に虜になってしまっている。2年間思い続けて、諦めきれなかった聡子に再会できたのだから、今度は偶然ではなく連絡を取りたいと思うのはごく自然。ぼーっとしているところなど、恋してる状態に近いとは思うけれど、まだ自分では意識してないのではないだろうか。また会いたい、話したい、という感情が強すぎて、それ以上のことは考えていないのではないかと思う。

父親からばあちゃんあてに届いた荷物の宛名は「森倉」だから、母方の祖母だろう。方言からすると九州、博多あたりの人なのか。小学生時代、荒れ果てた家庭に応援がなかったのも、遠距離故か。それでも、自分の親ではなく、亡き嫁の親に子供の世話を頼むということは、真修は早見の血を引いていないということなのかもしれない。もちろん、早見の両親が既に他界しているとか、他の理由だっていくらでも思いつくけれど。真修母の名前は雪、そして母方の祖母は他界していることが、祖母の話からわかる。

真修の中学校は、国分寺市立南中学校。ということは、これまでの舞台も国分寺だったのだろうか。それとも引っ越したのか。聡子が帰宅するのにバスを使っていたということは郊外だろうから、ずっと国分寺かな。

聡子とまゆの夕食はレトルトパスタ。食後聡子が寝落ちしているのが20:32だし、二人共服が変わっているということは恐らく入浴後。そう考えると帰宅は決して遅くない時間だが、レトルトで済ませているということは、普段からちゃんと食事を作るという習慣がないのだろうか。そういえば、14話でもカレーを買って帰れと頼まれていた。

まゆのFBIっぷりは凄まじい。敵に回すと恐ろしい。聡子の表情の変化から、複雑な感情を見事に読み取っている。事情は知らないまでも、聡子の感情を後押ししているのは読者的にGJ。

真修がLINEの画像をエー玉にしたのは、どういう意味を込めていたのだろうか。
聡子との思い出で、形があるものはエー玉とサッカーボール。サッカーボールは別れの象徴になってしまったから、どちらか選ぶならそりゃエー玉だろうが、聡子と関係ないものを選んでいてもおかしくない。真修にとって、聡子との思い出以上に大切なものは存在しないのか、聡子が去ってから無味乾燥な毎日を送っていたのか、あるいは何かの表紙に聡子が自分の画像を見かけた時、すぐに気づいてくれるようにとの思いを込めたのか。冒頭にも書いたけれど、色んな思いが伝わってきて、これを見た瞬間泣けた。
2年前と何もかも違うのに、という言葉のあとに続くのは、変わらない思い、だろうか。真修が自分との思い出をどれだけ大切にしてくれていたのか伝わってきて、言葉に出来ないのだと思う。

最後の真修の表情も絶品。2年分の思いが報われた、と感じさせる。
菜緒が微妙な表情を見せているが、個人的には椎川と同じくモブ扱いなのでどうでもいい。椎川も菜緒も、年齢相応の相手で聡子と真修に想いを寄せてくる相手、という立ち位置なのだろうが、もうここまで来ると二人の間には誰か別の人物が入り込む隙間なんてない。

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第16話が収録されている4巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

双葉社講談社kindle

2 件のコメント:

  1. このラスト真修の表情は全真修で1番好きです。
    この世代の2年の重み、後悔、懺悔、思慕
    全て報われたような泣き笑いの表情。

    そりゃ菜緒もびっくりですわ

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  2. あの表情をまた見たいですよね。
    もう真修も、元に戻るのは難しいことをちゃんとわかっているはずですから、そこを乗り越えてこの表情が出てくる展開がほしいです。ホントに。

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