2018年8月22日水曜日

私の少年 第4巻 第18話 距離(ネタバレ感想)

【ストーリー】
真修からの「通話とかはできませんか?」とのメッセージに「もしかして何かあった?」と返す聡子。心配させてしまったかと思いつつ、「はい、ちょっと・・・」と返す真修。聡子はちょっと待って、場所移動するからと返信。嘘をついてしまったけど話せる、と真修。
車に移動した聡子から電話がかかってくる。心配する聡子に、実は何もなくて、と答える真修。何もないんならよかったが、こういう嘘はだめでしょうが、と聡子。真修が何か言いかけると、大きな声で呼ばれる。驚いた聡子に、ばあちゃんに怒られた、今は父が単身赴任してばあちゃんが来てくれている、と話す。ばあちゃんとは今までずっと会えなかったから、俺のこと小2とかだと思ってる、と真修。わかるわかる、最初に会ったときの年齢で時間が止まっちゃう、久しぶりに会うとこんなに大きかったっけ?・・・と聡子。聡子も自分が変わってて驚いたか、と真修。しばらく話をして、明日もまた話せるかと聞く真修。多分大丈夫と答える聡子。明るい表情の真修に対し、聡子の表情は暗い。


翌日学校で、菜緒に電話で話をしたことを告げる真修。もっと早くこうすればよかった、と礼を言う。学校では、今日は何を話そうか、と思いながら周りを見る。


夜、何時頃電話ができるかと聞くが、仕事で遅くなるのでまた今度、休みの日なら話せるかもしれないから、何かあったら連絡してみて、と聡子。
その後聡子から連絡はなく、悶々としながら過ごす真修。日曜日の夕方までボーッと過ごし、気分転換に図書館に行くが、臨時休館。帰り道、真っ暗な公園で子供を見かける。

手を洗った子供にハンカチを差し出す真修。なんとなく置いて帰りづらくなり、話しかける。お母さんと喧嘩して一人になった、帰りたくない、寂しくないと強がる子供。なんで泣いているの、と聞くが、泣いてないと強がる。正反対のことばかり言うなあ、と思いながら泣いている子供を見ていたら、聡子が泣いている姿を思い出す真修。


そこへ母親が戻ってくる。泣いて駆け寄る子供。母親は真修をじろりと見て、そしてポケットのハンカチを見つける。真修のものだと聞き、乱暴に押し付ける母親。帰るよ、と子供に言うと、子供は真修に駆け寄ってきて、「これあげる」とイクラのストラップを差し出す。懐かしく思い、つい聡子に電話する。


何かあったの?と聞く聡子に答えず、マグロのストラップを覚えているかと真修。サッカーの練習をした公園にいて、小さい子供に渡されて、懐かしく思ったと真修。回転寿司の思い出を語る。あの頃は寿司はよくわからなかったから何のストラップかわからなかった、聡子に言われて初めてマグロだと知った。何食べるか決めるときも、ポテトとかうどんばかりに反応していた。でも今は好きなネタも増えた、あの日はサーモンとたまごが美味しかったとか言ってたけど。
聡子の反応が鈍く、話題を変える真修。花火のことを話しかけるが、「もう切らなきゃ」と冷たく答える聡子。いつだったら話せるかと聞くが、聡子はもう連絡できないと答える。


真修のイメージから、聡子の顔が見えなくなる。聡子はどうして俺に優しくしてくれるのか、と聞く。優しくなんかしてないでしょ、今私が言ったこと聞いてた?と聡子。もう二度と連絡できない、と言いかける聡子を遮って、聡子は何でもないと言いながら泣いたり、猛練習はできないと言いながら髪を拭いてくれたり、さよならしたあとマフラーをまいてくれたりする人。だから今も、正反対のこと、嘘をついてるんじゃないかと真修。聡子はいつも俺に優しいと期待してしまう。会えただけでいいとか言っときながら、聡子にはわがままになる、と真修。

電話の向こうで涙を流す聡子に、真修は「会いに行きます」と告げる。

【感想・考察】
この話も、連載版と単行本では内容が変わっている。結構大きな違いなので、わざわざkindleで雑誌のバックナンバーを買ってしまった。

真修と連絡するのに慎重だった聡子が、真修が何かあったようなことを匂わせるとすぐに電話をかけてくるのは、「真修の平穏が最優先」という価値観じゃないだろうか。たとえ自分の立場が悪くなったとしても、真修は守らなくては、と思っている気がする。もちろん本心では真修と話がしたいし、だからこそLINEも登録してしまったのだろうけれど、大人として真修と連絡することを極力避けているはず。それでもやはり、真修が困ったのなら力になるべきだ、と思っているのだろう。
だからこそ、周囲に聞かれたらまずい話になる可能性を考えて、わざわざ車に移動したのではないだろうか。

聡子と話ができる、と思ったあとの真修の思考が、連載版と単行本とで変わっている。以下その違い。

連載版単行本

この変更はよくわからないなあ。連載版は、聡子が何故泣いたのかを気にしているけれど、単行本は一体何を聞こうとしているのかわからない。逆なら、連載だと意味不明だったので修正したとわかるのだが、どういう意図が込められているのだろう。菜緒の存在を強くアピールしたいのだろうか。

はじめての通話で、真修の家庭環境が聡子に伝わる。祖母が来ていると聞いて、聡子は安心したのではないだろうか。話し方がくだけてきて、自然な感じ。もしかすると、もう真修から手を離しても大丈夫、真修は年相応に生きていける、と感じ取ったのかもしれない。
最初にあった時の状態で時間が止まっちゃうと言ったのは、自分自身が真修に感じていたこと。その間真修は成長し、自分は外見上はあまり変わっていない。
このあとどの程度話をしたのかわからないが、真修の表情と翌日なおに話しかけたことからは、普通に会話できていたことが読み取れる。それだけに、また話したいと言ってきた真修に対し、聡子は離れるべきだと強く思い直したのかもしれない。

真修が学校で虹を見て、聡子と何を話そうか考えていると目が良くなる気がする、と思うのは、聡子がいない日常では周囲が見えていなかったことの裏返しだろう。父親との関係、小学生時代のクラスの様子を考えると、真修の世界は聡子がいなければ本当に無味乾燥だったように思える。聡子と出会えて真修自身が変わったことで、和樹のように声をかけてくれる友人ができたのではないだろうか。真修自身はあまり意識していないようだけれど。

ガンガン攻めていく真修に対し、聡子は距離を置く。強い拒絶の言葉を使わないのは、真修に対する思いやり以上に、自分自身の未練だろう。そうでなければそもそもID登録しないだろうし。まあしないと話が進まないんだけど。

連絡したい、話をしたいと思いつつその口実を探したり、連絡が来ないと悶々としたり。これは誰がどう見ても恋だなあ。俺にもそんな時期があったような気がする。
季節感は違うし、こちらは「めぞん一刻」の主題歌だけど、村下孝蔵の「陽だまり」が頭の中で流れて消えない。

この場所から遠く空を見て ああ君に会いたい 今すぐに声を聞きたい
早く会いたい たった一言 心から叫びたいよ きっといつかはめぐりあい 結ばれると信じていたと


公園で泣いている女の子を見て聡子を思い出すのは、第15話と同じく、最初から聡子を頼りになるお姉さんではなく、一人の人物として見ていたからなのだろう。ある意味、真修は最初から聡子に母性ではなく、恋愛感情を持っていたのだろうか。違うと思うがなあ。
母親の失礼な態度は、世間一般ではそう見られる関係性だということ、聡子が真修に声をかけたのもリスクのある行動だった、と真修に暗に教えているのだろう。真修がピンときた感じはしないけれど。

2度目の電話、聡子はちゃんと出るが、最初の言葉はやはり「何かあったの?」と、真修を心配している。逆に、何もなければ話をしない、という意思表示だろう。それにもめげず話し続ける真修がいじらしい。

そしてここからがまた、連載版と単行本とで大きく変わっている。この修正は大きい。
連載版は、泣いている女の子を見て聡子を思い出した、なんで泣いていたのか聞きたくなった、と言う。それを聞いた聡子は涙をこらえながら、真修との日常を思い出していた、楽しかった、でももうこんなことを思い出しちゃいけない、と言う。


帰り道のたった1回だけの会話、えびがおいしかったということを今でも覚えている聡子。
聡子の気持ちも真修のそばから離れていないことがはっきり伝わり、それに真修が勇気づけられて、また恐らくは聡子のためにもなると思って、会いに行きますと言うのがとても格好いい。惚れる。

ところが単行本では、真修が一方的に聡子への思いを語っているだけ。聡子は涙を流しているけれど、それが真修に気取られているかどうかはわからない。


どっちもアリだとは思うけれど、連載版のほうが二人の感情が見えて好きだなあ。
どうでもいいことだとは思うけれど、聡子の服が変わってるのはなにか理由があるのだろうか。

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第18話が収録されている4巻はこちら。ちなみに連載版を読みたければ、月刊アクションのkindle版バックナンバーを買うしかない。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。

双葉社講談社kindle月刊アクション

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