なのでもう、いっその事1話ずつストーリー、感想、考察なんかを書いてしまおう。
ちなみにこれを書く時点で、既に21話まで発表されて読んでいるので、読み返した後の感想ということで。
2018年8月現在、pixivコミックで4話までは無料で読めるので、読んだことがない人はぜひ読んでみてほしいなあ。
【ストーリー】
膝の上には 美しい少年がいる
わたしは あれから
息を してるあいだ ずっと
この子ばかりを 思ってしまう
詩的なモノローグから始まるこの作品は、その後ろに「30歳OLと12歳小学生」という、ひと目でいびつと分かる年齢が書かれている。
今年で30歳を迎える多和田聡子の朝は、体温を測ることで始まる。
記録を取っているわけでもない、特に意味のない行為なのに、なんとなく続けてもう8年。
バスを待つ間、向かいの公園でリフティングの練習をする小学生を見て「上達しないなあ」なんて思ったりする。聡子は学生時代フットサルをやっていたのだ。
会社では、学生時代の恋人であった上司の椎川が、「聡子、聡子」と呼び捨てにしてやたらと絡んでくる。周囲には「二人はアリだと思いますよ」と言われるが、実際あって1年で別れた経験がある。
ストレスを溜め込んで、仕事帰り公園でビールを飲んでいたら、サッカーボールが転がってきた。見ると、朝練習していた子だ。つい勢いで、リフティングのコツを語り始めてしまう。尊敬の目を向けてくるのは、息を呑むほどの美少女。近所にこんな子がいたのか、と驚いて「女子サッカー部とかなの?」と聞いてみると「俺、男です」と。
翌日。少し家事をして休憩のつもりが、夕方まですっかり寝てしまった聡子は、昨日買ったビールを公園に置き忘れたことに気づく。もうないだろうなあ、と思いながら公園に行ってみると、昨日の少年が不審な男に手を引かれているのを見て、とっさに声をかけてしまう。
危ないから暗くなるまで練習してはいけない、と語るが、家で練習すると怒られるし、来週レギュラー選抜の試験だから、、、と悲しそうな少年、早見真修12歳。仕方ないので、一緒に練習しよう、と言ってしまう。毎日19時に駅前集合で。
翌日から必死に仕事を定時で切り替えて、真修と練習する聡子。遅くなってしまったとき、真修がご飯を食べていないことに気づいて「お母さんに怒られたらごめんね」と言うと「大丈夫です 母さんいないから」と。「父さんもまだ 仕事終わってないから」という真修から、複雑な家庭環境を想像するが、聞くわけにも行かず踏み込めない。
会社では相変わらず椎川が、意味ありげに誘ってくる。お互い仕事の愚痴をこぼすのは不毛だ、という聡子に「フモーじゃなければいいの?」と。真剣な目で言ってくる椎川に、翌日ならと答える聡子。真修との練習は今日までだ。
翌日。特別なことはしないように、と逆に意識する聡子。期待なんてしないんだ、と自分に言い聞かせて指定の店に行けば、そこにいたのは椎川とその婚約者。あまりの仕打ちに、虚しさと悲しさで頭が一杯になる。
ぼんやりと帰っていたら、なんとなく昨日までの公園に立ち寄ってしまう。そこには真修がいた。
一人できちゃ駄目だと言ったじゃないか、という聡子に、真修はレギュラーになれなかったと答える。聡子に教わったリフティングは2位だったけれど、紅白戦で何度もミスをしてしまったと。まだ小6なんだから、これから練習していけば中学生になれば、と言いかける聡子に真修は、いまレギュラーになれないなら向いてない、意味のないことを続けても虚しいから辞める、という。その表情は暗い。その評定に聡子は、今まで気づかないふりをしていたことに気づく。これは親の言葉だ。
改めて見ると、真修の服は昨日と同じ。風呂にも入っていない。つい家に上げて、風呂に入れてしまう。人の家の子を勝手に上げるのはどうなのか、と思いつつも、風呂にも入れないなんて・・・とも思う。
真修が風呂に入っているあいだ、聡子は飲みすぎていたのか、ウトウトしてしまう。
風呂から出た真修に声をかけられ、驚いて起きる聡子。とっさに体温計を探し、具合でも悪いのかと聞かれる。そうじゃない、ただの習慣。意味なんてないのに、と答える聡子。なぜかと聞かれ、自分でも答えられないが、はじまりだけは鮮明に覚えている。
未練なんてないのに、椎川も自分と同じ気持ちを持っているのだとずっと思っていた。それが手ひどく裏切られたことに、思わず涙がこぼれてしまった聡子を、真修はそっと抱き寄せる。悲しい時は人の胸の音を聞くといい、と。
聡子は真修に語る。はじまりは何でも、続けてきたのは自分の意志だ。終わらせるのも自分でいいのだ、と。真修はこらえきれず、本当は辞めたくないのだと泣き出してしまう。聡子は真修をそっと抱きしめる。
翌朝。真修は気持ちのいい笑顔で、「また サッカー 教えてくださいっ」と頼む。「いいよ」と答える聡子。廊下を歩く小さな足音だけ、体温計の音が聞こえない、静かな朝だった。
【感想・考察】
最初に19-21話を読んでからだったので、読み始める前は「痛い恋愛もの」だと思っていたが、大違い。
ドライには書かれているが、29歳(後ほど誕生日は10/21と判明するので)の聡子が8年間引きずっていた心の傷を容赦なくえぐる椎川がヒドイ。このあとは常識人代表のような立ち位置で登場するだけに、意味ありげに誘っておいて婚約者を紹介するというやり口は、あまりにひどい。だからこそ気丈に振る舞っている聡子の心が折れて、真修が入ってくる余地が生まれたのだから、必要な描写なんだろうけれど。
※年齢訂正。「今年30歳」と書いてあるが、「既に30歳」だろう。でないとこのあと辻褄が合わなくなる。
聡子が毎日違うジャージを着ているところを見ると、恐らく運動する習慣はあるのだろう。たまにしか運動しないのなら、せいぜい1-2着だろうが、少なくとも4着は持っている。3年やっていたとはいえ、8年のブランクがあるにしてはボールの扱いが上手いように思えるので、それなりに運動をしているのだと思う。まあスポーツ用品メーカー勤務だし。
真修の性格も、第1話からよく描かれている。まっすぐな心を持ちながら、人にやさしくされた経験に乏しいことが読み取れる。それだけに、無償の優しさを向けてくれた聡子に対し、心を開いたのだろう。そして真修も、人が傷ついている時は自分ができることをする、それを素直に表現する優しさにあふれている。「母親はいない」といいながら、母に言われたことをとっさにできる真修は、母親以外から優しい気持ちを向けられたことがなかったのではないか、とすら思う。
真修の優しさは、極端な言い方をするとマザーテレサの愛に近いのではないかとすら思う。不審者に声をかけられたときも、気分が悪いと言われたのを真に受けて、なんとかしてあげようと思っている。聡子が涙を見せた時は、悲しみを癒やすために自分にとって自然な行動をすぐに取る。そこに一切の打算はない。ただしこの段階では読み取れないが、聡子が涙を見せたことは、真修にとって特別な出来事だったのだ、ということは後で分かる。
あちこちで言われているけれど、サッカーを教えるまではいいとして、家に連れてくる、まして風呂に入れるというのは、性別が違えば普通に犯罪扱いされる。いや、違わなくたって普通に事案扱いされておかしくないだろう。それでも、「この状況ならそうしただろう」と思わせる描き方は素晴らしい。
聡子が基礎体温を測っているきっかけは何だったのだろうか。
「椎川の子を妊娠したことがある、わかったのは別れたあと」という考察をどこかで見たが、多分違うのではないかな。だとすると、きっかけとして幸せそうな二人の姿が出てくるはずがない。むしろ後悔している姿だと思う。
それよりも、妊娠しないよう気をつけてセックスする、ずっと関係を続けていきたい大切な相手だった、ということなんではないだろうか。「もともとそんなに好きじゃなかった」と何度も言い聞かせているが、実際にはそうではなく、自分の感情に素直に向き合えてなかったのではないだろうか、と思う。そして恐らく、椎川が聡子のはじめての男で、そして唯一の男だと思う。
その呪縛は、真修を泊めた翌朝、解けたような描写。目覚めたとき最初に「真修?」と気になり、そして使うことのなかった体温計が置いてあった。
第25話のネタバレ感想
第24話のネタバレ感想
第23話のネタバレ感想
第22話のネタバレ感想
第21話のネタバレ感想
第20話のネタバレ感想
第19話のネタバレ感想
第18話のネタバレ感想
第17話のネタバレ感想
第16話のネタバレ感想
第15話のネタバレ感想
第14話のネタバレ感想
第13話のネタバレ感想
第12話のネタバレ感想
第11話のネタバレ感想
第10話のネタバレ感想
第9話のネタバレ感想
第8話のネタバレ感想
第7話のネタバレ感想
第6話のネタバレ感想
第5話のネタバレ感想
第4話のネタバレ感想
第3話のネタバレ感想
第2話のネタバレ感想
第1話のネタバレ感想
第1話が収録されている1巻はこちら。
19話から月刊アクション(双葉社)から週刊ヤングマガジン(講談社)に月イチ連載で移籍した関係で、4巻までは双葉社と講談社の両方から出ているが、カバーデザインも収録内容もすべて同じだそうで。
双葉社 | 講談社 | kindle |
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