「渋滞学」を専門にしている著者の研究室に訪れた、12人の高校生に対する講義を書籍化したもの。実社会で数学がどのように応用されているのかを語っている。
応用というのは、例えばコンピュータの基礎理論がこうだとか、構造力学で使用する数学だとか、そういう意味ではない。本書で紹介している事例をざっと並べると、だいたいこんな感じ。
- 最短経路の求め方(微分)
- カードマジック(群論)
- ひき逃げ犯目撃証言の信頼性(確率)
- 波の変化(三角関数と微分方程式)
- 囚人のジレンマ(ゲーム理論)
- 解けない問題(不完全性定理、組み合わせ爆発、カオス、矛盾)
- 津波警報(ソリトン理論)
- インクジェットプリンタのチューブ設計(ソリトン理論)
- 電波塔の最適配置(セルオートマトン)
- 渋滞学(セルオートマトン、微分方程式)
まあ三角関数と微分方程式は、ほぼすべてのジャンルに絡んでくるのだけれど。
それぞれの分野について深く掘り下げるのではなく、解決の根本には数学的発想がある、あるいは数学的アプローチで問題解決を試みるといった内容。対象はどうやら高校一年生っぽく、まだ微積分を教わっていないようなので、数学的に深く突っ込んだ話はしない。考え方について語っているだけなので、数式を飛ばしてもちゃんと理解できる内容。もちろん数式を追うとより深く理解できるのだろうけれど、そこまでして読む必要はないと思う。
面白かったのは、セルオートマトンってちゃんと応用できるんだな、と感じたこと。ライフゲームとか知ってるけど、「面白けどだからなに?」という存在だったのが、ちゃんとそれを応用して社会的な問題にアプローチできることを知った。数学者ってややこしい数式をこねくり回して、「この数学が実際に役立つのは200年後」とか言ってるイメージがあったのだけれど、そうでもないのね。いやもちろんそういうジャンルもあるだろうけど、実社会への応用をメインに考えるのは、数学者ではない別のジャンルの人達かと思ってた。
ちなみに本書に登場する高校生は、都立三田高校だとか。調べてみると現時点で偏差値は64。超エリートとまでは行かないけれど、まあエリートたちだろうね。地方(山口県とか・・・)だと県下トップクラス。都内だと80番台とかになってるけど。
こういうエリートたちではなく、偏差値50-55くらいの高校生相手だったらどういう内容になったのか、少し気になる。
単行本 | kindle |
にほんブログ村書評・レビューランキング
0 件のコメント:
コメントを投稿