【感想・考察】
これまではっきり描写されていなかった、聡子と真修の家庭環境が明らかにされてきた。
されてきたのだが、これまでの内容から違和感をおぼえることもあり、まだ読みこなせていない。
聡子母、仮にK子としておこう。
K子の思考回路がわからない。前回の引き、「娘に何してんのよ」のあと、聡子を問い詰めるのがまず意味不明。その後、八島を家に上げているのに至ってはもう、どういう展開になったらそうなるのか想像もつかん。達郎だっているんだから、家じゃなくてせめて外の店だろう。「外でする話じゃないから」とかの展開なんだろうが、聡子もまゆもあの流れなら大反対だろ。まあ、話を聞かない性格、というのを描写したのだろうけれど。
その後の話でも、全面的に八島の味方をしている理由がわからん。聡子の話を全く聞いてないじゃないか。
聡子のことを「本当にお父さんの子どもだわ」というK子、父親からは「男性関係で問題を起こすとは母さんの子どもなんだな」といわれる。つまりどっちからも、(血縁はともかく)自分の子ではない、と言われているに等しい。聡子には、理解してくれる人がいる、帰るべき家はないという描写なんだろう。唯一理解を示し、少なくとも敵ではない存在のまゆは、一年後にいなくなることが明言されているわけだし。
真修父の描写はもっと謎。
家庭のことには全く関心がないような反応なのに、「家が乗っ取られてる」とかこぼす。いやお前、乗っ取りを心配するほど自分の世界作れてなかっただろ。混沌が自分の世界とでもいわない限り。
真修に対する態度も、「義理の息子」に対する態度にしか思えない。
今回一番の謎がこれ。
真修が「遼一のお母さんも野菜って苦手だった?」と聞いているから、真修と遼一の母親は別人であろうことが暗示されている。
元樹がゆきを思い出して、真修は「本当に母さんの子どもなんだな」と言っているから、真修の発言と併せて、二人にとって単に母さんという表現をしたときは、ゆきのことを指していると思われる。家に仏壇があったし、そもそもゆきの母親がばあちゃんとして来ていることを考えると、元樹の最後の妻はゆきなんだろう。
しかし、26話「告白」では、遼一が幼児の頃の写真が登場している。乳児といってよさそうな年頃。真修は3~4歳位か。もしもゆきが遼一の母親でないのだとしたら、元樹は何らかの事情で前妻と別れ(最短だと、遼一母は遼一を生んだときに落命したのかもしれない)乳児の遼一を連れてゆきと再婚したのか。どんな別れ方であれ、そんなにすぐ再婚できるほど割り切れるものなのか。
真修も当時は元樹によく懐いているような写真。持ち前の素直さで、ゆきがいた当時は元樹にも心を許していたという描写(そしてゆきが亡くなってから、元樹との関係が崩れていったという暗示)なのかもしれないが。
だが同じく26話のばあちゃんの反応では、遼一もゆきの実子に思える。
仮に、真修がゆきの連れ子で、遼一は元樹とゆきの間の子だとすると、真修の発言が意味不明になる。
しかし、牛乳を買うときの描写に遼一が存在しないことを考えると、恐らく遼一はゆきの子なのだろう。ゆきの実家は遠方だし、元樹の実家も乳児の遼一を預けられるほどの近くとは考えにくい。だとしたら、現在ばあちゃんではなく、元樹の実家にヘルプを頼んでいておかしくないし。この当時もばあちゃんが来てくれていた可能性もあるが、「ゆきがいたころはたくさん写真を送ってくれた」という発言をしていたから、恐らくあまり一緒にはいなかったのだろう。
結局遼一の母親は誰なんだ。納得できる解釈が思いつかん。
今回のテーマは、聡子も真修も、家は帰るべき安住の場所ではないということなのだろうか。
ふたりとも、親から子ども扱いされ、それに反発している。それに、子ども扱いしていながら、子供のことを理解しようとしていないことも共通。
【追記・訂正】
真修は元樹に声をかけているから、真修は家族も大切にしたいのかもしれない。親から自由になろうとする聡子と、親とともにいたい真修の対比なのかもしれぬ。
【追記終わり】
つまり、ふたりともお互いを必要としている、ということなのだろうな。
それはそれで説得力のある話なんだけど、個人的には「選択肢は他にもあるはずなのに、自分たちの意思で一緒にいることを選ぶ」という展開になってほしいなあ。現状だと、一緒にいる以外は心の安寧が保てない環境なんだもの。
あくまで個人的な意見なので、もちろんそれを望まない人も多いだろうし、高野先生はきっと別なことを考えているのだろうけれど。
もう一つ気になったのが、聡子の「結婚も妊娠も選択していい歳なんでしょ」という独白。
女性の感覚はわからないんだが、「妊娠」っていう表現使うかなあ。「結婚も子どもも」と言わないのかな。基礎体温を測る描写の伏線はまだ回収されていないし、聡子は妊娠した経験があるのだろうか。ないと思ってるんだがなあ。
最後に、結婚詐欺動画は予想外に、和樹が最初に発見。真修ではないと思ったが、和樹だと聡子のことを知らないから話は広がらないと思っていた。まさかモノマネとは。
そして多分、次回は真修が聡子にLINEを投げても既読がつかず、電話をしても繋がらず、悶々とするのだろう。聡子はスマホを壊しちゃったからもうコンタクト取れないし。いや画面割れただけかもしれないけどね。
おまけにどうでもいい話、聡子の泣き顔が「ちいさい女の子のよう」に見えた。意図的な描写なんだろうか。
32話が収録されているヤンマガはこちら。