聡子にとっても真修にとっても、止まっていた時間が一気に動き出した感じ。
お互いのことしか頭になかった時間が、社会の中でお互いの存在を大切に思う、そういう時間に変わっていく様子が描写されている。
クリスマスパーティでプレゼント交換することになったが、真修に喜んでもらえるものをあげたいので相談に乗ってほしい、という菜緒。「くじで相手を決めた」という発言を聞いてホッとしている自分に少し呆れているが、この時点ではまだそれ以上の描写はない。真修の友人関係を知りたいと思いつつ買い物に付き合う聡子は、菜緒の見せる反応から恋心を感じ取る。そして、自分には踏み出せずにいる一歩を踏み出している姿を見て、嫉妬しているのかな。
アクセサリーに使う石にターコイズを手にとったのは、それまでの2年で真修がそう思わせる言動をしていたのだろうか。聡子が手にとったのかとも思うけど、ちょっとわからないな。
帰路、真修の周りのことを「知ってしまった」と表現している聡子は、真修が自分にはもう過ぎてしまった青春の只中にいることを改めて自覚したんだろう。痛い、とこぼしているのは、真修にこうあってほしいと思うことと、自分がこうなりたいと思うことが噛み合っていないことに気づいているからじゃないだろうか。
そこに真修からのライン、「ダメなところを思いつかないので聞いていいですか」って、それ聞いちゃダメな奴だから。
自分のだめなところをつぶやく聡子、靴下が左右バラバラなんてしょっちゅう、とかいいつつブーツは脱ぎっぱなし。これはいいのか。
あれこれ悩まないでプレゼントでも買ってしまえばよかったかも、なんて思っているが、どういう口実でプレゼントを渡すつもりなのか。クリスマスに会うことを自分から断ったのに。
そして真修の近い将来、おそらくは高校生になった真修とその隣りにいる菜緒を想像して、変な声を出している。プレゼント選びのときには自然な想像だったのに今度は声を上げているのは、真修が相手の方を向いているからだろうか。
買い物中 | 帰宅後 |
気になったので第10話を読み返してみたら、ここの将来像でも(ハッキリとは書かれてないけど)真修は聡子の方を見ているのだな。
プレゼント選びのときは、真修が菜緒に意識を向けることを考えていなかったけれど、冷静になってそれに気づいたということか。
ついでに10話のそのシーン(聡子が真修の未来を想像するところ)で、よく見たら聡子は少し目に涙を浮かばているのね。
クリスマスパーティでは周囲のことなど全然見てなくて聡子のことばかり考えている真修と、そんな日に歯医者通いという思い切り日常を過ごしている聡子。一応真修のことを考えてはいるけれど、菜緒に対する真修の反応はどうだろうとか、そういうことは一切期にしている素振りはない。もう忘れちゃったのか。
聡子のことが気になりすぎて、パーティの途中で帰ってしまう真修に対し、駆け寄ってプレゼントを渡す菜緒。周りから見てもバレバレの好意に、他人事のような真修がいい。菜緒はスパイスではあるけれど、真修の心が動くことなんてきっとないから、早く見切りをつけたほうが傷が浅くて済むよ。
結局わざわざ三鷹まで、聡子がいるとも限らないのに駆けつけた真修。聡子は真修をすぐに発見し、真修もすぐに聡子を発見する。それは、お互いが相手のことしか見えてないから。
ここから背景の描写が消えるのは、高野先生のtwitterによると、周囲が見えていないことの暗示らしい。
幸せな二人だけの世界は、真修の世界を閉じることで生まれる世界と認識した聡子は、「一番だめなところ」と考えている。どういう意味だろう。
素直に読めば真修を独占しようとしてしまう、という意味に思えるけど、その後の言動を見ていると「自分の感情に素直じゃない」ことがダメなところだと考えているのかもしれない。
駆け寄ってくる真修に、私ばかり見てちゃダメでしょ、もっと周りも見ないと、と諭す聡子。
真修のことを見てくれる人を大切にしなさい、と言い聞かせ、次は聡子から連絡するからと約束して別れる。その後姿を見て、私は真修の世界を開いていきたいんだ、と考える、その時真修の周りに風景が見えているけれど、聡子の周りにはない。真修から再び電話がかかってきて、後ろを見てください、と言われるまでクリスマスツリーの存在にすら気づいていない。真修の周りには目が行くようになっても、自分の周りには目が行っていなかった、という演出なのかな。
真修の世界を開いていきたい、という前段に、真修に会いたいと思っている人のことをちゃんと見てあげて、と言っているのは明らかに菜緒のことを指しているのだろう。聡子は、真修と菜緒の関係がどうなってほしいと思っているのだろうか。
おそらくは、今真修が聡子のことを好きなのは聡子以外が見えてないからであって、聡子以外の女性もちゃんと認識した上で、それでも聡子のことを好きでいてほしいんじゃないだろうか。「男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる」という言葉もあるくらいだし。そこまで考えてないかもしれないけど。
ちゃんと見てあげてと言われて不満げな真修は、これをくれたのが聡子だったら良かったのに、とか思ってるんだろうな。
今回は結構キリがいい終わり方だけど、次回どこから始まるんだろう。
一気に高校生という予想もあるみたいだけど、まずは正月をどう乗り切るかというのは結構重要だと思う。真修父は帰省してくる可能性があるし、そうなると少なくともばあちゃんは真修父に聡子のことを話す可能性が高い。真修が口止めしていれば別だけど、真修はまだ聡子が仙台に行った理由を知らないのだから、口止めするかなあ。となると、聡子としては年内の早いうちに真修と話をして、少なくとも聡子と会うためには聡子の存在を秘密にしておくべきことを伝えなくてはならない。あるいは隠さずに、父と対峙するか。どちらの判断をするにしても大きなポイントだから、ちゃんと描くんじゃないかなあ。真修が高校生になるまで父親が帰宅しないとも思えないし。真修にどう伝えて、そしてばあちゃんにどう話をするのか、これが次巻のポイントじゃないかなあ。時系列的には次の話で取り上げられるタイミングだけど、そうなるとせっかく温かいムードで終わった6巻から、7巻はいきなりハードモードでのスタート。電話があって「正月も忙しくて帰れないって」とかばあちゃんから聞いて、その後真修が菜緒の気持ちに気づく(そして遅かれ早かれ振る)という展開かなあ。
28話が収録されているヤンマガはこちら。
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