10点満点で、6点。
軍事ジャーナリスト(戦場カメラマン)の著者が、戦場取材の現場を語った本。あとがきに、「戦場取材のノウハウは、フリージャーナリストにとっては企業秘密」と書いてあるが、本書を読む限りまさにそうなのだろう。ろくすっぽ海外に出たことがない身としては、旅行代理店で往復パックのチケットを買う以外に、どうやって海外に出ればいいのか(そしてなにより、どうやって帰ってくればいいのか)わからない。大体、入国審査で目的やら滞在場所やら期間やらを書くのに、どうやって「あっちの国が面白そうだから行ってみよう」とか動けるのか、さっぱりわからん。
著者は本来、兵士として戦場に出たかったようだ。日本人としてはかなり珍しい部類だろうね。しかし、「目が悪い」という理由で軍に向かないことを悟り、「せめて戦場に近づける仕事」と、紛争地での工事を請け負っている建築会社に入社する。酔狂というか、なんというか。
(どうでもいいが、友人が在籍したことのある会社だ)
それでも諦めきれず、フランス外人部隊を目指して退社。視力を理由に断られ、スペイン、アメリカとわたってなお挫折。仕方ないからとりあえず戦場にだけは行こうと中米に足を運び、そこでジャーナリストという職種に気づくという、相当の変わり種。しかしプレスカードを持っておらず、出版社の依頼状も持たないため、プレスカードを入手するところからして波乱万丈。
そんなドタバタを繰り返しながら、中米、アフリカ、欧州、中東、そして北朝鮮にまで足を運ぶ。元々が兵士志望だったせいか、兵器の危険性や生き延びるための知識などは豊富なようで、何度も危険に遭遇しながらも生還している。
(時折フィルムを没収されたりしているけど)
地雷原の恐怖、ジャングルの虫、諜報機関による逮捕(拷問まではされていないらしい)などなど、綺麗事ではない戦場の雰囲気がよく伝わってくる。
しかし、本書のターゲットって、幅が狭いだろうなあ。
軍事に興味がある人からややずれているし、政治的なことはあまり触れていないし。俺は面白いと思ったけれど、ストライクゾーンが狭い本だと思う。
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2011年8月21日日曜日
2011年8月15日月曜日
023 / 389 豚のPちゃんと32人の小学生
10点満点で、8点。
小学4年生から6年生の間、豚を育て、そして食肉センターに送るまでの「命の授業」をした記録。
考えさせることも多く、「良い授業」だとは思うが、「素晴らしい授業」だとは、手放しで言えないと感じている。
それは、この教育を主導した教師(本書の著者)の、確固たる意志が感じられないことによるものだと思う。難しい題材だけに、教師自身も悩みぬいたことは読み取れるが、それだけに覚悟なくして子供たちを巻き込んでしまったように思えてならない。
結果としては良い授業になったと思うが、それはあくまで結果論。展開次第では、子供たちに深い心の傷を負わすだけの授業になってしまったリスクも高かったと思う。何を考えさせるのかきちんと考え、道を外れそうになったらどうするのか、少なくとも指導者の側がぶれてはいけなかった題材だと思う。
生き物の命を奪い、食べるということについて深く教えることについては異論がない。必要だし、素晴らしいことだと思う。しかしそれだけに、取り扱いには注意が必要だとも思う。結果としてうまく行ったが、毎回こういくとは限らない。だからこそ、この授業は継続されていないのだろうな、とも思う。
どうでもいい話だが、俺は魚釣りが大好き。
家庭の事情により現在は行っていないが、事情が許せば毎日だって行きたい。
しかし、海釣りは大好きだが、川やダムなどの淡水はあまり好きではない。それは、釣った魚を食べるか否かによる。淡水魚だって食えるが、臭みがあってあまりうまいとは思わないからね。
命を相手にする遊びだから、命を奪う遊びだから、釣った魚は食べてやりたい。
本質的には同じ事なのかな。
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小学4年生から6年生の間、豚を育て、そして食肉センターに送るまでの「命の授業」をした記録。
考えさせることも多く、「良い授業」だとは思うが、「素晴らしい授業」だとは、手放しで言えないと感じている。
それは、この教育を主導した教師(本書の著者)の、確固たる意志が感じられないことによるものだと思う。難しい題材だけに、教師自身も悩みぬいたことは読み取れるが、それだけに覚悟なくして子供たちを巻き込んでしまったように思えてならない。
結果としては良い授業になったと思うが、それはあくまで結果論。展開次第では、子供たちに深い心の傷を負わすだけの授業になってしまったリスクも高かったと思う。何を考えさせるのかきちんと考え、道を外れそうになったらどうするのか、少なくとも指導者の側がぶれてはいけなかった題材だと思う。
生き物の命を奪い、食べるということについて深く教えることについては異論がない。必要だし、素晴らしいことだと思う。しかしそれだけに、取り扱いには注意が必要だとも思う。結果としてうまく行ったが、毎回こういくとは限らない。だからこそ、この授業は継続されていないのだろうな、とも思う。
どうでもいい話だが、俺は魚釣りが大好き。
家庭の事情により現在は行っていないが、事情が許せば毎日だって行きたい。
しかし、海釣りは大好きだが、川やダムなどの淡水はあまり好きではない。それは、釣った魚を食べるか否かによる。淡水魚だって食えるが、臭みがあってあまりうまいとは思わないからね。
命を相手にする遊びだから、命を奪う遊びだから、釣った魚は食べてやりたい。
本質的には同じ事なのかな。
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2011年8月13日土曜日
022 / 388 エレクトリックな科学革命
10点満点で、8点。
何気なく手にとった本だが、大当たりだった。
電気技術のうち、主に通信と無線、いわゆる弱電に焦点を当てている。照明はエジソンのエピソードでいくらか語られている程度、動力についてはほぼ触れていない。
技術そのものというよりも、その開発に貢献した科学者、技術者のエピソードを中心に語られている。電信技術の基礎を開発したヘンリー、その成果を掠めとったモールス。自らの知識と技術を惜しみなく伝えたヘンリーは最高の科学者として尊敬され、他人が開発した技術の特許をとって財産を築いたモールスは、引換に死ぬまで特許訴訟を抱え続けて尊敬されなかった。
(ヘンリーはインダクタンスの単位としても名前を残している)
このほかもエジソンを始めとして、著名人のエピソードは、なかなか面白いものが多い。多くの場合、知名度の高い人物については、従来のイメージを覆すような悪いエピソード(エジソンは他人のジャマをすることで財産を創り上げたとか、ショックレーはトランジスタ発明の名声を奪い取り、彼を嫌った技術者たちによってシリコンバレーが創られたとか)が紹介されている。反面、電気技術では重要な貢献をしながら、一般的な知名度の低い人物については、親しみの持てるエピソードを多く取り上げている。
解説は丁寧なので、電気に対する知識が少なくとも、読むことについてはあまり支障がないだろう。
それでいて実はかなり深い解説をしていたりするので、真剣に読めばさらに得るものも多い。電気技術について語られた本で、電気と神経の関係にまで語った本なんてそう多くはないだろう。異色の本。
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何気なく手にとった本だが、大当たりだった。
電気技術のうち、主に通信と無線、いわゆる弱電に焦点を当てている。照明はエジソンのエピソードでいくらか語られている程度、動力についてはほぼ触れていない。
技術そのものというよりも、その開発に貢献した科学者、技術者のエピソードを中心に語られている。電信技術の基礎を開発したヘンリー、その成果を掠めとったモールス。自らの知識と技術を惜しみなく伝えたヘンリーは最高の科学者として尊敬され、他人が開発した技術の特許をとって財産を築いたモールスは、引換に死ぬまで特許訴訟を抱え続けて尊敬されなかった。
(ヘンリーはインダクタンスの単位としても名前を残している)
このほかもエジソンを始めとして、著名人のエピソードは、なかなか面白いものが多い。多くの場合、知名度の高い人物については、従来のイメージを覆すような悪いエピソード(エジソンは他人のジャマをすることで財産を創り上げたとか、ショックレーはトランジスタ発明の名声を奪い取り、彼を嫌った技術者たちによってシリコンバレーが創られたとか)が紹介されている。反面、電気技術では重要な貢献をしながら、一般的な知名度の低い人物については、親しみの持てるエピソードを多く取り上げている。
解説は丁寧なので、電気に対する知識が少なくとも、読むことについてはあまり支障がないだろう。
それでいて実はかなり深い解説をしていたりするので、真剣に読めばさらに得るものも多い。電気技術について語られた本で、電気と神経の関係にまで語った本なんてそう多くはないだろう。異色の本。
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