10点満点で、8点。
1984年のUWFを読んで興味を持ち、著者の作品をチェックしてみることにした。まずは本書から。
期待以上に面白い。クラッシュ・ギャルズの活躍した時代に小学生だったので、よく覚えている。実際にテレビで試合を見たことはないけれど、テレビそのものにはたくさん出ていたので、試合映像も流れていた。特に理由もなく、ライオネス飛鳥のほうが好きだったのだが、人気は長与千種のほうが圧倒的だったのね。
全女の理不尽な内部体制、読めば読むほど松永兄弟の趣味でやっているとしか思えない運営。
(実際本気で優秀な人材を投入して取り組んでいれば、かなりの産業に育てることが出来たと思う)
その中で、「観客を引きつける」プロレスの才能でのし上がった長与と、フィジカルエリートながら観客を引きつける力に欠けた飛鳥の悩み、葛藤、そして目指していたものが活き活きと書かれている。佐山サトルが「毎試合ガチやらせるって全女はおかしいよね」と語っていた(という話をどこかで読んだ)が、ガチで強くても人気に比例するわけではないのがプロレスのツライところ。ジャガー横田も「強いが客は呼べない」と手厳しい。ジャガーの試合、面白かったけどなあ。見たのはJWPだったか、全女の全盛時の試合ではないからかもしれないけど。
今では想像がつかないけど、神取忍が無名で客が呼べなかったというのが意外。北斗晶が(あえてこう表現するけど)プロレスが下手で、対戦相手を多く怪我させたりとか。北斗は自身が怪我と闘い続けていたイメージがあるので、怪我をさせる側だったとは知らなかった。UWFで前田が長与にスープレックスを教え、「ホントにやろうと思ったら一発で仕留めることもできるけど、それをやらずにギリギリのところで受け身を取らせるのがプロレス」と語っていたとか。UWF関係の本を読むと、前田はプロレスが下手で、対戦相手に怪我ばかりさせるので嫌われていたとどれもこれも書いているのだが。。。
本書に数か所挿入されている、一人称の観客、あるいはライター視点の章が収まり悪いのが気持ち悪い。あとがきで、観客視点の記事がどうしても必要だったと書いてあるが、それが一体誰の視点なのかわからないので、もやもやして仕方ない。「私の取材に実名で応じるにはかなりの勇気が必要だったに違いない」と書いてあるが、実名ってこのあとがきにしか登場しない。これがもっと、誰のことか分かる形で書いてあれば、読後感が違ったものになったと思う。俺には蛇足としか読めなかった。
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