10点満点で、7点。
面白かった。
リアルタイムで見たことはないんだけれど、シュートボクシングに始まりK-1やリングス、みちのくプロレスにまで上がった流浪の格闘家、平直行の自伝。
自伝と言っていいのかなあ。基本的に格闘技の世界で生きてきた、平の目から見たプロレスと格闘技の境界線、といったほうがいいのかもしれない。
新鮮だったのが、前田日明のことを認めているというか、尊敬している感じが伝わってくること。
色々本を読んだり、雑誌やWEBのインタビューを見たりしたけれど、大体において前田の評価は「ガチはやっていない」「ガチは強くない」「練習してないのに威張ってた」「ガチやったことがないくせに上から目線でガチを語るな」というものばかり。たまに肯定的な評価があると、それはほぼ第一次UWFで選手やスタッフの飯を心配していたという、プロレスラーあるいは格闘家の本質とは違う部分。そんな「格闘技風プロレス」をやってきた前田について、純粋に格闘技畑を進んできた平が認めているのは面白い。
第二次UWFとリングスでリングドクターを努めた、野呂田氏の「前田はいいやつなのに誤解されている。前田の膝は本当に悪かったのだが、選手やスタッフを食わせるために休めなかった。前田も本当は格闘技をやりたかったはずだ」というコメントと合わせ、「深く関わった」あるいは「下についた」立場でなければ、前田は尊敬に値する人物だったのかもしれない。
それにしても平の格闘技遍歴は本当に面白い。
プロレスラーになるために空手を始め、それも「極真だけはやめよう」と思っていたのに勘違いで極真に入門。師範は前年度全日本王者で後に大道塾を起こす東孝。
その後上京して、UWFに憧れてスーパータイガージムに入り、「アレはプロレスであって格闘技じゃない」と言われ。佐山とUWFの関係が悪くなる中、UWFに引き抜かれると佐山に疑われている中何故かシーザー武志のシュートボクシングに移籍。シュートボクシング所属から正道会館の大会に出るために、何故か大道塾で稽古。リングスマットに上がり、UFCに衝撃を受けてホイスを倒すためにグレイシー柔術を学ぶ。。。
なんというか、ただただ面白い。
根底に、登場するほぼあらゆる人物に対するリスペクトが感じられて、強く誰かを否定することが多い類書とは随分読後感が違う。
カーリー・グレイシーという人物は本書で初めて知ったのだが、日本人が想像するサムライ精神を持っている人物のようだ。日本人より日本人らしい、というべきか。
グレイシー柔術の強さを素直に認め、率直にホリオンに学びに行ったり、ホリオンも率直に「我々と闘う可能性がある相手に技術は教えられない」と丁寧だが体裁を繕わずに断ったり、何とも言えないさわやかさを感じた。
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