2010年10月20日水曜日

080 / 360 史上最高の投手は誰か

10点満点で、8点。
読書時間・・・2時間程度

史上最高の投手が誰かなんて、その実績を知っている人なら、疑いなく彼の名を上げるだろう。
リーロイ”サチェル”ペイジ。3000試合以上に登板して2500勝以上、300以上の完封、100以上の完全試合、、、
その記録のほとんどはニグロリーグでのものだが、ニグロリーグはメジャーリーグとの対抗試合では105勝23敗。圧倒的に勝ち越している。

「黒いタイ・カッブ」と言われながら、「本当はタイ・カッブのことを『白いクール・パパ・ベル』という方が正しい」と言われたクール・パパ・ベル、ベーブ・ルースを「白いギブソン」と呼ぶのは褒めすぎとまで言われたジョシュ・ギブソン。ニグロでは控え選手でありながら、メジャーでは新人王やMVPを取ったジャッキー・ロビンソン。実力ではメジャーを遙かにしのぐ選手たちを相手に、常識外れの数字を残し続けたペイジは、史上最高と言うよりもむしろ孤高のピッチャーとさえ言えるだろう。

「火の玉」と言われた剛速球(米軍の測定では169km/h)を投げたボブ・フェラーに「アレをファストボールというのならば、俺のボールはチェンジアップだ」とまで言わしめた剛速球。一説には180km/hを遙かに超えていたとか。
二死走者なしからわざと四球で満塁にして、野手を全員引き上げさせて打者を三振に取ったり。日本で言うならば、沢村栄治と稲尾と権藤と江夏と金田と津田と江川と鈴木啓示と大野豊と野茂と松坂とダルビッシュと、全員の全盛時を足して5倍したような、そんな投手だったのだろう。

本書では、ペイジが史上最高の投手であるという前提を元に、そのことが米球界で認められるまでの課程を追っている。他にいろんな投手の伝説が出てくるのかと思ったが、巻末にニグロリーグの選手たちについて少々触れている程度。それでも、「ペイジ級の投手は75人いた」なんて書かれているが。

実力がありながらメジャーに行けず、野球殿堂入りができず、そのことで嘆くわけでもない、淡々とした生涯を送ったペイジ。「彼は自分の力で換え得るものは全て換え、換え得ないものは耐えた」と言われたその人生は、実に魅力的。


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