2010年4月28日水曜日

055 / 335 アホでマヌケなプログラミング

10点満点で、7点。

読書時間(普通に読んだ)・・・2時間半程度

オールドプログラマの酒飲み話、と思って読むといい。
プログラマを志したことがある身としては、「そうだよな-」とか「そんな奴いたな-」とか、「噂には聞くけど本当にいるのか?」とか、いろんなツッコミどころのある、四方山話が面白い。

聞く耳を持たないクライアント、営業と開発の確執、わかっていないのに口を出す偉い人・・・このあたりは、この手の本なら大抵書いてあるけど、新人教育の話は面白かった。「たまたまうまく動いている」と、「バグがない」を混同している奴とか。

cの文法についてもいくらか書いてあり、例えば
main()
{
    int i;

    for (i = 0; i < 10; i++)
        printf("%c", i["0123456789"]);
}

の実行結果はどうなるでしょうとか、

a = b++++c;
a = b-+++c;
a = b+-++c;
a = b+++-c;
のうち文法的に間違っているのはどれでしょう、とか、ひねくれたことについて書いてあったりする。

「プログラミング」と書いているが、どちらかというと「プログラマ」だな。
まじめに勉強のつもりで読むなら、appendixに要約があるので、それを読んでから読むといい。
どちらかというと、気楽に酒でも飲みながら読む本だと思うけれど。



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2010年4月27日火曜日

054 / 334 C++言語のカラクリ

10点満点で、6点。

読書時間(コードはまじめに読まないで・・・)・・・1時間半程度

第2部の「わんくま同盟座談会」はどうでもいいが(そもそも「わんくま同盟」っていったい何ものだか、説明は皆無だし)、第1部の「C++のカラクリ」は面白い。読みこなすにはプログラミングの他、コンピュータサイエンスの知識が必要になるが(俺には無理と言うことだ)、雰囲気はつかめる。

「初期のC++コンパイラは、Cのコードを吐いていた」とは知っていたが、その必然性があったとは知らなかった。
Cで書いたC++をCにするインタープリタを作って、そのコードを既存のCコンパイラがマシン語にする。
これでC++をマシン語にすることが出来るようになるので、今度はC++でC++のコードをCのコードにするインタープリタを作る。そのインタープリタをコンパイルしてマシン語コードを作り、さらにできあがったマシン語コードにC++で書いたC++をCのコードにするインタープリタのコードを喰わせる・・・

書いてて訳わからなくなってくるが、これは「できあがったコードの正当性」を検証するために必要なステップなんだそうな。読んでいるうちは、何となくぼんやりと、わかったようなわからないような。わかってないのだろうな。

図もあるが、実にわかりにくい。概念そのものが難しいのだろうが、図があってもあまり参考にはならなかった。

C++の言語そのものを知らないので、本書の記述がどれほどの価値があるのかは、よくわからない。
読み物として読む分には、6点。



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2010年4月25日日曜日

053 / 333 わが柔道

10点満点で、9点。

読書時間(普通に読んだ)・・・2時間半程度

「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と言われた鬼の柔道家、木村政彦の自伝。鬼が自分の信条を、飾らずに隠さずに書いているので、非常に面白くぐいぐい引き込まれる。

曰く、練習で膝をつかされたことが悔しくて、刃物を持って家まで行った。
曰く、天覧試合で勝った褒美に、芸者を買ってもらった。
曰く、戦後MPに柔道を教えた際、神棚の代わりにヌードポスターに礼をした・・・

信条として「三倍努力」を上げ、本当に実践したその強固な意志。「木村君は人の倍、6時間練習するというから、僕は6時間半練習してきた」という相手に「まさか9時間も練習していたとは」と言わしめる。その精神は指導者になっても変わらず、学生を深夜にたたき起こす・・・

ブラジルでエリオと戦ったときのことも詳細に書かれ、エリオを武道家として尊敬していることがよくわかる。反対に八百長破りをした力道山については手厳しく、「悪は滅びる」とまで書いている。エリオがその後バーリトゥードで破れていたことも初めて知った。

巻末には山下泰裕との対談も収録されており、また大外刈りの解説写真まで付いている。豪華以外の何者でもない。

こんなに面白いとは思わなかった。



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2010年4月24日土曜日

052 / 332 cプログラミングの非常識

学生の頃買った本。何回読んだのだろう。たぶん5回くらいかな。
プログラムを書かなくなって久しいが、書いていた頃は、スタイルの洗練や落とし穴について知るため、ちょくちょくひもといた。一つのトピックが短くまとめられており、わかりやすい。

平成4年、18年前の出版なのでさすがに内容は古い。CP/Mの話題や、トライグラフなどについてもページが割かれている。nearポインタ、farポインタなんて、最近のプログラマは知らない人も多いんだろうな。

決して入門書ではないが、入門書を卒業したら、読んで損はないと思う。たぶん。



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051 / 331 c++の絵本

仕事でちょっとしたプログラムを書く必要があり、フリーのコンパイラを探していたらVisual c++に行き着いた。
コンソールベースの、たかだか数十行で済む内容だったので、そのときはcで書いた。しかし、久しぶりにちゃんとプログラミングをしたくなり、いろいろ調べる。

学生の頃はプログラミングが大好きだったのに、Windowsになって全く触らなくなってしまった。それはWindowsベースのプログラミングで、コードを書く前に知るべきことが山のようにあったり、当時は「Windowsならc++だよねー」という風潮があって、二つのことを同時に手がけるのはハードルが高かったから。

しかし今回コンソールアプリを書いたことで、まずは言語から勉強しようかな、と言う気になった。そこで手に取ったのがこれ。「cは知ってるけどc++を知らない人には適切」という評価をそこら中で見た。

個人的には、あまりいい本とは思えなかったなあ。イラストをふんだんに使っているが、そのせいで肝心の文章による解説がなおざりになっている気がする。オブジェクト指向の考え方をぼんやりつかむにはいいが、言語の習得には向いていないような。

諸事情により自分でコードを書かず、ただ読み流しただけなのが悪いのかも知れないが。



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2010年4月21日水曜日

050 / 330 20世紀スポーツ列伝

10点満点で、7点。

読書時間(普通に読んだ)・・・1時間半程度

昭和を駆け抜けたアスリートたちの伝記。取り上げられている人物は、嘉納治五郎、双葉山、沢村栄治、古橋広之進、白井義男、円谷幸吉、青木功、植村直己、三浦友和、長嶋茂雄、人見絹枝、前畑秀子、樋口久子、伊藤みどり、伊達公子。まんべんなく、様々なジャンルの人物が取り上げられている。

嘉納治五郎が取り上げられているのに、木村政彦、植芝盛平、大山倍達が登場しないのは少々気に入らないが、彼らは「アスリート」ではなく「武道家」という位置づけなのだろうか。

各エピソードには、時代背景なども丁寧に描写してあり、その時々の登場人物の立場がよくわかる。沢村栄治が何のために「手榴弾投げに野球が役立った」と語ったのか、前畑秀子が「帰りの船から飛び込むかも知れない」と心配されたのか。文字通り命がけで戦ったアスリートの姿がある。

戦争と復興を駆け抜けた選手たちに国民がかけた期待、そして見事に応えた選手や、応えられなかった選手の悲哀がここにある。



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049 / 329 死刑でいいです

10点満点で、8点。

読書時間(普通に読んだ)・・・3時間程度

17歳で母親を殺し、少年院を出て2年後には27歳と19歳の姉妹を凄惨に殺害する事件を起こした山地悠紀夫。逮捕後は「弁護士はいらない」といい、「死刑でいいです」と自暴自棄になり、しかし動機については最後まではっきりしなかった、謎の男。山地の心の闇に、少年時代から死刑執行まで、携わった人たちへのインタビューから迫っている。

酒乱の父親から暴力に晒され、しかし血を吐いたところを母親に見捨てられてからか、父親を「いい父だった」と振り返り、母親については「鬼のような人間」と吐き捨てる。精神分析に携わった医師からは、「母親を否定しないと、殺したことを正当化できないからでしょう」と分析されている。

少年院では模範囚(?)となり、しかし心の闇はのぞかせている。注意が必要であると認識されながら解放され、パチンコ店勤務からゴト師へ、そして姉妹殺害事件を起こす。

所々に挿入されるエピソード、医師の分析などから、「良心をもたない人たち」を思い出した。著者たちはアスペルガー症候群などの精神異常があったと分析している。もしかしたら、山地も良心をもたないのかも知れない。

自らを「生まれてくるべきではなかった」といい、「一日も早く死刑を執行して欲しい」という山地。しかし、「自殺したいが出来ないのではないか?」という問いには明快に違うと答える。
読みながら理解しようと思っていたが、最後まで理解できなかった。

本書にコメントを寄せている、元家裁調査官の「反省なき更生」が、本当に必要なのかも知れない。
山地に罪を認識させることは出来なかったかも知れないが、二度目の殺人は防ぐことが出来たのかも知れない。
そもそも反省することが出来ない人物には、再犯を防ぐ以上のことは出来ないのだろうから。



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2010年4月17日土曜日

048 / 328 記憶力日本選手権チャンピオンが明かす 図解スーパー「実用」記憶術

10点満点で、6点。

読書時間(普通に読んだ)・・・45分程度

難しい。著者はちゃんと出来るのだろうが、解説が少なくコツなどもあまり書いておらず、読むだけではとても出来るようになるとは思えない記憶術。

場所、運動、道順、文章、イラストなど、他の記憶術の本では取り上げていないような題材についても書いてある。それは十分に価値があることではあるが、しかし俺には、この本で出来るようになる人がいるとは思えない。出来るかも知れないけど結構大変で、普通に覚えた方が早いよね、というのもある。

要は慣れなのだろうが。著者は確かに出来るのだろうし。

俺にはアクティブ・ブレイン記憶法の方が性にあったと言うことか。



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2010年4月16日金曜日

047 / 327 変な給食

10点満点で、4点。

読書時間(普通に読んだ)・・・1時間半程度。

タイトルに騙された。この本は給食の問題に名を借りた、米食真理教か米食教原理派か、謎の新興宗教の教本だと思う。それくらい、根拠に乏しいパン食叩き、洋食叩き、米食礼賛に充ち満ちている。

取り上げられている給食は、確かに変なものが多い。しかし、「米」が主食となっているものは、わずか1点雑炊を使ったものを取り上げただけで、あとはパンか麺。そしてそこかしこに、パンは駄目、砂糖と油の塊、米を食っておけばすべての問題は解決すると書いてある。

バカじゃないか。この著者。
本当に大学を卒業したのか。コメントを寄せているのは、本当に栄養士なのか。
そこかしこに「栄養バランスが無茶苦茶」と書いてあるが、数値は一切ない。カロリーがいくらで、炭水化物がいくら、脂質がいくら、タンパク質がいくら・・・と書いてあればまだ説得力があるのだが。
そして米食。「米食が本当にいいのか?」という問いに対し、「考えるまでもない」というスタンスに終始。栄養バランス、長期的な研究結果などが引用されていれば説得力は段違いなのだが、これだとワイドショーで芸能人が無責任に発言してるのと大差ない。

栄養的に酷いと書いてるのも少なくないが、ロングスパン、1ヶ月や1年単位で評価はしていないようだ。「推して知るべし」というスタンスなのだろうが、意味のある評価とは思えない。

根拠のない主張、裏付けとなるデータの提示なしに書かれた、センセーショナルな主張は注意して聞かねばならない。この本を真に受けるか否かで、読者に科学的リテラシーがあるか試されるのではなかろうか。

一応書いておくが、本書の主張が科学的にデタラメと言っているわけではない。根拠が示されておらず、科学的ではないと言っているだけ。星占いと同レベルで、当たっているのかも知れないが、それは主張が正しいのか偶然なのか、判断できませんよということ。

なので、本文には目を通さず、単に「デタラメな給食があるね-あははー」と、写真とメニューだけに目を通すのが良さそうな本。酷い給食だと笑ってみる分には、それなりに面白い。



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046 / 326 任天堂 “驚き”を生む方程式

10点満点で、8点。

読書時間(普通に読んだ)・・・3時間程度

他社が最先端ハードで、処理性能や画像表示能力でしのぎを削る中、全く違ったアプローチでDSやWiiといった大ヒットを飛ばした任天堂。その発想力、開発力、文化について、詳しく書かれている。

著者は任天堂のことを無条件にほめすぎている嫌いはあるが、それでも十分に面白いと思い、また任天堂は凄いと素直に思える。「枯れた技術の水平思考」とは任天堂を表すときによく聞く言葉だが、まさか光線銃が太陽電池からの発想とは知らなかった。

本業は何かを見失わず、全力で本業に取り組んでいく姿勢はすばらしい。ウチの会社も、力を入れるところと入れないところと、もっと考えた方がいいのでは・・・なんて余計なことを考えたり。

基本的に登場人物はすべて褒めちぎっているので、先代社長・山内溥に対しても、神がかった直感と洞察力を持った天才経営者、として取り上げている。
しかしどうせなら、インベーダーゲームが流行していた頃パクリを作って、テレビのインタビューに「遊び方にパテントなんかない」と言ってのけたことも取り上げて欲しかった。



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2010年4月14日水曜日

045 / 325 ついていったらこうなった

10点満点で、7点。

読書時間(普通に読んだ)・・・2時間程度

町中で声をかけてくる、どう考えても怪しいキャッチセールス。普通の人は無視して通り過ぎていくのだろうが、それについていったらどうなるのか、体験取材した本。途中まで首を突っ込んでおきながら断るとどうなるのか、そしてその内情を暴露するとどうなるのか、書かれている。

面白い。「電話にでたらこうなった」と同じく、著者の書き方が秀逸。「潜入してみた」ではなく、「本当に騙された」かのように思える。結婚相談所とか出会い系クラブとか、もしかしたら本気で期待していたのではないか、と思わせる書きっぷり。

しかし、世の中にはいろいろな詐欺があるもんだね。
これだけの本が書けるほど誘われるとは、都会というのは怖い場所なのか。



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2010年4月12日月曜日

044 / 324 女子プロ野球青春譜1950

10点満点で、6点。

読書時間(普通に読んだ)・・・3時間程度

戦後プロで2年、ノンプロ合わせて23年存在した、女子野球について。
ある興行師の思いつきから、キャバレーの女たちで構成した最初のプロチームができ、そして瞬く間に16チームにまで増えていき、社会人野球としてその歴史を終えるまで、さらに彼女たちのその後について描かれている。

内容は面白いと思うのだが、いかんせん悪文で読みにくい。人が中心なのか、時系列なのか、チームが中心なのか、一貫性のない文章でバラバラに書かれており、全体像が見えてこない。よくこれで商業レベルの出版が出来るな、と思うほど、内容がつかみにくい。

当時を生きた人ならともかく、今は歴史に埋もれてしまった女子プロ野球。
興味のある向きにはお勧めできるが、特に関心のない人が読むにはきつい本。



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043 / 323 笑える!世界の七癖エピソード集

10点満点で、5点。

読書時間(普通に読んだ)・・・1時間半程度

大して笑えなかった。このタイトルからすれば、これで十分か。
世界各国で著者が経験したエピソードを書いている。確かにそれなりに面白いが、「だから?」という感想を持ってしまった。第一、一般化するのはどうかと思うようなエピソードが少なくない。まさか、亀田親父を日本人の典型と思われたくはないだろう。もしかしたら、著者はそれに近いことをしているのかも知れない。



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042 / 322 格闘家に告ぐ!実戦格闘議論

10点満点で、6点。

読書時間(普通に読んだ)・・・3時間程度

なかなか面白いことを書いているとは思うが、著者のスタンスが鼻について、どうもすんなり読めなかった。
著者は格闘技を「エンターテインメント格闘技」と「本来の格闘技」に分け、あれこれを「エンターテインメント格闘技」と分類している。その視点は、「競技者の視点」か「観客の視点」かで分けている・・・のかと思ったら、そうと言い切れるわけでもなく、どうも著者の好みで分けている感が否めない。

1999年と10年以上前の本なので、UWF系のプロレスとしてリングスとパンクラスが取り上げられているが、リングスについては悪意のある取り上げ方をされていて、前田信者の俺にはカチンと来るところが少なくない。
前田がヒクソンから「逃げた」と言い切り、その根拠を示さないことには、はっきりと頭に来る。

何より著者は、あれは駄目これは駄目といいながら、その根拠については「経験者ならわかる」とか「本気でやっている人間にはわかるはずだ」とか、「それについて語るのは本題ではないので書かない」とか、結局まともなことは書いていない。著者の思い込みでしかないと言っても、返す言葉はないのではないだろうか。根拠がないのだから。

第一著者は、「経験者ならわかる」とか「ある程度のレベルならわかる」とかしきりに書いているが、自身については「道場の末席を汚す程度」とも書いている。極真の黒帯を持っているなら、確かに素人と比べれば相当なものなのだろうが、「極真では末席でも、そこらの奴らから比べれば超人」とでも言いたいのか。

唯一根拠らしいことを書いていたのは、呼吸の仕方について。主にプロレスで、見てわかるほどの呼吸をしているが、息を吸うときは隙となるので、真剣勝負ならそんな隙は見せない、と。著者は柔道を本当の格闘技に分類しているようだが、オリンピックの舞台でも肩で息をする選手がいることは知らないのだろうか。それとも、オリンピックはエンターテインメント格闘技の場なのか。

本書でもっとも興味深く読めたのは、大山倍達死後の極真の分裂について触れた際の、三瓶啓二の人となり。
実録!!極真大乱」でも書かれていたが、著者は松井派のスタンスで書いている。松井派から見ても、遺族派から見ても、三瓶という人物は相当人間性に問題があるようだ。本当のところはどうなのだろう。



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2010年4月4日日曜日

041 / 321 実録!! 極真大乱

10点満点で、8点。

読書時間(普通に読んだ)・・・4時間程度

一代で極真会館を作り上げた空手界の、いや武道・格闘技界の巨人、大山倍達の死後に極真会館が分裂していく様子を、その内部にいた著者が詳述している。極真とは全く接点がなく、時折ニュースや雑誌などで見かける記事でしか知らなかった、極真の組織としての内情がよくわかる。

著者の分析によると、極真会館とは大山倍達の強権独裁組織であり、大山の存在がなければ分裂してしまうのは当然の結果に過ぎない。そして、大山本人はそのことを自覚しながら、放っておいたのではないかとしている。

著者は遺族派の一因として行動しており、松井派に対する筆致はやや厳しくはある。しかしなるべく客観的に書こうとしていることは十分に読み取れ、松井派の問題についてよくわかる。書かれていることは、恐らく事実なのだろう。

個人的には、極真が分裂していく様よりも、大山倍達という人物にスポットを当てた記述が興味深かった。弟子たちの存在が大きくなることに嫌悪を感じる、人間としての器が小さかったのではないかと書いている。大山茂・泰彦兄弟や芦原英幸など、なぜ破門されたのか俺にはさっぱりわからない弟子たちについて、著者は「大山の嫉妬」によるものとしている。そうなのかな。

第6章の「真実の大山倍達」には、大山倍達の修行過程、民族活動、山ごもりの真実、韓国の家族などについて触れている。「空手バカ一代」のイメージが強い俺としては、ずいぶん大山像が変わってしまったが、恐らく本書に書かれていることはほぼ正しいのだろう。

しかし、どこかで読んだ書き方だが、「後に一流一派を起こしうる、大きな弟子を何人も育て上げた」大山の実力と実績は、やはり偉大なのだろう。



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