2017年10月8日日曜日

005 / 438 武道vs.物理学

10点満点で、3点。

著者は物理学者にして大東流佐川門下の黒帯。その知見から、武術や格闘技の技について、物理的に考察した本のように思えるのだが・・・
俺の目が曇っているのだろうか。取るに足らぬ内容と、エセ科学しか書いてない気がする。

最初は柔道の崩しについて、三船十段の隅落とし(空気投げ)について書かれている。手首の僅かなひねりだけで投げてしまうという神業について、「物理学的には合理的な技」としているが、それを実現している方法は「筋肉を動かしている電流をコントロールし、随意運動を奪っている」って、その方法がわからなければ意味ないだろう。
ついでにいうと、不随意運動とは「生活習慣や訓練によって、無意識で動くようになった動作」と書いてあるが、不随意運動って心臓の鼓動とか、そういうやつじゃなかったか。

次は空手の技について、「飛び蹴りは本当に効くのか」を検証している。
実に40ページ近く使って書かれているが、2ページもあれば終わるんじゃないか。「飛び蹴りは、攻撃者の体重が全部乗るので、速度から思うよりも威力は大きい」と書けばそれで終わりだ。ついでにいうと、作用反作用の法則についても触れながら、地上での突き蹴りは技術(踏ん張り方など)によって、「相手の体重も」威力として計算できることについては意図的なのかそうでないのか、全く触れていない。突きの威力については、拳の重量しか考慮していないとか、何じゃそりゃ。

その次は総合格闘技のマウントポジションについて、その返し方を物理学的に考察。ある程度話が進んだところで、突然「武道の究極奥義」なるものが登場して、ほとんど体を動かすことなく返すことができるとある。その究極奥義の正体を解き明かさなければ、本書の意味は無いんじゃないの。

その奥義を身につけたのも、佐川幸義先生の高弟、木村達雄氏に合気をかけられて、突然開眼したとか。挙句、「触れなくても合気はかかる、これは電磁場が云々」とかある。
著者は本当に科学者なんだろうか。「物理学者である私の目から見ても不思議だがよくわからない」とか書いてある方が、よっぽど信用できる。

木村達雄氏、それから本書の著者である保江邦夫氏については、様々なところで他の武道や格闘技を貶める発言をして、色々物議をかもしたことがあるらしい。
実際に武道家としてはどうなのか、それは見たことがないし、直接知っている人の評伝なども見たことがないので、俺には判断がつかない。しかし、本書のような発言をしていたら、「合気とは胡散臭いもの」という印象を強くするだけのような気がする。

ちなみに本書に登場する物理学は、高校物理が不可だった俺でもわかるレベルなので、その意味では読者は選ばない。


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