2009年10月26日月曜日

205 / 249 人民は弱し 官吏は強し

10点満点で、8点。

読書時間(普通に読んだ)・・・1時間半程度

この本もskype読書会のために読み返した本。「明治・父・アメリカ」とは違い、希望を打ち砕かれる本なので、読み返した回数はたぶん4~5回しかない。

希望に燃えて帰国し、星製薬を立ち上げてモルヒネの抽出に日本で初めて成功するなど、前途洋々だった星一。後藤新平と知己があったばかりに、その政敵から、また同業者から様々な妨害を受け続け、ついには心が折れてしまうまでの話。本書では人物や会社名が一部仮名になるなど、「事実を元にした小説」という位置づけになっている。たとえば、三共製薬などは本書では「三原製薬」という名前で登場している。

とはいえ、本書の内容を否定する資料、物証などは出てきていないらしい。ほぼ事実と言える小説、というべきか。星一があまりに完璧な人格者として描かれており、そのあたりは誇張があるのかもしれぬ。

個人が権力に対抗する力など持ち得なかった当時。星新一がその後作家として、独特の冷めた視点からの作品を排出するようになるのは、星製薬の後始末で筆舌に尽くしがたい辛酸をなめたからだという。その一端が読み取れる。

必読書だと言っていいと思うが、読後感があまりに悪いので、減点した。



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