2010年2月2日火曜日

013 / 293 死体はみんな生きている

10点満点で、8点。

読書時間(普通に読んだ)・・・3時間程度

死体には、生きている人間には決して出来ないことを、平気でやってのける力がある。
医師の卵のために練習台となり、事故の衝撃を調べるためにぶつけられ、肥料にだってなる。

本書では、死体利用の歴史にも触れつつ、様々な形で利用される死体たちの活躍を、これでもかと言うほどのブラックユーモアに包んで語っている。美容整形のモデルとなる40個の頭部(生首と言ってはいけない)、(たぶん)飛行機から飛び降り、銃器の的となり・・・

自動車の安全性を高めるためのシートベルトやエアバッグ。ダミー人形でどの程度の衝撃を受けるかを研究するのは当然として、「どれだけの力を受けると人間は致命的な被害を受けるのか?」は、やはり死体をぶつけてみないとわからない! 言われれば当たり前だ。そうして何人もの死体が2度3度と死んできたから、衝撃をどの程度に抑えれば人間は死なないと言えるのだ。

犯罪捜査で、腐乱死体から死後何日程度経っているかどうかを推測する。その根拠は? もちろん、同じような条件で腐敗させた死体と比較しているのだ!

献体という文化がしっかり根付いている国だからこそのことだろうか。以前「人体の不思議展」に、どういう訳か司法解剖を生業としている人と行ったことがある。献体された遺体を前に、いろいろ解説してくれて、気持ち悪いような生臭いような、妙な気分になったのを覚えている。しかし、それが特別なことではない世界もあるのだろう。

このほか本書では、人間が確実に死んだかどうかを判定する技術、食人文化、肥料としての再利用など、カタギの人生を送っている分にはまず必要となることはないであろう知識を身につけることが出来る。NHK出版だというのも味があっていい。



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