10点満点で、8点。
読書時間(普通に読んだ)・・・2時間半程度
面白かった。著者は脳科学について素人と明言しながら、様々な論文を当たり、また現役の脳科学者、脳障害を抱えた患者など多くにインタビューをして、その内容をわかりやすくまとめている。本書では結論の出ていない問題については両論併記の形を取っており、極力予断を廃した文章になっているところが、実にいい。
本書の冒頭にも書いてあるが、世間一般でよく目にする「最新の脳科学によると・・・」という文言は、まず疑ってかかるのがいい。それは、脳科学では結論が出たり、あるいは多数の学者が支持する学説というのが多くなく、まだまだ未知の分野であるということ。主張する人物に悪意があるかどうかは別として、大抵の説は誰かが唱えているので、「最新の脳科学によると」という前置きには、ほとんど意味がない。「脳科学会で主流の考え方では」というものならば、それなりに信憑性があるのだが。
冒頭に紹介される、早期教育の悲劇は、俺の想像を超えていた。
小学校入学前に微積分をマスターし、一年生で大学入試問題をすらすら解けていたのに、中学時代に無気力となり、大学に進学することもなかった女性。あくまで「著者が直接知る、唯一の実例」として紹介してあるのだが、これはあまりに悲しい。その理由(と、推測されるもの)が本書に詳述してあり、自分の子育てについても考えさせられた。
このほか鬱、視覚、言語、アルツハイマー、意識など、興味深い話題が盛りだくさん。著者自身が書いているとおり、平易な言葉で語られており、また紹介されるエピソードがいずれも興味深く、最後まで引きつけられて読んだ。
本書に書いてあることがすべて正しいとは思わないが、それでも読む価値はある。
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