10点満点で、8点。
読書時間(普通に読んだ)・・・2時間程度
初版は1991年だから、もう20年近く前か。その後の出来事などを書き加えた、増補版という位置づけになっている。
著者は、当時社会問題にもなっていた「自己啓発セミナー」に参加して、その内情を克明に記している。読む限り、最初から潜入取材という意識が強かったわけではなさそうだ。好奇心にひかれてベーシックセミナーに、そしてその後アドバンスセミナーにまで参加している。さらにその先のコースもあるが、著者はそこで違和感を覚えて、参加をやめたようだ。
中で何が行われているのか、基本的には自己啓発セミナーではどこも内容を公開していないので、本書の内容は非常に興味深い。自分で無意識に加えている制限を解き放ち、自分のこだわりをさらけ出してそこから解放され、そして行動する力を得るもの、らしい。
読んでいると、セミナーそのものに関心が出てくる。特に危険なものとも感じられず、また参加者の考え方や行動が劇的に変わっていくことから、むしろ巷間で言われるよりも有意義なものではないかという気すら起きる。読んでいる最中は、俺自身もセミナーに参加してみたくなった。しかし、著者はいくらか引いた視点で内容を捉えており、参加しながらその中にある種のいかがわしさを感じている。
二部構成になっており、後半はセミナーの問題点や、「その後」の問題点などについて触れている。これがなければ、むしろ本書はセミナー参加者を増やす効果の方が大きそうな内容で、実際初稿が雑誌に掲載された際、最も多かった読者の反応は「私も参加したい」というものだったらしい。
しかし本書で語られるところによると、セミナーで与えられる感情や、セミナーで植え付けられる意識は、あくまで非日常の世界だから成立するものであること。そのままの感覚で社会に出ると、むしろ周囲との協調が取れずに問題が大きいことなどが語られている。なるほどと納得はしたが、しかし潜入体験記の内容はあまりに興味深く、一度参加してみたい気分になった自分がいることは間違いない。
面白い本ではあるが、危険性も感じる。
誰にでも勧められる本ではないな。
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