10点満点で、5点。
同じくフォーカス・リーディング用に買って、無関係に読んだ本。
中学生の頃書店で半分くらい立ち読みした記憶があるが(嫌な中学生だ)初版は1987年とか。強盗殺人だったかで死刑を求刑され、無期懲役囚として服役していた著者が宮城刑務所で死刑囚棟掃夫として経験したことを書いている。仕事内容は死刑囚の日常、そして処刑後の世話。
まあタイトルからして一番読者が気になるのは死刑の執行前後の様子だろうが、それに関する描写はあまりない。まあ流石に、執行そのものは見ていないだろうし。とはいえ、執行後の遺体の状況、その措置などを書いた本は他に殆ど無いのではなかろうか。
執行を待つ死刑囚の悩み、苦しみはよく書かれていると思う。しかしまあ俺の偏見だろうが、所詮人殺しの書いた本。被害者に対する真摯な謝罪、反省の気持ちは感じられない。死刑囚の態度にしてもしかり。自分が死刑になるという苦しみばかり描かれていて、被害者に対する気持ちは殆ど感じられない。数少ない描写は、反省の態度を示すことで死刑判決を避けようとする未決囚の言動くらい。
死刑制度の是非を問うような大それた気持ちで書いたわけではないのだろうが、本書を読んでも死刑賛成派が考えを改めることはまずないと思う。
冤罪による死刑については本書でも触れていて、それは確かに大問題であるが、あくまで裁判の問題。死刑制度とは切り離して考えるべきだろう。
本書で一番気になったのは、島田事件の赤堀氏(死刑確定から再審により無罪)に関する記述で「捜査本部の陣頭指揮をとったのが、でっち上げで有名な紅林麻雄警部だった」との一文。でっち上げで有名な警部ってなんだと調べてみたら、少なくとも3件の冤罪死刑囚を生み出しているとんでもない人物。拷問による自白強要(「拷問王」なる異名があったとか)、証拠のでっち上げ、真犯人と思しき人物からの収賄など、常軌を逸した人間であった模様。こういう人物こそ死刑にふさわしいと思うが、実際は事実上の二階級降格処分だけで警察を引退しているらしい。当時の静岡県警は、戦時中の特高警察がそのまま残っていたのだろうかと不思議になる。
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