2017年11月24日金曜日

022 / 455 全電源喪失の記憶

10点満点で、7点。

福島第一原発事故の経緯を丁寧に追った本。「死の淵を見た男」よりも臨場感を感じた。
「死の淵を見た男」は吉田所長を中心に書かれているが、本書は時系列に様々な視点から書かれており、登場人物が多い。その分読みにくい点はあるが、それだけ多くの人物が関わっていたのだから仕方ないだろう。

当時原発では何が起こっていたのかを語る本の多くは、命がけで事故収束に挑んだ人々の活躍と葛藤をまざまざと描いている。本書はそれに加え、(敢えていうが)逃げた人、最後まで立ち向かわなかった人、突入その他をためらった人たちのことも丁寧に書いている。実名で登場しているから、証言した人たちも勇気は必要だったろうが、単なる英雄譚で終わらせないためにこういう視点もキチンと抑えておくことは重要だと思う。

現場作業者たちの視点が多く登場するので、実際に現場で何が起きていたのかはわかりやすい。吉田所長の視点では、どうしても実態あるいは全体像が見えてこない部分もあったが、本書ではかなりわかりやすく読める。

しかし色々読んできたけれど、どの本も共通して、官邸の介入については百害あって一利なしとしか思えない記述。総理が菅直人でさえなければ、もう少しマシな事態だったのではないかと思う。まあルーピーとか、当時の民主党には菅直人と同レベルあるいはさらに下を行く人材には事欠かなかったから、誰でも変わらないのかもしれないけれど。

臨場感あふれる筆致で書かれているだけに、唐突に収束しているのがよくわからない。吉田はじめ何人もが死を覚悟したあと、なぜか「悪いなりに安定している」状態になり、いきなり数日後の話になる。本当は何が起きていたのか、今でもわからないことはあるのだろうが、投げっぱなしで話をたたまれるのは非常に読後感が悪いのでマイナス。


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2017年11月21日火曜日

021 / 454 U.W.F.外伝

10点満点で、7点。

面白かった。
リアルタイムで見たことはないんだけれど、シュートボクシングに始まりK-1やリングス、みちのくプロレスにまで上がった流浪の格闘家、平直行の自伝。
自伝と言っていいのかなあ。基本的に格闘技の世界で生きてきた、平の目から見たプロレスと格闘技の境界線、といったほうがいいのかもしれない。

新鮮だったのが、前田日明のことを認めているというか、尊敬している感じが伝わってくること。
色々本を読んだり、雑誌やWEBのインタビューを見たりしたけれど、大体において前田の評価は「ガチはやっていない」「ガチは強くない」「練習してないのに威張ってた」「ガチやったことがないくせに上から目線でガチを語るな」というものばかり。たまに肯定的な評価があると、それはほぼ第一次UWFで選手やスタッフの飯を心配していたという、プロレスラーあるいは格闘家の本質とは違う部分。そんな「格闘技風プロレス」をやってきた前田について、純粋に格闘技畑を進んできた平が認めているのは面白い。
第二次UWFとリングスでリングドクターを努めた、野呂田氏の「前田はいいやつなのに誤解されている。前田の膝は本当に悪かったのだが、選手やスタッフを食わせるために休めなかった。前田も本当は格闘技をやりたかったはずだ」というコメントと合わせ、「深く関わった」あるいは「下についた」立場でなければ、前田は尊敬に値する人物だったのかもしれない。

それにしても平の格闘技遍歴は本当に面白い。
プロレスラーになるために空手を始め、それも「極真だけはやめよう」と思っていたのに勘違いで極真に入門。師範は前年度全日本王者で後に大道塾を起こす東孝。
その後上京して、UWFに憧れてスーパータイガージムに入り、「アレはプロレスであって格闘技じゃない」と言われ。佐山とUWFの関係が悪くなる中、UWFに引き抜かれると佐山に疑われている中何故かシーザー武志のシュートボクシングに移籍。シュートボクシング所属から正道会館の大会に出るために、何故か大道塾で稽古。リングスマットに上がり、UFCに衝撃を受けてホイスを倒すためにグレイシー柔術を学ぶ。。。

なんというか、ただただ面白い。
根底に、登場するほぼあらゆる人物に対するリスペクトが感じられて、強く誰かを否定することが多い類書とは随分読後感が違う。

カーリー・グレイシーという人物は本書で初めて知ったのだが、日本人が想像するサムライ精神を持っている人物のようだ。日本人より日本人らしい、というべきか。
グレイシー柔術の強さを素直に認め、率直にホリオンに学びに行ったり、ホリオンも率直に「我々と闘う可能性がある相手に技術は教えられない」と丁寧だが体裁を繕わずに断ったり、何とも言えないさわやかさを感じた。


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2017年11月19日日曜日

020 / 453 1993年の女子プロレス

10点満点で、7点。

面白かったが、タイトルには違和感があるな。インタビュー集だし、1993年の話題が多いわけでもないし、そこを中心に時系列で追っているわけでもない。「全女を駆け抜けたレスラーたち」くらいの方が、内容に合致していると思う。1993年はJWPもLLPWもあったが、当時全女にいた、あるいは全女出身だったレスラーばかりで、例外は尾崎魔弓、里村明衣子、広田さくら、ロッシー小川だけ。ロッシー小川は全女のスタッフだし、里村と広田は当時デビューどころかプロレス界に入門すらしていない。当時現役のレスラーとして、完全に全女の外からの視点で語るのは尾崎だけ。このタイトルを付けるのなら、何度も名前が出てくる神取忍とか、あるいは工藤めぐみ(全女出身だけど)、キューティー鈴木あたりも登場しないとつまらない。あるいは全女にこだわるのなら、ダンプ松本、井上貴子、堀田祐美子あたりにも登場してほしかった。北斗晶も重要人物として、ほぼ全員のインタビューに名前が登場しているが、残念ながら収録が拒否されたとのことで収録されていない。
(雑誌連載時は載ったようだ)

読めば読むほど、著者が言うとおり全女とは「最狂のプロレス団体」だと思う。多くの試合をシュートで行い、タイトルを奪われたら暗黙の了解で引退とか。どれだけ貢献していても容赦なく肩を叩くし、選手同士の対立を平然と煽るし、それをリングの上で出させるとか、団体というか組織運営としてはありえない。だからこそ狂った魅力があったのだろうか。

著者(インタビュアー)がそう思うから誘導しているのかもしれないが、基本的に女子プロレスの歴史は、クラッシュ・ギャルズ以前と以後で大きく別れる、というのが全員の共通認識になっている気がする。そして、長与千種こそが史上最高の天才プロレスラーで、長与の穴を埋めようとブル中野が歴史を変えたとも。クラッシュの全盛時は見ていないから、バラエティ番組などのダイジェストでしか知らないけれど、たしかに相当な影響力だったんだろうと思う。でも、自分が見ていた世代を中心に考えるからだとは思うが、本当に女子プロレスを変えたのは豊田真奈美じゃないかなあ。クラッシュやブル、アジャたちは女子プロレスを男のプロレスに近づけたけど、豊田は「女子にしかできないプロレス」を突き詰めた気がする。ああでも、豊田が超人過ぎて、豊田型の選手が続いてないからやっぱり駄目か。

基本的には面白いインタビュー集だが、著者の「女子プロレスの歴史において、長与千種、アジャ・コング、北斗晶の三人は別格の存在」という主張が強すぎて、読んでいて違和感があった。確かにそれぞれ巨大な存在だけど、それを押し付けるなよ。


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2017年11月18日土曜日

019 / 452 福島第一原発事故 7つの謎

10点満点で、7点。

NHKスペシャル「メルトダウン」シリーズとして、5回に亘る放送のために取材した情報を元に、7つの謎について迫った本。基本的には技術的な問題について取り上げており、人的問題についてはあまり立ち入っていない。内容が専門的なので、理解するのはそれなりの知識が必要だと思う。少なくとも俺にはわからないところが多々あった。それでも、わからないから読むのが苦痛、と感じることもなく、わからないなりに先へ読み進めようと思わせる内容。

取り上げた謎は以下の7つ、7章で構成されている。

  1. 1号機の冷却機能喪失はなぜ見逃されたのか
  2. ベント実施はなぜ遅れたのか
  3. ベントは本当に成功したのか
  4. 爆発しなかった2号機で放射能大量放出が起きたのはなぜか
  5. 消防車が送り込んだ400トンの水はどこに消えたのか
  6. 緊急時の減圧装置が働かなかったのはなぜか
  7. 「最後の砦」格納容器が壊れたのはなぜか

NHKスペシャルの内容を再構成しただけあって、図が多くわかりやすくなるよう配慮されている。それでも、テレビと違い、視覚情報として図を見つつ聴覚から説明を入れる、ということが出来ないので、今ひとつわかりにくい箇所多し。図は載っているのだが、本文は図の存在に触れず言葉だけで語っているところが多いので、そういう(あえて悪い表現をするができの悪い)本を読み慣れていないと、せっかくの図があまり役に立たないと思う。

福島原発事故は、高い放射線量のため今でも人が近づけない箇所が多く、謎に包まれている。本書でも、謎は謎として提示しているが「いまだに不明」というものも多く、決して安心できる状態ではないのだということを痛感させられる。

本書を読んで、俺の評価あるいは印象が変わった人たち、変わらない人たち。

吉田所長;
冷静沈着かつ果断な決断力、豊富な知識、部下からの信頼で原発を壊滅から救った人物という印象を持っていたが、当然ながら人間臭いところもある。副社長で原子力トップの武藤氏を技術的に頼りにしていたというのは初めて知った。

多くの原発マンたち;
「危ないと思う」レベルではなく、実際に命の危険を実感しながら事故の収束に向けて、本当に気力体力とも振り絞っていたのがよくわかる。

政治家;
良くも悪くも、これまで持っていたイメージ、他の本に書かれてあることと一緒。特に総理官邸の介入は、目前まで迫っていた電源復旧を最低でも40時間遅らせ、その間の放射能放出は全体の7割に及ぶという手厳しい評価がなされている。本当に、色んな本を読みニュースを見てきたが、この事故については政治家の存在がプラスになっている要素って見当たらない。

武藤栄;
副社長で原子力トップ、技術畑の人。イラ管がいつも怒鳴り散らしていた相手、という印象しか持っていなかったが、現場を熟知して吉田所長が最も頼りにしていた人物という印象を持った。最終章で武藤氏の行動、発言などが詳しく書かれており、本当にこの武藤-吉田ラインがなければ、原発は壊滅していたんだろうなあ、と思う。東電本社は官邸の顔色をうかがい、見当違いの指示ばかりだしてきて現場を助けるどころか邪魔ばかりしていたが、武藤氏だけは現場に頼られていたという印象。最終章だけでも、本書を読む価値があったと思うレベルで印象が変わった。


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2017年11月13日月曜日

018 / 451 「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実

10点満点で、8点。

「死の淵を見た男」の著者が、朝日新聞の捏造(本書では「誤報」と言っているが、どう見ても捏造だ)に真っ向から挑んだ本。福島第一原発の故吉田所長に長時間インタビューをした他、百人単位の人物に実名証言を求めてルポルタージュを書き上げた著者から見て、朝日新聞の報道はひと目でおかしいとわかったらしい。その内容への驚きと、自らが集めた情報との乖離を挙げ、疑問点をつぶさに記述している。そして著者も吉田調書を入手したあと、細かな検証をして、いかに朝日の報道が異常であるかを明らかにしている。

本書に限らず、吉田調書について検証した新聞や雑誌、書籍を見る限り、朝日の報道は誤報のレベルを遥かに超えていて、捏造というほかない。本書は「朝日の報道のどこが誤報か」をメインテーマにしているが、個人的にもはやそこは一顧だにする価値はないように思う。(記者あるいは当該メディアにとっての)真実を報道する、という基本を逸脱して、明白な捏造を日常として行っているのだから、朝日新聞をメディアとして扱うほうが間違っている。むしろ「なぜ今でもメディアの顔をしていられるのか」「なぜ反日なのか」を取り上げるべきだとは思うが、まあ本書は著者の立ち位置(真実を伝えるジャーナリスト)もあるから、それには踏み込んでいない。踏み込んでほしいけれど。

「死の淵を見た男」では語られなかった部分について、吉田調書からの情報で補足された部分も多く、読み応えはある。そして何より、著者は吉田昌郎という人物を心から尊敬しているのだということが伝わってくる。
しかし、吉田氏が「10mを超える津波の可能性を握りつぶし、対策を怠った」と評価されることについて真っ向から反論し、「むしろ彼ほど真剣に津波について考えていた人物はいない」という評価をしているのはどうかと思う。例えば、仮に15mの津波に耐える防波堤を建設したとして、原発は守れてもそのエネルギーは周囲を襲うことになるがそれで良いのか、という主張がある。「だからもっと根拠を明確にして、必要性を吟味すべき」というスタンスだったのだが、それならば「仮に15mを超える津波が来た場合どういう被害が起こりうるのか」というケーススタディをしていれば、全電源喪失という事態は防げたのかもしれない。もちろん後知恵の話なのだが、原発安全神話の根幹をなしていた「想定外の事態についてもなお備えているから大丈夫」という主張がことごとく、津波の高さ一つで崩れてしまった現実を考えると、なぜ津波だけは「津波が防げなかったら」という想定がされなかったのかと思う。それに対する回答は、本書にはない。


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2017年11月12日日曜日

017 / 450 朝日新聞「大崩壊」の真相

10点満点で、6点。

「偏向」を通り越して「捏造」メディアの名をほしいままにしている朝日新聞が、なぜ大幅部数減という自体に陥っているのか。過去の捏造報道から、現在までの主な問題を追った本。
まあ一言で言うと、ネットメディアの発達により、読者が自力で真偽に迫ったり情報を発信することができるようになったおかげで、虚報が虚報として知られやすくなった、ということなのだろうが。

本書で取り上げられているのは、大きく「吉田調書」と「従軍慰安婦」の捏造報道。それに加え、捏造あるいは誤報への指摘に対する言論封殺、媚韓媚中反日報道の歴史、過去の主な捏造報道、捏造あるいは誤報、偏向報道で名を挙げた記者や編集者の紹介など。著者のスタンスが反朝日だから当然の筆致ではあるが、本書を読むとよくもまあ、こんなプロパガンダをする新聞社が営業を許されているな、とすら思う。もちろんそれは日本が言論の自由を保証している、朝日が大好きな韓国や中国とは大きく異る自由な国家であるからなのだが、それを隠れ蓑に自分たちへ対する批判は許さない見事なダブルスタンダード。この辺も韓国、中国にそっくりだ。

今でも高齢者を中心に、新聞とテレビ以外にニュースソースを持たない人というのはかなりいる。
思想の左右を問わず、偏向にとどまらず、捏造まで行っているメディアの信頼度は低い。このことに気づいた人たちがどんどん朝日を始めとする捏造メディアから離れている、というのが真相ではなかろうか。

朝日と読売の記者で覆面座談会をしているが、読売記者の「朝日の信用が落ちるのはウェルカムだが、新聞全体の信用が落ちるのが痛い」という趣旨の発言が全てだろう。実際、朝日に限らず、既存メディアは軒並み信用を失いつつある。
メディアの自浄作用は期待できない、ということがここ20年ほどで知れ渡ってしまったのだから、相当な危機感を持たなければいけないはずなのだが、座談会を読む限りそれは感じられなかった。

しかし朝日記者の「社内では別に反日、左思想への誘導はない。自由な議論をしている」という発言。こんなのを言ってるから信用がガタ落ちになるのだと思うのだが。。。
少なくとも出来上がった記事を読むと、「そんな訳はないだろう」と誰もが思うわけで。


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2017年11月11日土曜日

016 / 449 1976年のアントニオ猪木

10点満点で、7点。

1976年は、猪木が異種格闘技路線に舵を切った年。この歳、柔道の金メダリストウィリアム・ルスカ、ボクシング世界王者モハメド・アリ、韓国のプロレスラーパク・ソンナン、そしてパキスタンの英雄アクラム・ペールワンとの4つを戦っている。いずれも有名ではあるがリアルタイムでは知らない試合。アリとの試合だけはビデオを見たことがあるけど。

日本プロレスを飛び出したものの、馬場とは格が違いすぎた上に外国人レスラー招聘ルートを抑えられて、異種格闘技路線に活路を求めた背景から、対戦相手それぞれの背景、そしてこれらの結果プロレス界と格闘技の接点がどうなっていったか、丁寧に追っている。特に、対戦相手の深掘りが興味深い。

ルスカ。ヘーシンクと並ぶオランダの英雄かと思っていたが、実はそれほど人気がなくカネに困っていたとか。ジョン・ブルミン(本書ではブルーミングと表記)はヘーシンクと並ぶ実力差でありながら、団体の対立でオリンピックに出れなかったとか。ジョン・ブルミンは極真の猛者という知識しかなかったのだが、彼はむしろ日本武道家なのね。遠い昔に読んだ「空手バカ一代」のせいで、極真空手に惚れ込んだ青年という印象だったのに、実は先に柔道を始めていたとか。まあ「空手バカ一代」は事実のふりをしたフィクションなので、ブルース・リーが極真門下生だったとか、信じると恥をかく話がたくさん書いてあるのでこれに限った話ではないのだけれど。
ルスカ戦がプロレス(結末の決まった試合)だとは知っていたが、金メダリストをプロレスのリングに上げたのだから、相当な交渉があったのだと思っていたら違ったとか。プロレスはフェイクだと最初から知っていて、わかった上で参戦してきただけ。むしろ、アリにしてもそうだが、日本以外ではプロレスはフィックストマッチだというのは当然のように受け入れられていて、格闘技と同じ土俵で語ろうとする人がそもそもいなかったとか、まあ当然なのだろうがプロレス好きとしてはちょっと悲しい筆致で書かれていたり。

アリがプロレスを熟知していて、プロレス流の盛り上げ方をしていた、というのも面白い。そして猪木の挑戦を受けたときも最初からプロレスだと思っていて、フィックストマッチのつもりでいて面食らったとか。しかしそこからアリ戦を深掘りしていて、巷間信じられているアリサイドのルールゴリ押しも、新間がでっち上げた話としている。本書の主張を裏付ける情報は他に知らないので、どこまで真実かはわからないが、あまりに評価が悪いので猪木を守るためにでっち上げたとか。猪木は打撃もタックルも投技も関節技も禁止されていなかったが、タックルの技術を持たないのでアリのパンチをかいくぐって組み付くすべがなかった。結果、あのスライディングキックは、猪木にできる唯一の選択肢で、ルールなど関係なかったのだ。しかも猪木は、お互いがフェアだと合意して禁止した、足先での蹴りや肘打ちなどの反則までしている。

アリ戦のあとの、韓国で行われたパク・ソンナンとの試合もヒドい。一勝一敗のプロレスをする予定で乗り込んで、当日になってブックを拒否してリアルファイトを強要したとか。しかも、純粋なプロレスラーでリアルファイトの技術を持たないパク・ソンナンに脊髄攻撃や目突きまで入れて戦意喪失に追い込み、翌日の試合ではブックどおりの勝ちを要求するとか。

そしてパキスタンでは、逆にプロレスとして呼ばれたのにリアルファイトを持ちかけられ、狼狽しながらも受けて立っている。今までやってきたことをやり返されたわけだが、ここでもやはり目突きを仕掛け、そして腕を折って返り討ちにしているのは流石というべきか。

しかし絶頂を迎えたはずの猪木は衰え、タイガーマスクに人気を奪われ、ビジネスで新日本プロレスの会社を湯水のように浪費し、四方八方に不義理を重ねて新日本プロレスを崩壊させてしまう。
プロレスこそ最強を名乗り、格闘技路線を突き進んだUWFは分裂し、しかもリアルファイトでは勝てなかった。唯一勝ちを重ね、グレイシーハンターとして名を挙げプロレスファンの溜飲を下げた桜庭は、レスリングの技術で戦っておりカール・ゴッチ由来の新日本プロレスあるいはUWFの技術で勝ったのではない、とまで書かれている。

日本プロレス史における、ある意味力道山以上の重要人物であり、そしてプロレス衰退最大の戦犯とも言える猪木。
そのキャリアで異彩を放つ、たった3戦のリアルファイトについて深く掘り下げられた本書は、実に読み応えがあった。
調べてみたら、本書では拒否されたとしている猪木へのインタビューが、大幅加筆された新装版では収録されているらしい。そちらを読めばよかった。


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2017年11月7日火曜日

015 / 448 セミナー講師の教科書

10点満点で、7点。

「1年目から結果を出し、10年稼ぎ続ける技術」とあるが、まずまず謳い文句通りの内容だと思う。
テーマの見つけ方、シナリオの作り方、話し方、集客、稼ぎ続ける仕組み・・・とあるが、テーマの見つけ方ってなんだ。伝えたいテーマがあって初めてセミナー講師を目指すものじゃないのか。
何を話せばいいかわからないけど、人に何かを教えて商売したい、という人がいるということか。これで成り立つんかな。

シナリオの作り方や話し方は大いに参考になる。別にセミナーでなくても、プレゼンの技術だと思えば応用範囲は広い。セミナー向けの内容だから、受講者が「できる」という実感をつかむためのコツなども書かれているが、「わかる」と感じさせるための方法にもそのまま使えるんじゃないかな。

ビジネスモデルの作り方は、まあ人によるんだろうなあ。
よくわからんけど、オリジナルのセミナーを開催するセミナー講師って、どれくらいの収入ベースなんだろうね。著者が提唱する、「アナタにしか出来ないセミナー」って割りとニッチな需要だろうし、年間何百人もの相手に開催できるような代物でもないんじゃないかと思うんだが、それで食っていけるのかなあ。


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2017年11月5日日曜日

014 / 447 レベル7 福島原発事故、隠された真実

10点満点で、6点。

東京新聞原発事故取材班の著となっており、あとがきでは「連載」という言葉が登場しているから、東京新聞の連載を単行本化したものらしい。連載期間が明示されていないからよくわからないが。
東京新聞は朝日毎日と並ぶ反日左翼新聞という印象が強いし、親会社の中日新聞は望月衣塑子のようなアタマのおかしい記者を野放しにしているから、その分偏見を持って読んだことは予め書いておく。

全体を通して、悪意のある批判文、という印象を受けた。事故対応など、後知恵で「こんなこともわからなかったのか」「こんなことにすら備えてなかったのか」という筆致が強い。「死の淵を見た男」には、現場で戦った男たちへのリスペクトが強く感じられたが、本書からは感じなかった。

事故の根源を探る、原子力行政の歩みなどについてはこれまできちんと調べたことがなかったので興味深く読んだ。しかしこれらの記事からも、偏見が感じられたので、別の資料でクロスチェックすることが必要だろうな。とりあえず本書を読んだ限り、正力松太郎は功罪ある男なのだろうが、やはりフィクサーであり、罪あるいは害のほうが大きかった人物である気がする。

読みながら「お前らメディアは、自分たちの非は決して認めないくせに、後知恵で好き放題言いやがって」という印象を持っていたのだが、あとがきでは「メディアにも反省すべき点がある」と書いてある。いやそれ、冒頭に書いてあれば読後感が随分違うのだがなあ。
とりあえず「安全神話」は、「絶対安全」という言葉以外はすべからく危険であると喧伝し続けた、メディアの責任が大きいと思う。技術的に100%の物事はありえないというのは常識なのだが、原子力では100%でない限り叩かれ続けたのだから、懸念を表明することすら出来なくなってもある意味仕方ないなあ、と思う。それが正しいことだとは思わないが。


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2017年11月4日土曜日

013 / 446 1985年のクラッシュ・ギャルズ

10点満点で、8点。

1984年のUWFを読んで興味を持ち、著者の作品をチェックしてみることにした。まずは本書から。

期待以上に面白い。クラッシュ・ギャルズの活躍した時代に小学生だったので、よく覚えている。実際にテレビで試合を見たことはないけれど、テレビそのものにはたくさん出ていたので、試合映像も流れていた。特に理由もなく、ライオネス飛鳥のほうが好きだったのだが、人気は長与千種のほうが圧倒的だったのね。

全女の理不尽な内部体制、読めば読むほど松永兄弟の趣味でやっているとしか思えない運営。
(実際本気で優秀な人材を投入して取り組んでいれば、かなりの産業に育てることが出来たと思う)
その中で、「観客を引きつける」プロレスの才能でのし上がった長与と、フィジカルエリートながら観客を引きつける力に欠けた飛鳥の悩み、葛藤、そして目指していたものが活き活きと書かれている。佐山サトルが「毎試合ガチやらせるって全女はおかしいよね」と語っていた(という話をどこかで読んだ)が、ガチで強くても人気に比例するわけではないのがプロレスのツライところ。ジャガー横田も「強いが客は呼べない」と手厳しい。ジャガーの試合、面白かったけどなあ。見たのはJWPだったか、全女の全盛時の試合ではないからかもしれないけど。

今では想像がつかないけど、神取忍が無名で客が呼べなかったというのが意外。北斗晶が(あえてこう表現するけど)プロレスが下手で、対戦相手を多く怪我させたりとか。北斗は自身が怪我と闘い続けていたイメージがあるので、怪我をさせる側だったとは知らなかった。UWFで前田が長与にスープレックスを教え、「ホントにやろうと思ったら一発で仕留めることもできるけど、それをやらずにギリギリのところで受け身を取らせるのがプロレス」と語っていたとか。UWF関係の本を読むと、前田はプロレスが下手で、対戦相手に怪我ばかりさせるので嫌われていたとどれもこれも書いているのだが。。。

本書に数か所挿入されている、一人称の観客、あるいはライター視点の章が収まり悪いのが気持ち悪い。あとがきで、観客視点の記事がどうしても必要だったと書いてあるが、それが一体誰の視点なのかわからないので、もやもやして仕方ない。「私の取材に実名で応じるにはかなりの勇気が必要だったに違いない」と書いてあるが、実名ってこのあとがきにしか登場しない。これがもっと、誰のことか分かる形で書いてあれば、読後感が違ったものになったと思う。俺には蛇足としか読めなかった。


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2017年11月2日木曜日

Mpow Enchanter bluetooth イヤホン MP-BH053AB

10点満点で、7点。

不幸な事故で前に使っていたものを壊してしまったので買い替え。
前のはインジケータランプの位置が気に入らなかったので、同じような価格帯で違うものを購入。

いいところ;
  • 軽くて快適。これは、このサイズの商品ならどれでも同じことが言えるかも。
  • インジケータランプが見やすい。性能は殆ど同じなので、これだけで買い替えた価値があった。
  • バッテリーは多分長持ち。今のところまだ、切らしたことがないからよくわからない。困ったことはない。
  • 耳にフィットする。これはまあ偶然だね。こちらの商品も、サイズ別のアダプタは添付されているので、大抵の人は困らないはず。
まずいところ;
  • やっぱりノイズキャンセリングは存在価値がわからない。全然実感できない。
  • マグネットがない。なくなって初めて、不便さを痛感した。

これはこれで便利に使用中。前のより耳にフィットするので、快適さは段違い。
(でもこれは、サイズに合ったアダプタを使用しなかった俺が悪いだけ。念のため)
マグネットがないのは不便だなあ。ちゃんと片付けないとなくしそう。

ちなみに、スマホ(Xperia Z5)と組み合わせて使っているのだが、接続開始時や操作中にとんでもない頻度で音飛びする。これは前のイヤホンでも同じで、安物だとこんなものなのかと思っていたらどうやらスマホ側の問題だったらしい。Androidの機能ではなく、スマホの機能でBluetooth接続をすると劇的に改善した。設定から、機器接続で「Throw」を選択して接続するといい感じ。詳しくは色んな人が書いているのでググるとよい。

Bluetoothイヤホン AOSO M21 V4.1

10点満点で、7点。

ウォーキング中に使っていた、ワイヤレスイヤホン。amazonで、安いものを探して購入。
もともと音質にはこだわりなんてないし、有線だとコードがじゃまになるし、Bluetoothで使用できるものを探していたら、2,000円しないで買えるのね。

いいところ;
  • 軽い。インナーイヤーなので、耳に外側から引っ掛けるタイプのものよりも軽くて、長時間の使用でも疲れない。
  • 音質は悪くないと思う。もともとこだわりなんてないので意識しなかった。
  • マグネットが超便利。通勤に使用して、会社のロッカーではマグネットで引っ掛けておけるので、収納に困らない。
  • バッテリーが長持ち。1日1時間程度の利用なら、週1回充電すればいいかも。逆に、過信して充電を怠ることに注意。
まずいところ;
  • インジケータランプが操作ボタンのすぐ近くにあるので、親指で操作すると見えない。電源ON/OFFなど、インジケータを見ながら触るのには向かない。
  • ノイズキャンセリングに期待したけど、効果あるのかわからないレベル。まあこの値段だからね。。。
  • 耳にフィットしなかったのですぐに外れた。でもこれは、複数サイズのイヤーパッドが添付されているのに、面倒臭がって試さなかった俺が悪い。
  • 便利なはずのマグネットが、思わぬアクシデントを。。。

基本的には購入して大満足。
便利に使っていたのだが、カーナビが故障して修理に出している間、車で移動しているときにも使っていたら悲劇が起きた。
車を降りてドアを閉める時、耳からポロリとこぼれ落ちた。その時、マグネットが素晴らしい性能を発揮してドアにとりつき、車体との間に挟まれて昇天。享年4ヶ月。

同じものを買い直しても良かったのだが、前述の通りインジケータランプの使い勝手が悪いので、別のものにした。それはまた次の記事で。

2017年10月30日月曜日

012 / 445 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えて下さい!

10点満点で、8点。

この手の本で初めて、納得できる、すっと入ってくる説明を読んだ気がする。
どこまで本当かわからないけれど、定期預金しか知らないド素人が、専門家の話を聞きながら自分でトライしてみるという体裁の本。運用成績が出るまでの長期スパンでは書いていないが、基本的な考え方についてはしっかり解説があり、具体的な手順(口座開設方法など)は著者が実際にやってみてスクリーンショットを取る、という方法で掲載している。専門家も、考え方に重点を置いて開設しているので、自分が所属するのは楽天証券なのに、進めているのはSBI証券だったりする。
(所属もどこまでほんとうかわからないけど)

難しいことはわからないけれどお金を増やしたい、という人に「国債」と即答だったり、「銀行で買うべき商品は国債以外ない」と言い切ったり、賛否はあるだろうが明快なのがいい。
家はローンを組んでまで買うべきじゃない。もし組んでいるなら、繰り上げ返済が一番の運用。医療保険などいらぬ。結婚なんてバブル。論旨が明快で説得力があって、面白く読めた。早速SBI証券の口座を開設しようと思ったくらい。
投資といえばすぐに思い浮かぶ、株式投資を薦めていないのもいい。正確に言うと、個別銘柄ではなく投資信託を薦めているのだが。個別の銘柄を運用しているのは戦闘機パイロットで、車の免許でいいなんて思わないほうがいいとか。わかりやすい。

読み捨てようと思って買った本だけど、手元に置いておこう。


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2017年10月28日土曜日

011 / 444 子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!

10点満点で、7点。

林先生の本は他にも何冊か読んでいるけど、レビューは書いてない気がする。
だいたい書いてある内容は似たり寄ったりなので、何冊も読む必要はないかも。調べ物をしていて、出典を探しているので本書も手に取ったけど、目的は達成できなかった。

本書は子供の成長に焦点を当てて、脳をあるべき姿で成長させるために必要なことを語った本。他の本は大人の脳の使い方についてが主眼だが、本書は育児書のジャンルに入れていいかもしれない。脳が持つ機能と、その機能が何歳ごろ成長するのか、成長させるには何をすべきなのか、語られている。といっても、いわゆる教育書や能力開発ではないので、「頭が良くなる」とか、特定のジャンルについて才能を強化するような方向ではない。あくまで、脳が正しく成長していけば、我々はもっと能力を発揮できるのだ、という観点で書かれている。

「ほめて伸ばす」の正しい姿勢など、なかなか実現できず耳が痛いことも多い。
できれば、発達障害の子を持つ親の姿勢についても語ってくれないかなあ。


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2017年10月26日木曜日

010 / 443 安生洋二 200%の真実

10点満点で、6点。
UWFのその後を語る際に外せない、ヒクソン道場破り失敗、前田日明襲撃という2つの大事件を起こした安生洋二が自ら語る(事になっている、ゴーストライターがいるのかどうかは知らない)それぞれの裏側について。その他新弟子時代のこととか、新日本との対抗戦、ハッスルについて。

全編を通して「悪いのは宮戸、ボクは悪くない」というテイストが強い。でも確かに、宮戸について書かれていることはどの本を見てもだいたい同じ。前田がいつまでも新弟子呼ばわりしてて名前を呼ばなかったとか、フィクサーを気取って裏から色んな人を扇動したとか、だいたい当事者以外は同じことを語っている気がする。宮戸についてよく書いてるのは、自著くらいしか思いつかない。

安生は「前田のことをよく思ってはいなかったけど、恨みはなかった」「襲撃したのは周りに乗せられた」ようなことを書いているが、それでいて「もう関わり合いたくない」ってお前それは違うだろ。前田も悪いけど、後ろから襲撃したお前はもっと悪い。前田が一目置く人に仲介してもらって、きちんと謝罪した上で、その後は関係しないという態度をとるべきじゃないかなあ。

ヒクソンの道場破りについても、ヒクソン側からの視点とは随分違う。まあでも、完膚なきまでに叩きのめされたのは事実のようだし、自分からは積極的に語りたくないことだろうから、ある程度都合がいいように語るのは仕方ないのかな。

これだけ読んできたら、次は船木について語られた本とかが読んでみたいな。


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2017年10月22日日曜日

009 / 442 証言UWF

10点満点で、7点。

UWFシリーズもこれで一段落かな。1984年のUWFへの前田日明の反論、と書いてあるけれど、時系列的にそうではないらしい。
単に、偶然(なのか狙ったのかは知らないけど)近い時期に出版されて、内容がそう言えるものだったのでそう称しているようだ。

1984年のUWFは、関係者への取材、雑誌や書籍の積み重ねから、当時何があったのかを推測している本。推測というのは、何かを取り上げる時(例えば前田対ゴルドーの真実とか)、両方の当事者から話を聞くことなく、一方の証言とそれを補強する資料の紹介という形を取っているので、客観的な事実と言うにはちょっと弱い。
それが本書になると、それぞれの当事者のインタビューで構成されていて、逆に一つの話題や事件を色んな角度から取り上げる、というわけでもない。あくまで一方の目から見た真実を、多少の編集と誘導はあるだろうが、そのまま書いている。

鈴木みのるのインタビューに登場するこんな言葉が、実態を一番良く表現しているのではないだろうか。

さらに、文章で仕事をしてる人たちがいろんな話を聞いて、それをまとめるからおかしくなっちゃうんです。(それを読んだ選手たちが)思いを裏切られたという気持ちになり、さらに複雑になっていったんじゃないんですか。本来、まとめちゃいけない話。それぞれの人間にそれぞれの葛藤があったわけで。一つの出来事に対して、見る角度が違えば受け取り方はバラバラになる。

ただ、プロレスが死んだ日。と3冊読んで共通していたのは、

・佐山は天才だと誰もが認めている。天才すぎて周りがついてこれなかったとも。
・第一次UWFが苦しかった頃、誰よりも前田が、みんなが飯が食えるように考えて頑張ったことも、みんなが認めている。
・でも、前田はプロレスがうまいとか、ガチが強いといったことを言っている人は、見当たらない。少なくとも読後感には残らなかった。
・第二次UWFでは、上三人(前田、高田、山崎)と下の選手には壁があったが、それでも高田は認められていた。
(でもこれらは、前田から離れていった人たちのコメントばかりが載っているのだから仕方ないと思う)

前田自身は1984年のUWFを読んで激怒したようだが、反論をしっかり本にまとめるとか。それはそれで楽しみ。

とりあえず、リングスで長井が「俺はプロレスラーだ」と宣言したことに前田が激怒して、退団にまで至るトラブルになってしまった理由はわかった気がする。。。


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2017年10月18日水曜日

008 / 441 1984年のUWF

10点満点で、7点。

UWFの旗揚げから崩壊、新日本プロレスへの出戻りを経て第二次UWF、その崩壊とその後について、舞台裏を追いかけた本。俺はタイガーマスクに憧れてプロレスを見て、タイガーマスクがテレビから消えると同時に見なくなり、その後はUインターの高田対ベイダーを見るまでプロレスから遠ざかっていたから、ちょうど知らなかった世界。いろんな記事や本で断片的には知っているけど、全体の流れをきれいには把握していなかった。

今まで見聞きした情報は、その殆どがレスラーの発言だったので、裏方から見た実情とは随分違うことが読み取れる。もちろん、当時をリアルタイムでは知らないし、知っていても本当のことはわからないのだから、本書に書いてあることが全て真実かどうかはわからないけれど、丁寧な取材からはかなり真実に近づいているだろうと想像できる。

本書を読んだあとでも前田信者の俺には、悲しいことが多々書いてある。

・猪木が悪い。アントンハイセルさえなければ、どれだけの人が幸せだったか。
・佐山は10年早すぎた。天才すぎて周りがついてこれない。
・佐山の集客力に頼りつつ、その思想は良しとしないジレンマ。
・どうやら前田は、選手からは先輩、後輩とも評価されていない。レスラーからも、格闘家からも。
・プロレスからは「相手に怪我をさせる下手くそ」、格闘家からは「ガチやってないくせに口をだすな」
・思っていた以上に、高田の評価は高い。強さもさることながら、練習量で尊敬を集めていたらしい。
・藤原は20年早かったか。全盛期に格闘技ブームが来ていれば、関節技の達人として人気が出たろうに。
・選手はもっと、フロントの苦労をわかってやるべきだなあ。
・そしてやっぱり、プロレスと格闘技の境界という話題になると、やはり象徴として中井対ゴルドーの話題が出るのね。
・前田の体は、確かにリングスの頃は酷かった。
・でもリングスは、本物の外国人選手を連れてきていたから面白かった。ハン対ナイマンとか。
・個人的には、リングスなら外国人選手だけの大会があっても見に行ったなあ。むしろ見たかった。
・安生がヒクソンの道場破りをして返り討ちにあった事件、一度でいいから映像を見てみたいなあ。


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2017年10月15日日曜日

007 / 440 合気道一路

二代目道主、吉祥丸先生の著書。
戦後合気道群雄伝に書いてあることを、吉祥丸先生の立場から書いたような本。むしろ、本書の記載を第三者が書いたものが戦後合気道群雄伝といったほうがいいのかも。

実子だから言える開祖の素顔、みたいな記載もちょっと期待はしたけれど、弟子にも子にも厳しかった人のようだ。いくらか「我が子だから目をつぶる」箇所はあったようだが、それでも普通の親子関係よりは遥かに厳しいと思う。開祖のエピソードはそれなりに書かれているけれど、弟子がどうやって開祖の技を身につけていったのか、そのあたりも書いてあると嬉しかったなあ。開祖は、というよりもこの頃の武道家はほとんど、教えないタイプの人だったようだし、合気道の技は教わらずに習得するのは相当難しいと思う。習得した人からすると、「教わろうと思うから身につかないんだ」と言うのかもしれないけれど。

しかしどの本、誰の言を見ても、開祖は弟子の技術をあまり認めていなかった気がする。もちろん自分の技をすべて習得した弟子がいるとは考えていなかったのだろうけれど、合気道初の一般公開と言える高島屋の演武でも、吉祥丸先生を含む人々に「わしの技が誤解されるくらいなら自分でやる」と激しく怒ったそうだし。合気会から道を別れた、養神館、昭道館、氣の研究会その他を含むあらゆる傍系を含む孫弟子たちの技を見て、開祖が「正しく伝わっている」と評価する人ってどれくらいいるのだろうか。


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2017年10月10日火曜日

006 / 439 プロレスが死んだ日。

10点満点で、7点。

プロレスが好きだった。最強に最も近い格闘技だと思っていた。
もちろん、ロープに振った相手が戻ってくるとか、関節技が決まっても自分から離すとか、そういう胡散臭さはわかった上で。漫画「1・2の三四郎」に登場する名台詞、「プロレスにディフェンスはねえんだ」のとおり、また猪木の「相手の10の力を引き出して、12の力で勝つ」ために、相手の技を受けきって見せて、それでも俺のほうが強いのだとアピールする、そんなことができる格闘技なんて最強に決まっているだろう、と思っていた。

(どうでもいいけど、「1・2の三四郎」は至高のプロレス漫画だと思う。トレーニングのシーンなど、プロレスに対するリスペクトにあふれている)

とはいえ熱心なプロレスファンというわけではなく、少年時代にタイガーマスクに憧れ、タイガーマスクがテレビから消えてからはプロレスを見なくなっていた。学生時代、偶然テレビでやっていたUインターの高田対ベイダーを見て、「こんなプロレスもあるのか」と驚いていたら、プロレス好きの友人が「アレはU系と言って、他にも団体があるんだ」とリングスを教えてくれた。WOWOWの放送を録画したビデオを借りて虜になり、これこそ本物だ、最強の格闘技が何かはわからないが、最強の男はリングスで決まるだろう、と本気で思っていた。

就職して首都圏に出てきて、リングスの会場にも足を運べるようになって満喫していたときに発生した、1997年10月11日の大事件。ヒクソン・グレイシー対高田延彦について、その舞台裏を知っていた著者が書き下ろした本。「いまだから明かせる真実」とあるが、たしかに当時は書けなかっただろうことが書いてある。プロレスはフェイクである、という一点だけだが。

1993年のUFCで彗星のごとくホイスが登場して、格闘技界がその話題で持ちきりだったことはかすかに知っている。テレビ番組(確か「世界まる見え」だったはず)でダイジェストが放送されて、ゴルドーが相手を容赦なく血だるまにするシーンと、体格で遥かに劣るホイスがゴルドーを完封するシーンが出ていた。そこで初めて「グレイシー柔術」なるものを知ったので、その後「コータローまかり通る」でグレイシー柔術が登場した時、「知っとるがな」と思った記憶があるが、まあどうでもいい。

俺がリングスを知ったときは、既にVTJ94で山本がヒクソンに負けたあと。だが当時山本はまだ期待の若手という域を出ていなかったし(最後まで出られなかった気もする)、少なくともリングスのトップではなかったから、ヒクソンがどれだけ強いのかは未知数だった。でも高田は、U系の一方の雄、Uインターのエース。まあ当時既に、新日本のリングで武藤に足四の字で破れ、ファンの罵声を一身に浴びて、インターが解散しキングダムになっていた頃だけど。

それでも、高田があっさり負けるとは思っていなかった。高田は強いと思っていた。入場時点ですでにヒクソンに飲まれていた男は、プロレスの誇りをかけて折れてもタップしないかと思ったら、腕ひしぎが決まったと同時にタップした。

本書を読むと、この結果は必然であったろうという結論になってしまう。フェイクの世界に生きてきた高田と、リアルの世界で生きてきたヒクソンの違い。初戦は高田のコンディション、精神状態が明らかに悪かったが、2戦目でも同じ形であっさり負けてしまったことから、両者には埋めがたい差があったのだろうことは容易に想像できる。

本書はヒクソンが取ってきた言動について、エピソードと言うには少し詳しく語っている。気高い精神性を持っていて、日本人に通じるところがあると思う。もちろん、日本人の感覚からは、それは違うんじゃないかと思うところもあるが、それは文化の違いだろう。

ヒクソンが当時よく言っていた「私はプロモーターが決めた相手となら誰でも闘う」という発言。逃げているだけじゃないかと思っていた。「前田でも誰でもいい、プロモーターが決めた相手と闘う」と言うなら、プロモーターに「前田と闘いたい」と言えば決まりじゃないか。そう思っていた。
しかしヒクソンは、この時既に挑戦を「受ける」側にいたので、自分から闘いたいと思う相手はいなかったのだろう。VTJを2連覇し、東京ドームという大舞台で(少なからぬプロレスファンから)最強の一角と目されていた高田を一蹴することで、実力を示すことも出来たし知名度を上げることも出来た。こうなってしまったら、ヒクソンの目から見て「強い」と感じない相手と闘う必然性は、なくなってしまっていたのだろう。

具体的な金額や詳細は書かれていないが、PRIDEがヒクソンと高田を戦わせるために、破格のファイトマネーを支払ってしまったことも書いてある。ビッグマッチを実現するためだったのだろうが、これにより事実上、知名度と潤沢な資金を持たない選手、団体はヒクソンと戦えなくなってしまった。ワンデイトーナメントにも出ていたヒクソンが、高田のあとは船木としか戦っていない(船木は東京ドームでメインイベントを張れる知名度だ)ことが残念で仕方ない。相手は日本人でなくとも、世界のトップ選手と戦っているところを見たかった。ヒクソン対ハンとか、妄想するだけで何時間でも経ってしまう。


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2017年10月8日日曜日

005 / 438 武道vs.物理学

10点満点で、3点。

著者は物理学者にして大東流佐川門下の黒帯。その知見から、武術や格闘技の技について、物理的に考察した本のように思えるのだが・・・
俺の目が曇っているのだろうか。取るに足らぬ内容と、エセ科学しか書いてない気がする。

最初は柔道の崩しについて、三船十段の隅落とし(空気投げ)について書かれている。手首の僅かなひねりだけで投げてしまうという神業について、「物理学的には合理的な技」としているが、それを実現している方法は「筋肉を動かしている電流をコントロールし、随意運動を奪っている」って、その方法がわからなければ意味ないだろう。
ついでにいうと、不随意運動とは「生活習慣や訓練によって、無意識で動くようになった動作」と書いてあるが、不随意運動って心臓の鼓動とか、そういうやつじゃなかったか。

次は空手の技について、「飛び蹴りは本当に効くのか」を検証している。
実に40ページ近く使って書かれているが、2ページもあれば終わるんじゃないか。「飛び蹴りは、攻撃者の体重が全部乗るので、速度から思うよりも威力は大きい」と書けばそれで終わりだ。ついでにいうと、作用反作用の法則についても触れながら、地上での突き蹴りは技術(踏ん張り方など)によって、「相手の体重も」威力として計算できることについては意図的なのかそうでないのか、全く触れていない。突きの威力については、拳の重量しか考慮していないとか、何じゃそりゃ。

その次は総合格闘技のマウントポジションについて、その返し方を物理学的に考察。ある程度話が進んだところで、突然「武道の究極奥義」なるものが登場して、ほとんど体を動かすことなく返すことができるとある。その究極奥義の正体を解き明かさなければ、本書の意味は無いんじゃないの。

その奥義を身につけたのも、佐川幸義先生の高弟、木村達雄氏に合気をかけられて、突然開眼したとか。挙句、「触れなくても合気はかかる、これは電磁場が云々」とかある。
著者は本当に科学者なんだろうか。「物理学者である私の目から見ても不思議だがよくわからない」とか書いてある方が、よっぽど信用できる。

木村達雄氏、それから本書の著者である保江邦夫氏については、様々なところで他の武道や格闘技を貶める発言をして、色々物議をかもしたことがあるらしい。
実際に武道家としてはどうなのか、それは見たことがないし、直接知っている人の評伝なども見たことがないので、俺には判断がつかない。しかし、本書のような発言をしていたら、「合気とは胡散臭いもの」という印象を強くするだけのような気がする。

ちなみに本書に登場する物理学は、高校物理が不可だった俺でもわかるレベルなので、その意味では読者は選ばない。


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2017年10月7日土曜日

004 / 437 炭水化物が人類を滅ぼす

10点満点で、5点。

昨今流行りの糖質制限ダイエット。実は自分でも取り組んでいて、今のところ4ヶ月あまりで8kg減。正確にはおよそ2ヶ月で7kg減、その後停滞しつつ2ヶ月でもう1kg減ったところ。数字だけ見ると確かに効果は出ているのだが、単に食べる量を減らしている効果が出ただけ、という気がしないでもない。

この4ヶ月の間、飲み会など予め「今日は好き放題飲み食いしていい」と決めた食事以外は、基本的に今までよりも量を減らしている。なので、常に満腹感がなく、腹が減った状態。まあそれでも体重は減っているのだけれど、「炭水化物を減らしてたんぱく質と脂質を増やした、今まで通りの満足感を得つつ減量」なら効果があると言っていいだろうが、そうではない。空腹感を抱えながらなので「脂質制限を厳しくしたって同じじゃね?」と思う。たんぱく質を減らすのは、流石に筋肉が減るだろうからやる気になれないが。

そんな中、ある意味糖質制限ダイエットのバイブルのような扱いをされている本書を手に取った。読んでみると、肉や魚などは「好きなだけ食べていい」ような書き方がしてあり、勇気づけられる。しかし、その根拠が怪しい。もちろん科学的に書いてあるのだが、エセ科学の臭いが強く漂うのだ。

体内での各栄養素の代謝について、詳しく書かれている。著者は医者だから、科学的、あるいは医学的には正しいことが書いてあるのだろうと思う。しかし、「糖質を制限しても大丈夫」ということは理解できても、根拠が怪しい、あるいは根拠のない礼賛が多い。顕著なところでは、「糖質制限食では腹が減らなくなる」「コレステロール値が低下する」と言った記述があるが、この根拠が無い。

前者は、俺の乏しい知識だと、空腹を感じるのは血糖値の低下に起因するはず。糖質制限をするということは急激な血糖値の上昇が起こりにくくなるわけだから、相対的に空腹を感じにくくなるのだろうとは思うが、空腹感がしないということはないはず。現に、俺自身は一日中空腹感を抱えている。
(ある程度慣れてきたが、どういうわけかここ2週間ほどはキツく感じている。食事の量、運動量など変えていないのに)

後者は「私のコレステロール値は下がった」というだけが根拠。それって都合のいい事例だけを取り上げてるんじゃないのか。

客観的な科学的事実、知見を元に書かれていることと、主観だけで書かれていることが入り混じっていて、信頼に足る部分を咀嚼する必要がある。まあ、読んでいれば根拠の無いことばかり書いている箇所(主に糖質制限のメリット)と、データを元にした記述ははっきり別れているので、盲目的に読まなければ大丈夫だと思うけれど。

後半の、生物あるいは人類の食性に関する歴史、穀物食の歴史などは興味深く読めた。本書がターゲットとしている層には面白くないだろうけど、雑学的知識としては知的好奇心を大いに刺激する。

最後にどんでん返しが。あとがきの冒頭に「本書では仮説を大胆に展開している」と。いやそれ、本文中に仮説と事実をちゃんと分けて書けよ。読者を騙す気満々じゃないか。


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2017年10月6日金曜日

003 / 436 田中角栄100の言葉

10点満点で、6点。

なぜだか知らないけれど、最近やたら出版されている気がする角栄本の一つ。コンビニでも見かけるなあ。
角栄の発言とエピソードを、見開きで紹介している。写真が大きく文字が少ないので、あっという間に読める。

いいことを言っているし、確かにこれは人がついてくるだろうなあ、と思う。でも、角栄の現役時代を知らない身としては、手放しに褒める本ばかり出版されているのがいささか気持ち悪い。清濁併せ呑むのが魅力とよく言われているが、利益誘導政治は厳しく批判すべきだと思う。人間的魅力を隠れ蓑に、批判の蓋をしてはいかん。

本書は基本的に角栄のことしか触れていないが、これだけの人物がいながら、そのカリスマを受け継ぐ、あるいは近いものを発揮する人物が登場していないというのは、残念極まりない。人を育てるのは下手だったのか、あるいは天性のカリスマだから学びようがないことなのか。真紀子とか、角栄という人物から最も遠い言動ばかりしていると感じるのは気のせいか。


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2017年10月5日木曜日

002 / 435 戦え!高専ロボコン

10点満点で、5点。

昨年(2016年)の高専ロボコン、「ロボット・ニュー・フロンティア」で活躍した、小山高専と高松高専を中心に、その舞台裏を追っている。ルポルタージュと言っていいのかなあ。
ロボコンという題材が特殊だから、試合展開などは本文を読んでも全然わからない。ルールも毎年変わるから、過去にロボコンの放送を見ていた人でも、去年の大会を見ていなければさっぱりわからないと思う。なんか技術的に大変なんだろうな、とか、そんな感じがぼんやり伝わってくるだけ。もちろん、実際に参加していた学生には臨場感がある話だろうし、近くで見ていた人もそうだろうけれど。テレビで見ただけの俺にはよくわからなかった。

ロボコンはもちろん参加するのが一番面白いのだが、放送を見ている分にも、試合そのものよりも舞台裏のほうが興味深い。内情をいくらかでも知っているからだろうか。でも、本書を読んでも、その魅力は残念ながらあまり伝わってこない。考えて考えて、やっと思いついたアイデアを試してみたらやっぱり駄目だったときとか、外野から見てるとそういうのが面白いのだが本書にはあまりなかった。

ロボコンに興味のない人が手にとっても、わけがわからず終わりだと思う。
ついでにいうと、我が母校がほとんどスルーされているので、それだけの理由で-1点。


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001 / 434 こんな凄い奴がいた

10点満点で、6点。

また一年以上も放置してしまった。それなりに本は読んできたんだけど、忙しくなるとどうしても放置しちゃう。

子供の宿題のため、図書館でスポーツに関する本を探させているときに手に取った本。知られざる猛者、知られざる名選手を取り上げた本だろうと思っていたら、オリンピックで活躍した選手中心の話。殆どの登場人物は、今は知られていない、あるいは俺が知らないだけの人が多いのであって、世代によってはかなりの知名度を持つ人だっているんだろう。

1928年のアムステルダムオリンピック、三段跳びの織田幹雄から始まって、オリンピックの選手としては1996年の女子柔道初の金メダリスト、恵本裕子まで。彼女はイブニングで連載中の「女子柔道物語」のモデルですな。執筆当時の個人は「番外編」として記載。この他、オリンピック外で活躍した女子選手は「女神たちの革命」として山口香が取り上げられていたり。終章はフジヤマのトビウオ、古橋廣之進。

スポーツと政治、オリンピックにも多くのページが割かれていて、モスクワオリンピックボイコットの影響を受けた選手たちについても多く触れている。個人的には国際情勢とオリンピックの関係が興味深かった。

2000年に出版された本。その一年後、本書には「小指投げ」として取り上げられている猪熊功が自刃してしまったのが悲しい。


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