2009年5月30日土曜日

116 / 160 「戦争体験」の戦後史

咀嚼しきれなかったので、採点しない。良書とは思う。

活性化(スキタリング)・・・1時間程度

戦没学徒の遺稿集「きけわだつみのこえ」と、戦没学生記念会「わだつみ会」を中心に、「戦争体験がどのように『利用』されてきたのか」を考察した本。左派、あるいは右派が、戦争というものをどう捉え、政治、軍事、国防といった物をどう捉えてきたのか、そのために戦争体験をどう利用してきたのか、考察している。

正直なところ、俺自身の知識不足が大きく、内容を把握できたとは言い難い。特に戦後初期については、ほとんど読み取れなかった。

興味深く読めたのは、「きけわだつみのこえ」では、当初意図的に、勇敢に散っていった、あるいは国のために命を捧げるようなことを書いた文章は除かれたこと。GHQの検閲を避けるという意味であったはずが、いつの間にか一人歩きし始めて、「学徒はみな理不尽さを抱えて散っていった」という扱いに変わってしまったこと。

それに反発を感じた人たちが、(時代の変化もあるのだろうが)「雲ながるる果てに」で取捨選別のない遺稿集を出し、より広範な考え方を知らしめたこと。そして何より興味深かったのは、「所詮学徒はエリートであり、考える余裕を持った連中であり、農村出身者は素朴に軍に誇りを感じて死んでいった」と言うことを伺わせる「戦没農民兵士の手紙」について。彼らは軍の厳しさなど「朝6時起床なんて恥ずかしくて田舎では見せられない」だの、「農作業に比べなんと楽なことか」など、軍隊生活に負のイメージを持っていない、素朴な感情が見て取れる。

そしてさらに、「農民には教育が与えられなかったので、彼らが軍に盲従しても、それは彼らの責任ではない」と主張するのがエリート層であり、むしろ農村出身者は「それでも盲従したのは彼らの責任であり、むしろ責任を否定するのは、彼らを対等の人間扱いしていない証左」と主張する。この対比も興味深かった。

もっと知識を蓄えてから読む本だったが、良書だとは思う。「きけわだつみのこえ」「戦没農民兵士の手紙」いずれも読んだことがないが、読んでみるべきだろう。



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