10点満点で、8点。
ボスニア紛争(ユーゴスラビア内戦の一部)を、「ヨーロッパの裏庭でやっている、金持ち同士の小競り合い」から「世界的に注目される重大な内戦」に仕立て上げ、一方的な「セルビア人=悪」のイメージを植え付けることに成功した、PR企業の影響力に着目して描いた逸品。
事の善悪について論評を控え、いかにPR企業がクライアントのために動き、その結果マスコミ、政府、国際世論、国連を巻き込んだうねりを作り上げていったのか、よく取材されている。
合法的に、決して非難されるような手段を執ることなく、また情報を隠すこともなく、クライアントに有利な状況を作り上げていくその手法は、まさにプロフェッショナルの仕事といえる。カナダの国民的英雄を平和の敵に仕立て上げ、国連史上初の事務総長再任を妨げたその手腕が、セルビア側に雇われていたらその後のボスニアはいったいどうなっていたのだろう。
日本にこのような企業がなく、また日本人にはその重要性が認識されていないPR企業の影響力がいかにあるか。マスコミの影響力は確かに大きいが、そのマスコミを誘導することでどれだけの成果を上げることができるのか。著者はマスコミの側であるだけに、逆にその効果を後から冷静に計ることによって、読者に淡々と訴えかけている。
秀逸なドキュメント。NHKは、やはりこうした取材をさせると、民放が束になっても適わない作品を作り上げる。それがどうして、特定アジアに対してだけは力を発揮しないのだろう。
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