2008年10月19日日曜日

020 マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男

10点満点で、8点。

日本語版では省略されてしまったが、原題のサブタイトル "The art of winning an unfair game" の方が、より内容をよく現している。資金力の差に関係なく、同じ土俵で選手を集めて戦わなければならない、メジャーリーグという unfair game に勝つために、ビリー・ビーン率いるオークランド・アスレチックスがどういう戦略を採っているのか、ルポルタージュの形で著した本。

「打率に意味はない、重要なのは出塁率だ」「守備力は試合にほとんど関係ない」「投手の力量は、与四球、奪三振、被本塁打の3つでほぼ完全に評価できる」など、これまでの常識を大きく覆す考え方。「貴重なアウトをむざむざ提供するバントは意味がない」「失敗する確率が3割もある盗塁は、試みる価値がない」など、戦術面でもこれまで接してきたあらゆる報道、野球人その他のコメントからも大きくかけ離れている。

それでいて予測通りの成績を残し、年俸差に反比例する勢いで勝ち続け、それなのに未だこの戦略が過小評価されている(真似をする球団がほとんどいない)この不思議。どこも真似をしないからこそ、unfair game に勝ち続けることができるのだろうが。

プロ球団の戦い方としては、ノムさんの本が面白くていくつか読んだが、ビリー・ビーンの考え方はおそらく対極に位置するのだろう。ノムさんの基本スタイルは「戦術で戦力を補う」だが、ビリー・ビーンの考え方は(大きな影響を与えた、ビル・ジェイムズの考え方というべきだろうか)、監督は余計な采配をしない方がよいというもの。盗塁、バント、左右の相性などほとんどすべてが勝率に悪影響を与えていると言われれば、監督のやることはほとんどなくなってしまう。

どちらの考え方も面白い。しかしいずれの考え方も、限られたチーム/人物しか結果を出していないので、評価が分かれてこれからもゲームを楽しませてくれるのだろう。

カープはこのスタイルで選手を集めてくれないかな。それで、鋼鉄の赤ヘル軍団が帰ってきたら面白い。



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